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25-May-2017

MOOC | グリーンソルベントの製造プロセス

講義資料 非常勤講師:山本博志 2012.9.7

この内容については講義しない予定だ。それは、この講義は分子レベルの解析を化学工学にどう利用していくか、をメインにしているからだ。しかし内容的には最も化学工学に近い内容だ。

DBE溶媒

自分は、今、フランスの会社、アメリカの会社とDBE(2塩基酸、ジエステル)溶媒をハンセンの溶解度パラメータ(HSP)を使った評価に携わっている。これは分子の両末端にカルボン酸を持つ化合物のエステル体だ。詳しいことはこちらの記事を参照にして欲しい。彼らは詳しい製法は明かしてくれないが、色々調べてみると、こちらの文献が元のようだ。廃ポリエチレンをリサイクルする方法だ。

Oxidative Chemical Recycling of Polyethlene M. L. Trehy

反応条件やポリエチレンの種類を変えると、diacidの生成比率などが変わる。プロセスの運転条件とその時の収率、生成比などが判ると面白い解析ができるのだが、残念ながらそれは見つからなかった。

代わりに、東北大学の論文を解析してみよう。こちらはポリ塩化ビニルをリサイクルする。

Polymer Degradation and Stability 67 (2000) 285±290
Chemical recycling of rigid-PVC by oxygen oxidation in NaOH solutions at elevated temperatures

これは、硬質のポリ塩化ビニルを酸素と水酸化ナトリウム(NaOH)を使って、Oxalic acidとその他の水溶性カルボン酸を得るという論文だ。(得られたシュウ酸もDBEの原料になりうる。)

 時間の効果

NaOHの効果

酸素の効果

 温度の効果

このデータから値を読み取り、一覧表を作る。

Run weightLoss Time NaOH Temp PO2
1 7.454 1.118 15 250 5
2 27.561 2.11 15 250 5
3 60.115 3.126 15 250 5
4 74.597 5.141 15 250 5
5 91.334 8.036 15 250 5
6 93.969 12.151 15 250 5
7 95.619 18.271 15 250 5
8 96.284 24.277 15 250 5
9 91.521 5 1.07 250 5
10 98.58 5 5.027 250 5
11 75.045 5 15.078 250 5
12 63.946 5 25.029 250 5
13 49.143 5 15 250 0.936
14 51.339 5 15 250 2.759
15 75.035 5 15 250 4.593
16 65.152 5 15 250 6.402
17 77.831 5 15 250 9.185
18 0.444 5 15 22.196 5
19 6.972 5 15 79.11 5
20 29.573 5 15 137.368 5
21 34.275 5 15 158.752 5
22 37.014 5 15 180.827 5
23 56.607 5 15 228.237 5
24 74.746 5 15 248.429 5
25 27.3 5 15 203.974 5

それでは、この重量減少率を、時間、NaOH量、温度、酸素分圧から予測する式を作ってみよう。このような変数が一つでないものの解析は多変量解析と呼ばれる。重量減少率を知りたいのだから、これを目的変数と呼び、時間、NaOH量、温度、酸素分圧は説明変数と呼ばれる。

こうした多変量解析のうち最もポピュラーなものは、重回帰法(最小二乗法: Multiple Regression)だろう。簡単な説明は2011年講義資料にも書いたが、Excelにも搭載されているのですぐに試すことができる。この重回帰(MR)法を使って重量減少率の予測式を作ってみる。

weight loss% = 2.6852162*時間+-1.880147*NaOH量+0.30882597*温度+3.464859*PO2+-16.699718

となる。式の意味は明快で、各説明変数の(平均的)効果が定量的に判る。例えば、時間を1時間から2時間にした時には、重量減少は時間の係数分、つまり2.6852162だけ大きくなる。

この重回帰の結果と実験値をプロットしてみよう。

このように、相関は高くない。何故そのような結果になるかというと、もとのグラフから判るように、NaOH量、PO2はともかく、時間と温度は重量減少に対して直線で変化するわけでは無いからだ。このように重回帰法では、項目間の相互作用がある場合、項目の影響が非線形の場合、正しい結果を与えないので注意が必要だ。今回のように非線形な現象を取り扱うには、ニューラルネットワーク法(Pirikaのこちらのページで説明)や非線形回帰式を用いる。

Pirikaでは、様々な物性推算を行うため、ニューラルネットワークを初め、いろいろな解析用のソフトを自作している。その中の非線形回帰計算ソフトを使ってこの現象を解析してみよう。

weight loss% = -56.923496 + 2.3260145*(POWER((時間*584.7513+1),0.4085399)*POWER((NaOH量*0.61836386+1),-0.123191014)*POWER((温度*0.0014435912+1),2.6282134)*POWER((PO2*0.03379221+1),0.9536238))

という結果が得られた。その結果と実験値をプロットしてみよう。

結果が100%を超えるものが現れ、一見すると精度は低そうだが、重量減少は100%を超えることはありえないので、結果が100%を超えるものは強制的に100%にしてしまって良い。そうすれば広い範囲で精度よく推算できていることが判るだろう。通常の数学的な統計解析ソフトでは、こうした化学的にありえないという概念を導入できない。例えば引火点が>110℃というデータは110℃と入れて推算式を作ったらとんでもない結果になるし、水への溶解度も100%と書いてある値は自由混合であって値が100%ではない。これを正しく評価する解析ソフトは化学者が作るしか無い。というのが自分の持論だ。

この方法では項目間の相互作用は考慮していない。実験の種類によってはそうしたものを導入しなければならないだろうが、大元の実験のチャートを見ても、実験誤差が大きいように見える。また、非線形性を入れずに相互作用項だけから解析するソフトも作ってあるので、それで解析すると次のようになる。

重回帰法よりはましであるが、やはり非線形性が重要なのだろう。

どのレベルの計算をするかは、やっている本人にしか判らないだろう。化学工学のセンスを磨いて欲しい。

このように、一度プロセスの運転条件とその結果を表す関係式を作ってしまえば、どのような運転条件にした時に時間を最短にできるか、とか、コスト(温度のコスト、NaOHのコスト、時間のコスト)を最小にする運転条件は?なども簡単にシミュレーションできるようになる。ここではグリーンソルベントの製造プロセスを例に上げたが、どのようなプロセスでも応用できる大事な技術だ。

ただし、現在シュウ酸の値段は$600-800/ton(中国品)である。苛性ソーダは$500-590/tonなので、原料が廃プラスティックでただだとしても、塩ビからシュウ酸を作ろうとは誰も思わない。焼却が選択されるだろう。最初のポリエチレンのプロセスとの差は明らかだ。

このように、チャートをデジタイズして、関数に載せコンピュータで利用するというのは、クラシカルな化学工学とコンピュータを使った化学工学を結びつける上で重要な技術だ。Pirikaでは攪拌翼の混合特性のチャートをコンピュータにのせた例がある。

数式で載せるには永田の式など複雑な計算をしなければならないがニューラルネットワークを使えば簡単に数式化できる。

それでは、エーテルはどのように導入するのだろうか?

ポリアルキレングリコール(PAG)溶媒

多くの場合、エーテル系のグリーンソルベントはアルコール化合物にプロピレンオキサイド(PO)、エチレンオキサイド(EO)を付加させて合成する。ノニルフェノールにEOを付加すれば界面活性剤が合成される。ライオン花王など洗剤関係ではよく使われる。ノエビア化粧品メナード化粧品など化粧品用の保湿剤などの需要も多い。機械系では作動油と呼ばれる潤滑油にも使われる。EOの重合体ポリエチレングリコール(PEG)は水にも完全に溶け、高分子電解質、医薬品の製剤関係、保冷剤などに使われる。PEGは分子量が高くなると室温で固体になるが、ポリプロピレングリコール(PPG)はどれだけ分子量が上がっても固体化しない。PEGの固体化を防ぐためにPOを共重合し液状化するなどの検討が行われている。

この反応を行う際、花王特許(P2009-280543A) にあるように、「アルカリ触媒により生成したアルコラートがPOのメチル基の水素を引き抜くことでPOの異性化が起こり、アリルアルコールやプロペニルアルコールが生成することが知られている。」や、ライオンデル ケミカル テクノロジー、 エル.ピー.の特許(P2011-509930A)にあるように、「商業的に製造されるプロピレングリコールモノアルキルエーテルは、少量であるが有意量のカルボニル不純物を含む。高いUV吸光度をもたらす種々のカルボニル不純物(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、アセトン、メトキシアセトン、及びメトキシブテノン)で汚染されている」とある。

ライオンデルの特許では、こうしたアルデヒド、ケトン類を活性炭で吸着除去する精製法をクレームしている。

ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、アセトン、メトキシアセトン、メトキシブテノンの活性炭吸着が気相吸着と変わらないとして、2011年講義資料(活性炭の吸着)のページで吸着量を計算してみよう。

 

自由研究:

コストから考えて塩ビのリサイクルがありえないとすると焼却されることになる。その際に問題になるのはダイオキシンの問題だ。Wikiを調べると、「800℃以上の高温での保持時間を長くし完全燃焼させ、300℃程度の温度の滞留時間を短くするため急速冷却し、活性炭により生成された微量のダイオキシン類を吸着しバグフィルターでろ過してから再加熱し大気中に放出している」とある。ダイオキシン類の活性炭吸着を2011年講義資料と同様に計算し評価しなさい。また、ダイオキシン類の毒性等量因子(TFE:toxic equivalency factors)を推算するモデル式をYMBを使って構築しなさい。

name lofTEF
2,3,7,8-TCDD 0.000
1,2,3,7,8-PeCDD 0.000
1,2,3,4,7,8-HxCDD -1.000
1,2,3,6,7,8-HxCDD -1.000
1,2,3,7,8,9-HxCDD -1.000
1,2,3,4,6,7,8-HpCDD -2.000
OCDD -3.523
2,3,7,8-TCDF -1.000
1,2,3,7,8-PeCDF -1.523
2,3,4,7,8-PeCDF -0.523
1,2,3,4,7,8-HxCDF -1.000
1,2,3,6,7,8-HxCDF -1.000
1,2,3,7,8,9-HxCDF -1.000
2,3,4,6,7,8-HxCDF -1.000
1,2,3,4,6,7,8-HpCDF -2.000
1,2,3,4,7,8,9-HpCDF -2.000
OCDF -3.523
3,3',4,4'-TCB (77) -4.000
3,4,4',5-TCB (81) -3.523
2,3,3',4,4'-PeCB (105) -4.523
2,3,4,4',5-PeCB (114) -4.523
2,3',4,4',5-PeCB (118) -4.523
2',3,4,4',5-PeCB (123) -4.523
2,3,3',4,4',5-HxCB (156) -4.523
2,3,3',4,4',5'-HxCB (157) -4.523
2,3,4,4',5,5'-HxCB (167) -4.523
2,3,3',4,4',5,5'-HpCB (189) -4.523

どんな物性値が毒性に影響を与えているか考えてみよう。

 

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