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25-May-2017

MOOC: 抽出を考えてみよう。溶解性が基本だ。

講義資料 非常勤講師:山本博志  2012.1.12

 

2012.1.3

化学工学の本を見ると、抽出操作の部分は3成分の溶解度平衡のデータからタイラインを引いて、うんたら、かんたらと説明されている。20年近く前の”マイコンを使ったXXXX”という類いの本、最近の”Excelを使ったXXXXX"といった類いの本も変わらない。Pirikaでは10年以上前からJAVAを使って化学用のプログラムを提供してきたが、この抽出操作に関しては何も提供できなかった。その理由はプログラムが書けないからでは無い。3成分系の溶解度平衡のデータが、全く増えていかない、いつも、水-ベンゼン-酢酸などのデータを延々と使い続けている。それでは3成分系の溶解度平衡を推算できるかというと、それはできないので、プログラムを作る価値がなかっただけだ。

しかし、化学の領域の研究をするのであれば抽出は重要な操作だ。医薬品などのように分子のサイズが大きくなってくると、蒸留で副生成物を分けるのは難しくなる。熱安定性の低い化合物の分離にも抽出は欠かせない。それにしてはある化合物をある溶媒(水である事が多い)から抽出するときに、どんな溶媒がいいか? に対してどのような提案ができるだろうか? YMBを使って検討してみよう。ここでいう抽出は分液ロートを使ってしゃかしゃか振った時を考えて欲しい。

 

有機化合物の有機相-水相間の分配係数

課題
化学便覧に以下の化合物の分配係数が記載されているのでテーブルを作製し、各化合物をYMBを使って計算しておこう。

メタノール p-ヒドロキシベンズアルデヒド エチルベンゼン
エタノール o-ヒドロキシ安息香酸 n-プロピルベンゼン
プロパノール p-ヒドロキシ安息香酸 t-ブチルベンゼン
ブタノール o-ヒドロキシアニソール 1,3,5-トリメチルベンゼン
ペンタノール p-ヒドロキシアニソール フルオロベンゼン
ヘキサノール o-ニトロフェノール クロロベンゼン
ヘプタノール m-ニトロフェノール ブロモベンゼン
酢酸 p-ニトロフェノール ヨードベンゼン
プロピオン酸 o-メトキシ安息香酸 p-ジクロロベンゼン
酪酸 m-ニトロ安息香酸 o-ジクロロベンゼン
ヘキサン酸 o-アミノ安息香酸 m-ジクロロベンゼン
吉草酸 p-アミノ安息香酸 1,2,4-トリクロロベンゼン
トリクロロ酢酸 o-ニトロアニリン ビフェニル
ジクロロ酢酸 m-ニトロアニリン 2-PCB
クロロ酢酸 p-ニトロアニリン 2,2´-PCB
酢酸メチル バニリン 2,4´-PCB
酢酸エチル o-バニリン 4,4´-PCB
アセトン i-バニリン 2,4,4´-PCB
エチルアミン i-ブチルアルコール 2,5,2´,5´-PCB
プロピルアミン フェノバルビタール 2,4,5,2´,5´-PCB
トリメチルアミン ペントバルビタール 2,4,5, 2´,4´,5´-PCB
n-ブチルアミン o-アミノトルエン ヘキサクロロベンゼン
ジエチルアミン ベンズアルデヒド p,p´-DDT
ピリジン アセトフェノン
アニリン アニソール
フェノール ベンゼン
安息香酸 トルエン
ベンズアミド スチレン
2-ナフトール フェニル酢酸
ヒドロキノン ニトロベンゼン

抽出に使った溶媒は、1-オクタノール、ジエチルエーテル、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、ヘキサン(ヘプタン)だ。このうち、水と1-オクタノールの分配係数はlogKow, logPなどとも呼ばれる指標でYMBの中に推算値が記載されている。

YMBで分子を描き結果を化学便覧のデータとプロットすると上図に示すように非常に良好に推算できている事が分かる。

対応するブラウザーをお使いなら、上のキャンバスに分子を複数描けばlogPがどのくらいかを得る事ができる。

つまり、1-オクタノールを抽出溶媒に使う限りは、ある任意の溶質がどれだけ水に、どれだけ1-オクタノールに分配しているかは分かることを意味している。自分が抽出したいものが1-オクタノールに多く分配していればそれでOKだが、そうで無かったらどうやって抽出溶媒を選択したらいいだろうか?

ジエチルエーテルとオクタノールの分配係数をプロットしてみると、かなり高い相関がある事がわかる。従って抽出溶媒として1-オクタノールで不十分であったのなら、ジエチルエーテルに変えてもあまりいい事はないだろう。

同様にクロロホルムと四塩化炭素の分配係数も、当たり前の事ながら非常に高い相関がある。

そして、意外な事にヘキサンと四塩化炭素の分配係数には非常に高い相関がある。

ベンゼンとヘキサンの相関係数はあまり高くない。

従って、化学便覧にデータのある、1-オクタノール、ジエチルエーテル、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、ヘキサンは、3つにグループ分けして考えればいい事が分かる。

中間(極性に近い):1-オクタノール、ジエチルエーテル
中間(非極性に近い):ベンゼン
非極性:ヘキサン、クロロホルム、四塩化炭素

いわゆる極性溶媒は水に溶解してしまうので、水系の抽出溶媒には用いる事ができない。

先に述べたように、1-オクタノールの分配係数は分子構造のみからYMBで推算できる。

オクタノールとヘキサンでは極性がずいぶん異なるので上図に示すように相関が無い。そこで、YMBとVSMRを使ってヘキサンの分配係数を推算するモデル式を作ってしまうことを考える。

課題
VSMRを使って下のモデル式のA-Eの係数を定めてみよう。
ヘキサン分配係数モデル式=A*logKow  +B*Surface Area C*Ovality D*Density  +E

こうしたモデル式が作製できると、ヘキサンとオクタノールで分配係数がどういう関係になっているか定量的に理解できる。つまり、ある抽出したい溶質があったときに、YMBを使えばlogKowは推算できる。その値の7掛けでヘキサンの分配係数が決まる。そして、分子が大きいほど表面積が大きくなり、卵形度(Ovality:1の時に球、球から外れるほど大きな値になる)が球に近いほど、つまり球形で大きな分子ほどヘキサンへの分配が多くなる。密度が高いものほど分配は小さくなる。一般的にハロゲン含有分子は密度が1.2以上、芳香族が1.0、ヘテロ原子含有化合物が0.8-1.0、ヘキサンのような炭化水素が0.7と、密度的にヘキサンと似ていないものの分配係数は小さくなる事をこのモデル式は示している。

課題
同様に、ジエチルエーテル、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼンの分配係数をlogKowをベースに組んでみよう。

これらのモデル式が構築できると、あるターゲットの化合物を抽出する溶媒は、中間(極性に近い)、中間(非極性に近い)、非極性のどのくらいがいいか明確にわかるだろう。

 

超臨界抽出:

辛いのはどれだ?

唐辛子の赤色はパプリカ色素として、食品の着色に使われる。色素にカプサイシンが残ると辛い。加熱すると変色する。そのようなものは超臨界二酸化炭素で抽出するという手が使える。

(株)ILSHINオートクレーブのホームページにどうのようなものに適用できるかよくまとまっている。しかしこれだけでは、どのような構造のものが、定量的にどれだけ抽出できるかは分からない。この定量性に注目して超臨界二酸化炭素抽出を見てみよう。

東北大学多元物質科学研究所が理論計算の結果と溶解性をQSARした結果を、熱物性 21[3](2007) p137-142に投稿している。

分極率指数、分子軌道の塩基性度、静電的塩基性度、静電的酸性度から溶解性を推算する式を構築している。ここでは、もっと広範囲の化合物を分子のお絵描きだけで解析してみよう。化合物と溶解度のテーブルは所定の場所からダウンロードし、自分で分子を組み立て、YMBで物性値を埋め込みテーブルを完成させよう。分子の構造がわから無かったらCAS番号を手がかりにネットで検索しよう。

name

CAS No.

308K、14MPa

name

CAS No.

308K、14MPa

ヘキサクロロエタン

67-72-1

 

m-methoxyphenylacetic acid

1798-09-0

 

ナフタレン

91-20-3

 

o-methoxyphenylacetic acid

93-25-4

 

6-メトキシ-1-テトラロン

1078-19-9

 

p-methoxyphenylacetic acid

104-01-8

 

インドール

120-72-9

 

methyl-m-nitrobenzoate

618-95-1

 

2,7-ジメチルナフタレン

582-16-1

 

methyl-o-nitrobenzoate

606-27-9

 

2,6-ジメチルナフタレン

581-42-0

 

dibenzofuran

132-64-9

 

安息香酸

65-85-0

 

myristic acid

544-63-8

 

無水フタル酸

85-44-9

 

octacosane

630-02-4

 

5-メトキシインドール

1006-94-6

 

oleic acid

112-80-1

 

1-ナフトール

90-15-3

 

palmitic acid

57-10-3

 

2-ナフトール

135-19-3

 

phenylacetic acid

103-82-2

 

o-ヒドロキシ安息香酸

69-72-7

 

progesterone

57-83-0

 

5-ヒドロキシインドール

1953-54-4

 

pyrene

129-00-0

 

2-アミノ安息香酸

118-92-3

 

skatol

83-34-1

 

5-アミノインドール

5192-03-0

 

vanillin

121-33-5

 

アントラセン

120-12-7

 

2,5-xylenol

95-87-4

 

インドール-3-アルデヒド

487-89-8

 

3,4-xylenol

95-65-8

 

2-aminopyrazine

5049-61-6

 

biphenyl

92-52-4

 

2-chloropyrimidine

1722-12-9

 

diphenylmethane

101-81-5

 

eicosanol

629-96-9

 

bibenzyl

103-29-7

 

fluorene

86-73-7

 

1-methylnaphthalene

90-12-0

 

4-hydroxypyrimidine

51953-17-4

 

2-methylnaphthalene

91-57-6

 

2-mercaptopyrimidine

1450-85-7

 

 

 

 

VSMRで変数選択を行うと、必ず融点を変数の一つに選択する。それは下図に示すように融点と溶解度が非常に高い相関を持っているからだ。融点は熱振動が分子間力に打ち勝って液体になる温度であるので、超臨界CO2の運動エネルギーが勝った場合に溶けると考えると合理的な気がする。

しかし、それが正しいとすると、カプサイシンの溶解度は-19.48となり、ほとんど溶解しない事になり現実と合わない。そこで融点のカラムを消去し変数選択を行う。

モデル式= A*密度 +B*HansendD -C*表面張力 -D
VSMRを用いてA-Dの変数を求めなさい。このモデル式を用いてカプサイシンを計算すると、-4.84となり一連の化合物の中でも非常に高い抽出となる事が予測される。 密度に関してはPirikaのこちらの記事を参照の事表面張力に関してはこちらの記事を参照の事

対応するブラウザーを使い、上のキャンバスに分子を描けばどのくらいの溶解度かを得る事ができる。
このように、一旦モデル式が作成できれば容易に新しい溶媒を使った時の溶解度を推算できる。それをバッチで走らせて一番いいものを探すなども簡単にできてしまう。Web版は制限があるが、それはハンディだ。同じ機能のソフトを使ったら学生に勝ち目は無い。学生はダウンロード・バージョンを使ってテーブルを埋めるように。社会に出てからも、こうしたサイクルをまわせば他所(先輩)に負けない研究ができるだろう。しかし、コンピュータだけに頼らず”何故”を考えるのは非常に重要だ。

このモデル式の中で一番寄与の高いのが表面張力である。表面張力と溶解度をプロットしてみよう。

このように、変数選択は相関係数の高さに注目して行われるので、注意が必要だ。特に今回の融点は自分も危うくだまされる所だった。逆に言えばVSMRの出す答えが何故、相関係数が高いのかを考える事は新しい閃きに通じる事もある。”叩けよ、さらば開かれん”かもしれない。

こうして得られたモデル式は、複雑な理論計算した式と比べても遜色無いものだった。

さらにデータを拡充して検討を加えた所、この表面張力が溶解性をコントロールしているその本質は、マランゴニ対流ではないか? という結論に達している。(2013.8.21)

HPLCは連続抽出?

対応するブラウザーをお使いなら、上のキャンバスに分子を複数描けばRTがどのくらいかを得る事ができる。

アルデヒド類のHPLC分析:

日立 High-Tech 技術資料より

課題:
HPLCの保持時間を推算するモデル式をYMBとVSMRを使って構築してみよう。

保持時間=A*分子体積+B*HansenのSP値-C
A-Cの値をVSMRを用いて決定してみよう。

他のHPLCの保持時間推算でもほとんど全てでそうであるが、HPLCの保持時間はHansenのSP値と分子体積で表現する事ができる。これは、特にHPLCのカラムにODSを使った時に顕著である。これは以下のスキームに示すように、ODSカラムでは溶質がオクタデカンに溶解とキャリアー溶媒への溶解が繰り返されて分離されるというHPLCの機構から考えると理解される。

つまり、非極性の溶媒との連続抽出を行っているようなものだ。最初の例でヘキサンへの抽出をlogKowをベースに考えて成功したように、この保持時間もlogKowをベースに考える事もできる。

モデル式=A' *logKow+B' *分子体積+C'

このようなモデル式が分子のお絵描きだけで得られるのがこの方法のミソだ。オクタノール/水分配比率につてはPirikaのこちらの記事を参照の事。分子体積は密度と分子量から計算できる。密度に関してはPirikaのこちらの資料を参照の事

化粧品中の防腐剤のHPLC:

大阪府立公衆衛生研究所報 第47号  平成21年 (2009年)にある、HPLCの保持時間を解析してみよう。

モデル式= -A*dP -B*dH +C*dD +D*分子体積 -E
2つの化合物がこのモデル式では合わない。どの化合物が合わないか、何故合わないか検討してみよう。

フラボノイド類のHPLC:

お茶に含まれるカテキン、大豆に含まれるイソフラボン、ベリー系の果実(ぶどう)に多く含まれるアントシアニンの総称。強い抗酸化作用があり、病気や老化の原因とされる 活性酸素を取り除く働きがある。

O+の部分はエーテルとしてYMBで計算してみよう。

保持時間=  -A*分子体積 -B*HansenSP +C
VSMRを用いてA-Cの係数を定めてみよう。

有機酸のHPLC:

Name

RT

oxalic acid

3.068

L-tartaric acid

3.579

formic acid

3.831

L-malic acid

4.597

L-ascorbic acid

5.002

lactic acid

5.622

acetic acid

5.967

maleic acid

7.191

citric acid

8.008

succinic acid

9.279

fumaric acid

10.475

acrylic acid

12.471

propionic acid

14.53

glutaric acid

19.278

itaconic acid

23.037

有機酸の保持時間のモデル式をたてて見よう。

このようにHPLCの保持時間とハンセンの溶解度パラメータ、分子体積は非常に高い相関がある。違うカラムを用いた場合など、自分だけのファインチューニングした保持時間の式を作りたいのならYMBとVSMRが有効であろう。

 

化粧品中のアレルゲンのGC分析

ガスクロもHPLCと同様で、連続蒸留しているようなものだ。

Name

RT

リモネン

2.3771

リナノール

2.8372

ユージノール

4.4671

リリアール

5.4312

ヘキシルシン ナムアルデヒト

6.5514

安息香酸ベンジル

6.6467

サリチル酸ベンジル

7.1405

GCの保持時間があり、各成分をYMBで計算すればすぐにモデル式を作れるだろう。

モデル式= A*沸点 -B*hansen SP -C

VSMRを使ってA-Cの係数を定めてみよう。

沸点の推算に関してはPirikaのこちらの記事を参照の事。

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