Pirika logo
JAVA,HTML5と化学のサイト

Pirika トップ・ページ

Pirikaで化学
 物性化学
 高分子化学
 化学工学
 分子軌道
 情報化学

 その他の化学
 アカデミア
 MOOC講義資料
 プログラミング

ハンセン溶解度パラメータ(HSP):
 HSP基礎
 HSP応用
 ポリマー
 バイオ・化粧品
 環境
 物性推算
 分析
 化粧品の処方設計
 その他
 自分でやってみよう

雑記帳

代理購入?
英語で諦めていませんか?HSPiPの代理購入なら映像工房クエスチョンへ。すぐにお見積りします。
(日本語ドキュメントサービス中)。Mail

 

Ad Space for you

 

 

 

Last Update

25-May-2017

MOOC:003-引火点の推算式を自分で作ってみよう

講義資料 非常勤講師:山本博志  2012.1.12  全面改訂2014.7.18

YMBとVSMRの使い方を、引火点の推算式を自分で作って理解しよう。引火点は危険物の分類として非常に重要な物性値である。(003-1.xlsをダウンロードし開いておく。YMBとYSBを別画面で立ち上げておく。)

第4類

引火点

 

 

 

特殊引火物

<-20℃

発火点<100℃ 沸点<40℃

ジエチルエーテル、酸化プロピレン

第1石油類

<21℃

ガソリン、アセトン、トルエン

第2石油類

21℃< <70℃

灯油、キシレン、クロロベンゼン

第3石油類

70℃< <200℃

20℃で液体

クレゾール、ニトロベンゼン

第4石油類

200℃< <250℃

20℃で液体

潤滑油、フタル酸ジオクチル

 

リチウム電池で使われている溶媒には次のようなものが知られている。これらの引火点は次の値になる。

化合物 引火点℃
diethyl carbonate 25
ethylene carbonate 143
Dimethyl Carbonate 18
Propylene Carbonate 131.85
acetonitrile 12.8
butyronitrile 17
propionitrile 2
gamma-butyrolactone 98

課題
何故、環状のカーボネートと鎖状のカーボネートで引火点がこれほど変わるのか考察せよ。

まず、最初にやることは、YMBを使って分子のお絵描きをすることだ。分子の構造が判らなければネットで調べてみよう。お絵描きの際には水素は省略しても良い。ソフトの使い方に関してはこちらの資料を参照

課題:

003-1.xlsのLib用溶媒引火点のタブを開き各化合物の物性を推算しテーブルを埋めよ。(YMB14fを使った場合以前の計算結果とは異なる場合もあるが、大きくは変わらないので説明は以前計算したもので続ける。)

お絵描きが済めば瞬間で以下の分子物性が計算される。それをテーブルにまとめておく。(ここでは行列を入れ替えて表示してある)

name Ethyl carbonate ethylene carbonate Dimethyl Carbonate Propylene Carbonate acetonitrile butyronitrile propionitrile gamma-butyrolactone
引火点℃ 25 143 18 131.85 12.8 17 2 98
MW 118.13 88.062 90.078 102.088 41.054 69.106 55.08 86.088
BP(K) 399.75 509.18 362.58 508.04 328.07 387.32 355.7 451.61
MP(K) 247.11 262.14 256.19 254.52 187.39 193.71 182.98 253.24
AntA 7.1294 7.1942 7.3323 8.1938 7.2425 7.1342 7.1313 7.1662
AntB 1414.7 1816.6 1360 2227 1209.5 1369.9 1268.5 1611.7
AntC 206.371 185.115 216.095 184.265 222.38 207.9 215.881 197.65
Tc(K) 579.69 756.28 544.31 744.38 508.69 575.11 538.97 709.15
Pc(Bar) 3.41 6.918 4.48 5.091 5.267 3.884 4.462 3.475
Vc(cm^3) 357.3 189.6 249.7 247.3 173.5 285.1 227.3 237.7
logKow 1.169 -0.219 0.183 -0.071 -0.048 0.854 0.381 -0.373
logS 0.274 1.303 1.245 1.342 1.149 0.191 0.75 1.128
log(HenryC) -4.06 -1.117 -4.401 -0.657 -4.434 -4.071 -4.263 -1.059
Mol Volume 119.92 67.59 86.48 85.36 54.67 88.39 71.39 79.76
Mol Surface 154.42 101.5 114.65 120.96 72.33 114.03 92.22 112.83
Ovality 1.313 1.265 1.212 1.29 1.039 1.188 1.108 1.259
Density 0.985 1.303 1.042 1.196 0.751 0.782 0.772 1.079
Hv(@BP) 36.93399 50.77179 32.87577 50.09996 30.76316 35.81185 33.18744 43.27639
Hildebrand SP 18.6 29.5 20 26.8 24.3 20.6 22.1 24.5
Hansen totHSP 17.9 29.2 18.6 26.4 22.7 20.2 21.1 24
Hansen dD 15.3 18.4 15.2 17.9 15.6 15.7 15.6 17.2
Hansen dP 6.8 21.2 8 18.3 17.2 12 13.2 14.8
Hansen dH 5.7 6.3 6.7 5 4.5 4 4.1 8.1
Heat Capacity(Liq.) 204.64 126.12 150.88 201.87 96.72 150.62 123.27 142.39
log Viscosity(Liq.) -0.012 0.792 -0.084 1.874 -0.407 -0.117 -0.283 0.33
Thermal Conductivity(Liq.) 133.85 166.18 140.84 177.45 178.81 162.24 167.2 163.32
Surface Tension(Liq.) 26.15 64.18 26.11 48.31 20.87 29.16 26.25 45.75
Refractive Index 1.381 1.404 1.349 1.415 1.325 1.378 1.358 1.421
Heat of Formation -137.61 -123.73 -129.01 -131.82 24.68 13.88 20.38 -85.6
Dipole Moment QEQ 0.667 5.379 0.528 6.32 2.243 3.267 2.712 4.767
Max plus Charge atom 0.266 0.299 0.274 0.292 0.06 0.042 0.048 0.236
Min minus Charge atom -0.353 -0.308 -0.348 -0.316 -0.142 -0.154 -0.151 -0.337
HOMO -14.2 -14.69 -14.44 -14.56 -15.62 -14.93 -15.14 -14.22
LUMO 3.49 3 3.21 2.76 5.27 5.27 5.25 2.76
Dipole Moment CNDO 0.542 3.221 0.226 3.453 1.623 1.762 1.66 2.974
Max plus Charge atom CNDO 0.425 0.447 0.432 0.438 0.072 0.064 0.067 0.339
Min minus Charge atom CNDO -0.328 -0.294 -0.324 -0.29 -0.151 -0.156 -0.155 -0.293

(これらの物性値をハンドブックから集める時の苦労を考えてみよう。お絵描きだけから推算値が得られるのはありがたい事だとわかるだろう。HOMO, LUMO, CNDO電荷はYMB14fでは計算されない。

引火点とこれら36個の物性がどのような関係にあるかは、例えばグラフを一つ一つ眺めればいい。引火点がどんな物性値と相関があるのかを知ることができる。

これを行うには表計算ソフトでグラフを描く。グラフを選択するとグラフで使われているカラムに色がつく(X軸はピンク、Y軸は青。Macの場合)その段階で下図のようにマウスでドラックするとカラムを入れ替えるとX軸はそのままに、Y軸のカラムを入れ替えた図が表示される。

例えば次のような図が簡単に得られる。

 

2つ以上の物性値が絡み合って引火点を決めている場合には、重回帰法を使う(重回帰法の基礎)。例えば引火点を臨界温度(臨界温度の推算はPirikaのこちらのページを参照)と屈折率(屈折率の推算はPirikaのこちらのページを参照)から推算するとしたら、

引火点予測値=0.8132*臨界温度-791.7183*屈折率+643.8141

とすると、

非常に良好に引火点を推算することができるように見える。屈折率と引火点の相関はあまり高くないように見えるが、屈折率と臨界温度が組み合わされると、重回帰の結果としては最も相関係数が高くなる。

2013年以降はVSMRは提供していない。

それでは、30種類以上のYMBが計算する物性値から引火点と関係する物性値を選択するにはどうしたらいいだろうか? 単独では相関が低くても、組み合わせで高い相関を持つことがある。例えば36個の変数から順列組み合わせで2つの変数を選択する場合の数は、36C2=630通り、3つの変数を選択する場合の数は、7140通りある。それらを全て重回帰計算して相関係数の高いものを選ぶのは非常に効率が悪い。何も考えずに答えが欲しいのであれば主成分分析や、PLS法などで答えを求めるのも一つの手だ。しかし、化学者としてのセンスを活かしたのなら予測したい現象を説明できる因子を自分で考える癖をつけるのは大事なことだ。何故だかが示されたとき、材料、プロセスの改良方向がはっきり見えてくる。

それを助けるのが、変数選択重回帰プログラム(VSMR)だ。選択したい変数の数を入力してSearchボタンを押すと、相関係数が高くなる変数の組み合わせを探索してくれる。変数の数が多くなってきた時に有効だ。

ただし、このプログラムは化学的な意味合いを考えて変数選択する訳ではない。例えばこの引火点の例では、臨界温度と屈折率を2つ選択すると一番高い相関となるという答えになったが、屈折率がなぜ選ばれたかは化学的に意味が無いように思える。そこで幾つかの化合物の引火点をこの式を使って予測してみる。

Acetone -18
Methyl ethyl ketone 14
Ethanol 13
Ehtyl ether -45
N,N-Dimethylformamide 58
1,2-dichloroethane 13

すると赤四角で示すように、幾つかの化合物で誤差が大きいことがわかる。

そこで、臨界温度と屈折率を消去して変数選択を繰り返す。引火点と関係なさそうな変数を消去し変数選択を繰り返すと、最終的に得られた推算式は

引火点のモデル式=0.8362*沸点+0.0366*Heat of formation-286.7096 となる。

この式を使って追加の化合物の引火点を予測してみると上に示すように良好に予測できていることがわかる。このように、引火点が、沸点(沸点が高いと蒸気の量が少ない)と生成熱(生成熱が小さいと分子が安定)とで表現されていることから、この推算式の妥当性が高いのではないかと予想される。

課題:

003-1.xlsのLiB溶媒-重回帰のタブを開き、YSBを用いて重回帰計算を行い、重回帰式を作成しよう。説明変数としては上記と同様、沸点とHeat of formationを用いる。(バージョンが異なるので上と同一にはならない)この推算式が妥当であるかどうか、いあわゆるGreen Solvents(これがどのよううな物かはこちらのページを参照)に適用してみよう。003-1.xlsのGreen Solventsのタブを開き、YMBを使って物性値を埋める。先に求めた重回帰式で引火点を予測し、実験値と比較せよ。

たった8個の引火点のデータから作成した重回帰式にも関わらず、良好に引火点が推算できる事がわかる。

課題:

どのような化合物の引火点予測値が誤差が大きいか特定し、その特徴を考えてみよう。

実は引火点は沸点だけからでも良好に推算する事ができる。

そこで、003-1.xlsにあるように、種々のモノマーの引火点と沸点の相関を取って、フッ化ビニリデンの引火点を入れれば、下図に示すように非常に精度よくフッ化ビニリデンの引火点を予測する事ができる。

引火点=0.8493*沸点-299.48

それでは、引火点の推算式は作らなくてよいかというと、そうは単純ではない。

VOC(揮発性有機化合物)の引火点の推算にこの推算式を適用したところ、下図のようになった。。

 

課題:

どのような化合物が大きく外れるか特定しよう。

ざっくり見るとハロゲン原子が入ると推算値が大きくずれている事が判る。それは例えば塩素含有の化合物の場合、燃焼によって発生する塩素ラジカルが燃焼をクエンチするからである。そこで重回帰で計算するテーブルに、Formulaを参照に原子の数を付け加える。

すると重回帰の計算結果は非常に改良される事が判る。

課題:

この後に、再び誤差の大きな化合物を特定する。(環の数、2重結合の数、芳香環の数などに着目してみよう)(重回帰計算は行わなくてよい。YSBはデータ数100個までしか計算できない)

そして、新しいカラムを挿入して重回帰を繰り返し、最終的な予測式を作り上げて行く。さらに必要に応じてクロスタームを導入する。以上が自分で何かの予測式を作る時の流れになる。

YMBの推算値だけから作った予測式の相関係数がそれなりに高ければ、データ集、DBから実験値を持ってきてより精度の高い実験式を作るのもいいだろう。論文とか特許を書くときには大変役に立つ。逆に、こうした30個以上の物性値を先にデータ集、DBから探してテーブルに入れこもうとする場合には膨大な作業となることは明らかだろう。しかも集めたデータが予測に役立つかどうかはわからないし、1つでも実験値が無ければそのカラムの他の化合物のデータは役に立たなくなってしまう。研究開発のスピードの感覚を養ってほしい。

練習問題
実際のLiBにはEC:DMC:DEC=1:1:1の溶媒が使われることが多い。FlashPoint は順に143℃:18℃:25℃である。LiBの発火事故は中身の溶媒が自然発火温度まで達して爆発事故につながるケースが多い。(003-2.xlsをダウンロードし開いておく。)これらの溶媒の発火温度は以下のようになっている。自然発火温度の推算式を引火点と同じように構築してみよう。発火温度のん発火温度は鎖状のカーボネートと環状のカーボネートで差が少ない理由を考察せよ。また、データの無いジメチルカーボネートの値を予測してみよう。

化合物

発火温度(K)

Ethyl carbonate

607

ethylene carbonate

572

Propylene Carbonate

623

acetonitrile

797

butyronitrile

774.816

propionitrile

785

Acetone

738.15

Methyl ethyl ketone

789

Ethanol

696

Ehtyl ether

433.15

N,N-Dimethylformamide

718.15

1,2-dichloroethane

686

 

2012年の講義ではボーイング787でLiBバッテリーが発火した事例を取り上げ、解析を行った。

練習問題:

787のLiBはGSユアサが製造した。宇宙用のバッテリーを手がけるなど非常に高度な技術を持っている同社の添加剤を解析してみよう。"ユアサ LiB 難燃剤”とインターネットで検索し、論文をダウンロードする。下記の化合物がでてくる。

BP(K) AntA AntB AntC
ジエチルカーボネート
(CF3CH2O)2C=O
(CF3CH2O)3O=O
CF3CF2CH2OCF2CF2H

(003-3.xlsをダウンロードし開いておく。)YMBを使って物性推算を行い、沸点やアントワン定数を表にまとめよう。次にアントワン定数から蒸気圧曲線を描いてみよう。蒸気圧が5気圧になる各添加剤の温度を求めよ。

 

実務例:

フッ素ゴムへ移動(2014.7.18)

 

蛇足ながら重回帰法の基礎:

重回帰法の基礎へ移動(2014.7.17)

自分でやってみよう(MOOC)トップページへ戻る。

 

メールの書き方講座