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25-May-2017

MOOC: 炭素材料について考えてみよう。

講義資料 非常勤講師:山本博志   2012.1.12

 

フラーレン(C60)

有機薄膜太陽電池

三菱化学:p型有機半導体に、「テトラベンゾポルフィリン」と呼ばれる有機物を、n型有機半導体に、「フラーレン誘導体」を用いている。変換効率10%以上を達成。コスト従来の1/10。(太陽電池資料を参照の事

燃料電池用の電解質膜材

ソニー:DuPont社のNafion膜と異なり、水分を必要としない。原料のメタノールが拡散してしてしまうことがないフラーレン膜。

ソニー特許より

製造方法は、ベンゼン+空気+Arを燃焼させて煤を発生させる炭化水素燃焼法が三菱化学・三菱商事によって開発されている。

当然カーボンファミリーの混合物としてしか得られない。C60の有機溶媒への溶解性に関しては、西尾元宏著、分子間力入門、講談社サイエンティフィックに記載がある。どのような分子間力によって溶媒に溶解しているのかYMBとYSBを使って検討しよう。

課題:化合物と溶解度のテーブルは所定の場所からダウンロードし、自分で溶媒分子を組み立て、YMBで物性値を埋め込みテーブルを完成させよう。溶解度はmg/mlの値が記載されているが、logをとったもので評価してみよう。

Hcode Name Hcode Name Hcode 予測データセット
52 ベンゼン 122 四塩化炭素 195 Trans-デカリン
637 トルエン 649 CCl2=CHCl 392 C6H5F
48 C6H5OMe 614 CHCl2CHCl2 156 クロロホルム
148 クロロベンゼン 701 1,2,4-トリクロロベンゼン 7695 ジメチルナフタレン
55 C6H5CN 194 cis-デカリン 196 n-デカン
531 C6H5NO2 417 nーヘキサン 71 ブロモベンゼン
698 キシレン 181 シクロヘキサン
451 メシチレン 500 1ーメチルナフタレン
5289 o-クレゾール 7770 フェニルナフタレン
234 o-ジクロロベンゼン 618 テトラリン
870 クロロナフタレン 7 アセトン
633 チオフェン 598 ピリジン
7597 2-メチルチオフェン

一般的に言って、多芳香環化合物、塩素含有芳香族化合物、含硫黄化合物で溶解度が高そうである。こうしたC60の定性的な溶解性に関してはハンセンの溶解度パラメータ(HSP)を使ったものがこのHPにあるので参照してもらうとして、ここではYMBを使って、より定量的に溶解性を扱かってみよう。YMBの作り出す36個の物性値から変数を4つ選択させてモデル式を作ると以下のようになる。(変数選択は自動で細かい刈り込みは行わない)

log(C60溶解度)=0.2843*log(Henry)+0.1589*Hildebrand SP+-0.1963*Hansen dH+14.1627*Refractive Index+-22.8135

赤四角はモデルを作るのに使わなかった予測データ用の化合物で、このモデルで良好に予測できていることがわかる。

対応するブラウザーを使い、上のキャンバスに分子を描けばどのくらいの溶解度かを得る事ができる。
このように、一旦モデル式が作成できれば容易に新しい溶媒を使った時の溶解度を推算できる。それをバッチで走らせて一番いいものを探すなども簡単にできてしまう。Web版は制限があるが、それはハンディだ。同じ機能のソフトを使ったら学生に勝ち目は無い。学生はダウンロード・バージョンを使ってテーブルを埋めるように。色々な溶媒の溶解度を計算してみて欲しい。トップデータの溶解度を見つけた学生にはAを上げよう。社会に出てからも、こうしたサイクルをまわせば他所(先輩)に負けない研究ができるだろう。しかし、コンピュータだけに頼らず”何故”を考えるのは非常に重要だ。

一番大きく効いているのは屈折率である。下の図に示すように、屈折率の大きい溶媒ほど溶解度が高いことが見て取れる。(屈折率推算の詳しい説明はPirikaのこちらを参照のこと

何故、屈折率の高い溶媒ほどフラーレンの溶解性が高いのだろうか? ポリ・アロマティクスの屈折率を推算すると以下のようになる。芳香環が多くなるにつれ屈折率は高くなる。従って似たものは似たものを溶かすの原理で溶解度が上がっていくと考えられている。硫黄とか塩素原子は屈折率をあげることが知られている。(ポリアロマティクスのハンセン溶解度パラメータ、HPLCの結果はPirikaのこちらの記事に詳しい

ハンセンの溶解度パラメータのうち分散項(dD)は下図に示すように屈折率と相関があることが知られている。

従って、C60は主にファンデルワールスの力によって溶解していることが示唆される。

また、大まかには分子体積とも相関があり、分子が大きいほど溶解度も大きくなる。

この2つの効果が溶解度を決める主要因である。

課題:log(C60溶解度)とハンセンのdD, 分子体積の重回帰式を構築し、予測化合物セットとともにグラフを作製しなさい。フラーレンを分散させる汎用ポリマーとしてはどんなものがいいか、コストを度外視するとして、そのポリマーを改良するにはどうすればいいか考えてみよう。

 

分子間力を大まかに分類すると次のようになる。

ファンデルワールス相互作用:
理想気体からのずれを説明するために導入された概念。引力の主体は分散力(ロンドン力)分子の極性、非極性に関わらず普遍的に働く力

<1 KJ/mol

分散項(δD)

静電的相互作用:
分子が部分的な電荷をもつか、電荷に偏りがある場合に働く力。クーロン力、配向力、誘起力などとも呼ばれる。

10-30KJ/mol

分極項(δP)

水素結合的な相互作用:
水、アルコールなどに働く力。CHやπ電子系にも拡張されている。

10-30KJ/mol

水素結合項(δH)

その他:
π/πスタッキング:芳香環同士の相互作用
配位結合
電荷移動相互作用

  (δH)

この中でC60の溶解性に効いているのが、ファンデルワールスの力(dD)とπ/πスタッキングであろう。
(ハンセンの溶解度パラメータ(HSP)では、π/πスタッキングの分子間力は、その他の力としてδH:水素結合項に含まれる。)

 

グラフェン

課題英国ケンブリッジ大学でインクジェット・プリンターで印刷できるグラフェンの透明インクを開発したというニュースがあった。(2011.11.28)Poly[5,5’-bis(3-dodecyl-2-thienyl)-2,2’-bithiophene] (PQT-12) をバインダーポリマーとして用いている。このポリマーの屈折率、dDをYMBを用いて計算しよう。
参照としてポリベンズイミダゾール(PBI)、

などのポリマーの屈折率、dDも計算してみよう。これらのポリマーはカーボンナノチューブ(CNT)用のバインダー・ポリマーとしてPirikaが提案している。
グラフェンのπーπスタッキングに関しては太陽電池の講義資料を参照

 

カーボン・ナノチューブ

イオン液体ゲルも参照
CNTをディスプレーに使った東レの例は表示素材の資料を参照のこと

 

炭素繊維

東レ、東邦テナックス、三菱レイヨンで世界の70%シェアー

(財)航空機国際共同開発促進基金の記事から

こうした炭素繊維は、ゴルフクラブのシャフト、釣り竿、最近ではB−787の機体に採用されるなど利用範囲が非常に広がっている。実際の利用形態としては、この炭素繊維をエポキシ樹脂で固めたFRPの形で用いる。軽量化で、省エネルギーに寄与することが航空機で実証された事によって、自動車などに爆発的に利用される可能性が高い。

機械システム振興協会資料より

課題
炭素繊維はどのようなエポキシ樹脂と相性がいいのだろうか? フラーレンの場合、ファンデルワールス力の大きい、屈折率の大きな溶媒との相互作用が大きく溶解度が高くなった。以下のエポキシ樹脂のうち、どれが炭素繊維と一番よく相互作用しバインダーとしての性能が高くなると思うか、YMBを使い基本骨格を計算し理由を述べよ。また特許を検索しB787にはどのエポキシが使われているか確認しよう。

ビスフェノールA

屈折率
dD

ビスフェノールF

屈折率
dD
小西 屈折率
dD
ダイセル 屈折率
dD

さらに接着性をあげるには、どうしたらいいか考えて分子設計してみよう。(ヒント:芳香族に直結した塩素)

 

リチウム・イオンバッテリー(LiB)用の負極材

三洋電機:黒鉛炭素質を負極材料
日立化成:塊状人造黒鉛負極材、世界トップシェア40%
昭和電工:人造黒鉛電極。電気炉製鋼法で鉄を溶解するのに使う黒鉛棒(陰極)がはじまり。カーボンナノチューブ(CNT)で充放電安定性
JFEケミカル:JFEは新日鉄についで日本2位、世界5位の高炉メーカー。鉄は鉄鉱石と石炭から作る。煤を作るのはお手の物。

この負極用のバインダー樹脂については、PirikaのHP、ポリビニリデンフルオライドのページを参照。

 

活性炭による有機化合物の吸着

活性炭はヤシ殻などを蒸し焼きにして作るため原料によって吸着性能が異なるが一般的な吸着性能は大きくは変わらない。

課題
次のHPから活性炭の吸着量のデータをダウンロードして吸着物質をYMBで計算し一覧表を作ろう。

吸着量と沸点をプロットすると相関があるため、沸点が高いほど吸着量は大きくなるという説がまかり通っている。

しかし、同じぐらいの沸点を持つ化合物で比べてみると、極性基を持つほど活性炭への吸着量は減るので、この考え方には矛盾がある。

 

吸着量

BP

BENZENE

12

80

METHYL ETHYLKETONE

4

80

Acrylonitrile

2

74

対応するブラウザーを使い、上のキャンバスに分子を描けばどのくらいの吸着量かを得る事ができる。
このように、一旦モデル式が作成できれば容易に未知の化合物の吸着量を推算できる。Web版は制限があるが、それはハンディだ。同じ機能のソフトを使ったら学生に勝ち目は無い。学生はダウンロード・バージョンを使って計算してみるよう。社会に出てからも、こうしたサイクルをまわせば他所(先輩)に負けない研究ができるだろう。しかし、コンピュータだけに頼らず”何故”を考えるのは非常に重要だ。

吸着は単層吸着だけではないので複雑だが、BETの吸着面積を考えたときに吸着できる分子の数は分子のサイズによって異なるだろう。

当然のことながら、一般的には沸点が高くなると、分子も大きくなり、分子の表面積が増える。本来吸着量と比べなくてはならないのはこの分子表面積であると考えられる。

課題:
YMBで作ったテーブルに1列、表面積0.5を入れ変数選択してモデル式を作ってみよう。
何故、表面積0.5という列を入れたか、分子を球として、表面積、体積から考えてみよう。

最終的にはこのような吸着量のモデルが作成される。自分で作ったモデルと比べてみよう。

ハンセンのSP値を3次元に分割してプロットしてみると、

分極項(dP)は小さいほど吸着量は多くなることがわかる。

また、水素結合項(dH)も小さくなるほど吸着量は多くなることがわかる。すなわち、非極性で分子表面積が大きいものほど多く吸着することになる。従って活性炭の吸着の場合もフラーレンの溶解性と同様に分散項(dD)だけが大きく(ファンデルワールスの力)分子が大きいものがたくさん吸着されることがわかる。

ちなみに、鉛筆で紙に書いた文字が消しゴムで消すことができるのは、グラファイト(黒鉛)がファンデルワールスの力だけでセルロースに載っているだけなので、消しゴム(塩化ビニルにフタル酸系可塑剤を入れ固めたもの)のより大きなファンデルワールスの力でそちらに溶解してしまうためと説明される。

また、こうした炭素材料はπ/πスタッキング:芳香環同士の相互作用を持つため、小さいながらdHを持つ。また平面から外れるカーボン・ナノチューブ(CNT)やフラーレンでは分極項(dP)も発生していると考えた方が良さそうである。日本のお家芸の炭素材料の改良に貢献するには、こうした分子間力を正しく理解する必要があると思うのだがどうであろうか? 太陽電池の資料ではこのエネルギーを化学工学的に評価する方法を提案している。参考にして欲しい。

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