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25-May-2017

MOOC: 004-フッ素ゴムの設計

講義資料 非常勤講師:山本博志  2012.1.12 (改訂2014.7.18)

フッ素樹脂ハンドブック(日刊工業新聞社) P.564に、フッ素ゴムが溶媒にどのくらい膨潤するかの一覧がある。ポリマーを改良している研究者になったつもりで考えてみよう。このゴムは次のモノマーを共重合して合成される。

こうしたフッ素ゴムはパッキンなどのシール材に使われているが、アルコール成分(ガソリンにエタノールを混ぜた混合燃料などで特に問題になる)で膨潤してしまう事が問題になっている。

溶媒

体積増加率(%)

分子体積

誘電率

密度

ダイポールモーメント

アセトン

129

67.6

21.0

0.79

2.88

メチルエチルケトン

135

86.1

18.6

0.80

2.76

メチルイソブチルケトン

164

124.0

13.1

0.80

2.69

エチルカーボネート

77

123.5

2.8

0.97

1.1

酢酸メチル

100

76.6

7.1

0.93

1.68

アクリル酸メチル

89

88.2

7.0

0.95

1.77

ジエチルエーテル

31

92.5

4.3

0.71

1.15

THF

140

81.1

7.5

0.88

1.63

トリエチルアミン

35

133.8

2.4

0.72

0.66

N,N-ジメチルフォルムアミド

85

82.2

38.3

0.95

3.81

2-メチルヘプタン

157.6

2.0

0.70

0

四塩化炭素

5

87.6

2.2

1.58

0

クロロホルム

14

72.8

4.8

1.48

1.01

ジクロロメタン

15

58.4

8.9

1.32

1.6

トリクロロエチレン

83.1

3.4

1.46

0.77

テトラクロロエチレン

 

97.2

2.3

1.61

0

これらの図を見て、溶媒の物性のどれが、体積増加率にどう影響するか、定量的に答えられるだろうか? エタノールだったら、どれだけ体積増加するか答えられるだろうか?

これを、YMBとVSMRを使って解析してみよう。(004.xlsをダウンロードし開いておく。YMBとYSBを別画面で立ち上げておく。)

まずは、YMBを使って分子のお絵描きをしなくてはならない。お絵描きの際には水素は省略しても良い。ソフトの使い方に関してはこちらの資料を参照。HTML5に対応しているブラウザー、Chrome, FireFox, Safariなどを使って溶媒分子の構造を描こう。(溶媒名から分子構造が分からない場合にはネットで検索しよう。)正しい分子構造を与えれば、YMBは30個以上の物性推算値を出力するので、それをテーブルに入れこむ。各溶媒の体積増加率と推算値の一覧テーブルを下のように作る。分子構造が分かれば、10分とかからないだろう。

YMB14fではCNDOの計算値は得られない。他の物性値を使ってモデル式を構築する。

体積増加率と各物性との相関はグラフを一つずつ描いてみれば簡単に分かるだろう。それを行うには表計算ソフトでグラフを描く。グラフを選択するとグラフで使われているカラムに色がつく(X軸はピンク、Y軸は青。Macの場合)その段階で下図のようにマウスでドラックするとカラムを入れ替えるとX軸はそのままに、Y軸のカラムを入れ替える事ができる。

 

問題なのは、複数の物性が組合わさると、一つ一つの相関は低くても、悪い所がキャンセルされることもあるということだ。

体積膨張率=-52.17*密度+30.31*ダイポールモーメント-181.1*負電荷最小値+52.63

その場合、
36変数から3個の変数を取り出す、36C3=36*35*34/(3*2*1)=7140通り
36変数から4個の変数を取り出す、36C4=36*35*34*33/(4*3*2*1)=58905通り
これを手作業で行うか?というのが問題だ。

これを自動で行うのが変数選択重回帰(VSMR)のプログラムだ。(現在は提供していない。読み飛ばすように

遺伝的アルゴリズムを使った方法なので、”必ずグローバルミニマムが見つかる”とは言えないが、非常に高い確率でそれなりの相関係数を持った変数の組を見つけてくれる。例えばこの体積膨張の例で変数4で探索すると、

体積膨張率=-16.08*log(HenryC) +0.66*Mol Volume +53.53*Dipole Moment -239.90*Min minus Charge -142.6891

このような推算式を返してくれる。Henry定数は水へ溶解した時の蒸気圧の比例定数なので(Pirikaのこちらのページを参照)、水溶性の尺度となる。それが効いていると思うか思わないかは化学者としてのセンスになる。この推算式でエタノールを計算すると、体積膨張率の推算値は78%になる。

このようにして、このポリマーは、分子中の負電荷が大きい原子を持ち、ダイポールモーメントが大きい溶媒に良く膨潤することが分かった。それは何故であろう?

YMBを使うと各原子上の電荷を計算する事ができる。(チャージ計算はPirikaのこちらの資料を参照)それを見ると、このポリマーは水素の電荷が+、フッ素の電荷がーにチャージされ大きなダイポールモーメントを持つ事がわかる。そこで、溶媒が分子中に大きな負電荷を持つと、それはおそらく水素の部分に配位して溶媒和するのであろう。実際の改良としては、よりフッ素含量の多いポリマー(F-73%)が合成された。ちなみに元のポリマーはF-70%である。

溶媒

体積増加率(%)

改良後

アセトン

129

44

メチルエチルケトン

135

43

メチルイソブチルケトン

164

42

エチルカーボネート

77

23

酢酸メチル

100

37

アクリル酸メチル

89

28

ジエチルエーテル

31

14

THF

140

42

トリエチルアミン

35

11

N,N-ジメチルフォルムアミド

85

21

2-メチルヘプタン

3

四塩化炭素

5

5

クロロホルム

14

11

ジクロロメタン

15

8

トリクロロエチレン

9

テトラクロロエチレン

 

4

課題
改良後のポリマーがエタノールでどのくらい体積増加するか検討せよ。

2014年改訂

自然現象はただ2つの基本的な力で説明できる。それは愛と憎しみで、愛は物を引き寄せ、憎しみは物を引き離す。(紀元前450年、ギリシャ, Empedocles)
本講義ではこの2460年前のコンセプトをもとに、先端物質を取り扱うので、変数にはハンセンの溶解度パラメータを用いる。配布した004.xlsの最初のタブに体積増加と書籍に記載の物性値がまとまっている。2番目のタブで重回帰を計算してみよう。YSBでCross Termを5と指定してクロスタームが0の時と2の時、相関がどうなるか確認してみよう。クロスタームの意味が分からなければ、重回帰の基礎を読み直そう。

重回帰法(クロスターム=0)では以下のようになる。

クロスタームを2つ入れると以下のようになる。

課題

選択されたクロスタームは何になったか。何故そのクロスタームが選ばれたと思うか?
エタノールの体積増加は幾つになると予測されたか? これは妥当であると思うか?
日本ではETBE(ethyl tert-butyl ether)がエタノールの代わりに使われる可能性がある。この体積増加は幾つになるか?

次に3番目のタブ(YMB)で、Smilesの構造をコピーし、YMB14fで物性推算し、結果を緑色の場所にペーストする。全ての化合物について計算し、表を埋める。

そして、4番目のタブ(YMB重回帰)で、先ほどの計算結果のうち、ハンセンの溶解度パラメータの部分を埋める。(一部の分子で体積増加の値が無いものがあるので注意)

そしてYSBで重回帰計算を行う。

重回帰の結果

クロスタームを1つ入れた場合の結果

課題

選択されたクロスタームは何になったか。何故そのクロスタームが選ばれたと思うか?
エタノールの体積増加は幾つになると予測されたか? これは妥当であると思うか?
日本ではETBE(ethyl tert-butyl ether)の体積増加は幾つになるか?

このフッ素ゴムはフッ素含量をアップする事によって耐溶剤性の改良が検討された。改良後の体積増加率の推算式を求めよ。その時のエタノールとETBEの体積増加率を求めよ。(004.xlsの改良後体積増加のタブ)

このように、最先端材料であるフッ素ゴムの耐溶剤性が、愛と憎しみ(ハンセンの溶解度パラメータ)で見積もる事ができるようになる。

こうしたフッ素ゴムのフッ素含量を上げる為には、次のようなパーフルオロのモノマーをVF2, HFPと共重合する。(パーフルオロ・モノマーが入った分だけフッ素含量がアップする。)

ここでは、TFEを使うとして、VF2, HFPとの3元系のポリマーを考えてみよう。こうしたフッ素ポリマーをゴムとして扱う上で重要なのはゴムの耐寒性だ。ゴムは冷やされる事で弾性を失う。それを回避する為にはポリマーのガラス転移温度(Tg)が重要になる。フッ素樹脂ハンドブック(日刊工業新聞社)にこの3元系のポリマーのTg点が記載されている。

課題
004.xlsのTg推算のタブを開き、テーブルを埋め、YSBを使ってTg点の推算式を構築せよ。

Tg = XXX*VDF(mol%) + YYY*HFP(mol%) +ZZZ*TFE(mol%) +const.

グラフは次のようになっただろうか?

この式とグラフの意味する事はなんだろうか?

 

ただし、3元系でフッ素含量が73%であればどんなポリマーでも良いという訳ではない。

"Technology of Fluoropolymers", Jiri George Drobny, CRC Pressには次のような三角図が載っている。

この3角図の意味する事はこの3元系のポリマーではゴム領域となるポリマー中の組成は斜線の所に限られる、という事だ。

フッ素含量が73%と決まっているのであれば、VDF(100-x-y)、HFP(y)、TFE(x)としたときに

2*(100-x-y) : 2*(100-x-y)+6y+4x= 27:73

という方程式が成立する。変数が2つで、式が1つなので解けない。そこでゴム領域となる条件
VdF 30-70% 100-(x+y)
HFP 20-60% y
TFE 0-40%  x
から、xの量を1-40まで1%刻みで仮定してみる。004.xlsの73%タブを開いて実際にやってみよう。

すると、VDFの量とHFPの量は一つに決まる。そして、TFEの量が20%を超えるとHFPの量がゴム領域を外れる事がわかる。(実際にはゴム領域のデータはwt%でTgの推算はmol%なので正しくは無い。)それにしてもTFEを細かく取ればフッ素含量が73%の処方は無数に存在する事が判るだろう。

課題

先に求めたTg点の推算式を使い、ゴム領域を満足するポリマー組成のうち最も低いTgとなる組成をテーブルから選びなさい。

こうして、Tg点を一番低くするフッ素含量73%のポリマー組成が求まったとしても、モノマーをどの比率で仕込めばそうしたポリマーができるかは別問題である。それはモノマーの反応性比によってポリマー中に導入されるモノマーの比は仕込みの比とは異なるからである。それについてはポリマーのシーケンス解析で別途説明する。

同様なポリマーの膨潤性に関しては、LiB用のバインダーポリマーがあり同じようにHSPを使って解析がなされている。

蛇足ながら重回帰法の基礎:

重回帰法の基礎へ移動(2014.7.17)

 

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