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25-May-2017

MOOC: 008、プロセス合理化、反応時間の短縮

講義資料 非常勤講師:山本博志  2012.1.12 (改訂:2014.8.4)

化学、化学工学のプロセスでは、製造工程の合理化は切っても切れない。製造規模を上げて容積効率を上げられればいいのだが、実際には少量多品種の逆の向かっている。そうした時に、例えば今まで10時間時間かかっていた反応が4時間で同じものが作れれば、反応器や熱媒などのエネルギーコスト、人件費などを大幅に削減できる。こうした反応の加速を考えてみよう。

Diels-Alder反応:

日本ゼオンはブタジエン類縁体にDiels-Alder反応で環状付加体を合成し、非常に特徴ある光学レンズ用のモノマーや香料を生産している。まず、このDiels-Alder反応をCNDO/2を使って考えてみよう。HTML5に対応しているブラウザーを使うと下にブタジエンんとエチレンのCNDO/2の計算結果が表示される。(これは計算結果を見ているのではない。与えられた分子の3次元構造に対して、PC, Mac, タブレットでその場でCNDO/2計算した結果を見ている。タブレットでは計算に時間がかかるかもしれない。)

 

ブタジエンのHOMO、エチレンのLUMOを計算して表示させてみよう。水色のキャンバス内でマウスの左ボタンを押し、動かすと、分子が回転する。見やすい位置に調整しよう。どちらも、初期にはHOMOの分子軌道図を示している。エチレンの方はUpperボタンを押して一つ上の軌道(LUMO)を評させる。左に表示されるバーコードのようなものがエネルギー準位を示していて、表示されている分子軌道図のエネルギー順位は赤線で示される。いろいろな軌道を確認しよう。

下の左の絵で、2重結合に対して垂直方向に球が上下に表示されている。これはパイ電子と呼ばれる2重結合を特徴づける分子軌道だ。HOMOとかLUMOの説明はwikiに譲るとして、フロンティア電子論では、分子軌道の位相(左の絵の赤と青の違いは位相が違うという言い方をする)が合う反応が進行するとされる。この場合、ブタジエンのHOMOとエチレンのLUMOは赤玉と赤玉、青玉と青玉が重なり合って結合になるので環化反応が進むと説明される。逆にブタジエンのLUMOとエチレンのHOMOでもちゃんと重なる。しかしエチレンのHOMOとエチレンのLUMOは重ならないので4員環は生成しない。

それでは、工場で大増産させるために、この反応を加速させたいという要望があったら、どのような対応が可能であろうか? 実際にはケースバイケースであろうが、例えば下記のケースでは溶媒効果が認められている。

溶媒によって倍以上に反応が加速されている。しかし最も反応を早くする溶媒、ニトロメタンを使いたい(どのような分野に使われているか調べてみよう)だろうか? もっと安全で使いやすく、反応が早い溶媒を先手する為に、解析してみよう。

まず、008.xlsの最初のD-Aタブを開く。YMBを用いて、Smilesの構造式、それの無いものは分子のお絵描きをして物性推算のテーブルを埋めよう。

課題
溶媒のどんな物性値が、この反応を加速(log Kが大きい)させているのか特定してみよう。

例えば、分子表面積と相関(分子表面積が小さいと反応が早い)があるようにも思えるが、これが本質なのか、たまたまなのか(データ数が増えればすぐに明らかになるだろうが)化学者としてのセンスが問われる。他にはどんな物性と相関があるか調べ、論理的に考察してみよう。

ヒント:Maleic anhydrideの物性も計算してみよう。反応を早くする溶媒の大小関係と、反応基質の値を比べてみよう。

反応溶媒の選定に関しては、非常に多くの場合で、良く溶解するものは高い反応性になる。その事から、008.xlsでQSAR DAタブを開き、必要な物性をペーストしYSBを使ってモデル式を構築しよう。

課題:

予測式をたてよ

さらに予測用の溶媒のlog Kを計算しテーブルを埋め、最も反応を加速する溶媒を選定してみよう。

Solvents log K
N-methyl-2-pyrrolidone NMP  
gamma-butyrolactone  
1,2,4-trichlorobenzene  
diethyl carbonate  
ethylene carbonate  
Propylene Carbonate  
dimethyl sulfoxide DMSO  

企業系の研究では、手っ取り早く何点か溶媒を変え合成し、モデル式を立て、さらに効率的な溶媒を探索するのが一般的だ。こうした溶媒を含む計算が分子軌道計算で精度よくできるのはまだまだ先の事と考えられる。そうした事を考えると、YMBとYSBを使うのが有効だと言える。これはDiels-Alder反応に限らず様々な反応に応用可能なので覚えておいてほしい。

Micro Waveによるプロセス合理化

産総研のHPでポリ乳酸を作るのにマイクロウエーブ(MW)を使うと反応が加速され、反応時間が1/10になるという記載があった。

こうした脱水縮合にMWが有効なのはいいのだが、一体どんな反応だったら加速され、どんな反応なら加速されないのか、そのガイディング・プリンシプルが無い事がMWの利用を難しくしている。このMWによる反応の加速をYMBを使って検討してみよう。

ある溶媒に1分間MWを照射した時に温度が何度に達したかのテーブルがある(008.xlsのMWタブ)。(NST、マイクロ波の新しい工業利用技術などから収集)

いわゆる、極性溶媒で無いものはMWを照射しても温度は上昇しない。しかし、同じエネルギ-を照射しても、その溶媒が何度になったか? は、誘電率やダイポールモーメントだけからでは下図に示すように判然としない。(種本では誘電損失と相関があると書いてあるが)

また、実験値の誘電率やダイポールモーメントはあまり多くなく、特に反応基質などのデータはほとんどないので、ある基質がMWで分子振動が変わるかどうかを予測する事は難しい。例えば乳酸は室温で固体であるし、こうしたデータが入手できるか考えてみれば意味がわかるだろう。

課題
008.xlsのMW YMBタブの溶媒についてYMBで物性推算を行い、どのような物性値と相関があるか確認しよう。

例えばHansen totHSPに対してプロットすると上のグラフのようになる。溶解度パラメータが大きくなると到達温度が高くなる傾向が見られる。そして2つほど例外があるが、それらがどうして例外になるのかを考える。それが説明変数を1つではなく、複数選ぶ時の大事な基準になる。

ハンセンの溶解度パラメータは分子の蒸発エネルギーをdD(分散項:ファンデルワールス力に基づく力)、dP(分極項:ダイポールモーメントに基づく力)、dH(水素結合項)に分割したもので、totHSPはその各項をベクトルと見なした時のベクトルの長さになる。(現在は水素結合項はドナーとアクセプターに分割)こうした、項目のうちdP項やdH項はマイクロウエーブの感受性に直接関わっていると考えるのは合理的である。そこで、説明変数を、dD,dP,dHdo,dHacの4つ使うとして、他の物性値としてどんなものを加えるとこの現象をより精度高く推算できるか考えてみる。

課題:008.xlsのMW HSPタブを開き、HSPの値に加え物性値を2つ選びYSBを用いてモデル式を作成してみよう。(ヒント:分子の形状に関する情報を付け加える。)その時の乳酸の予測値を求めよ。

例えば以下のようなグラフが得られ、乳酸の予測値は168℃となり、乳酸は非常に良くMWを吸収し発熱すると予測される。

これは実験値で最高のDMFの131℃を大きく上回る。そこでポリ乳酸の合成にMWの加速効果が現れるのだろう。このパラメータを選択した場合、HSPは温度の関数(蒸発潜熱は温度が高くなると潜熱は小さくなる)であるので、溶媒の温度がMWによって上昇すると加熱効率も下がる事が考えられる。HSPは25℃の値を使っているのでこれ以上は精度が上がらないと考える必要がある。

大事な点は、推算式の取り方にはいくらでもバリエーションがあり得るという事だ。例えば、008.xlsのMW otherタブを開いてみよう。

これは、
到達温度=0.2792*Antoine A+0.1888*Antoine B+0.0036*Antoine C+-0.3684*MolVolume+-140.1782

で計算したものだ。Antoine パラメータは蒸気圧を計算するアントワン式のパラメータだが、それを用いてもまずまずの相関が得られる。これはAntoine Bというパラメータは蒸発潜熱と相関があり、それはtotHSPと相関がある。またAntoine Cは蒸気圧曲線の曲率を決めるパラメータで、極性化合物ほど値が小さくなるなる事から、こうした物性値をベースにしても予測式は構築する事ができる。この式でも乳酸の到達温度は159℃となり、HSPをベースとした場合とほぼ一致する。

粘度と熱伝導度を使えば上図のようになる。

到達温度=69.0212*log Viscosity+0.3446*Thermal Conductivity+0.0594*Mol Volume+24.9833

MWの加熱原理に関しては、マイクロウエーブによって分子が回転する事によって摩擦熱によって加熱されるというものがあるが、それは間違いだと思う。到達温度が上図のように粘度と相関がある事から、粘度=分子間の摩擦と単純に理解されたのかもしれない。自分はMWによって分子の安定構造が壊れ、エネルギーの高い分子になり、それが緩和する時に発熱するというエントロピー説が正しいと思っている。粘度はその緩和に寄与して、熱伝導度は衝突によるエネルギーの授受の効率を表しているのでこうした式でもそこそこ推算ができてしまうと考えられる。乳酸の場合は、255℃とやはり非常に良く加熱される。

このように、未知の化合物を予測する時には複数の推算式を構築してその結果を比較検証する事は非常に重要である事は記憶にとどめておく必要がある。

一般的に考えて、基質がMWで加熱されず、その溶媒がMWで加熱されて、伝導伝熱で基質が加熱されるのであれば、オイルバスなどの熱媒での加熱と同じで反応時間が1/10になる事は無いと考えられる。(脱水縮合でできた水がMWで加熱され系外に出やすくなる事はあるかもしれない)YMBで分子の絵を描くだけでMWに対する感受性が評価できるのはありがたいと思うがどうだろうか? (液体の熱伝導度推算に関してはPirikaのこちらの記事を参照の事)

鈴木カップリング反応のMWによる加速についてはPirikaのこちらのページを参照。

MWなど、化学工学的に利用されるようになるのはまだまだ先と考えていたら、氷付けにされたマンモスの解凍にMWが使われたという記事があった。普通に解凍すると、内部が溶けるまでに外が腐ってしまうので、MWを使って内部からも解凍し全体を同時に解凍するのが大事なのだそうだ。マンモスを置く部屋一つをMWで均質に加熱できるのなら、化学工学で使うプラントぐらいわけないだろう。どういう基質に有効かを見極める、目利きは重要になるに違いない。

ラジカル重合の加速:

ポリマーをモノマーのタイプ別に分類するなら、今一番多く使われているのはラジカル重合性のモノマーだろう。これは過酸化物を加熱する事によってラジカルを発生させて、それがモノマーの2重結合に付加し反応が開始する。こうした過酸化物は、日本油脂(有機過酸化物国内シェアー55%)、日本パーオキサイドなどが生産している。ラジカル重合に関してはMOOCのこちらのページを参照。

このパーオキサイドの例としてMeOOMeのCNDO/2計算と電荷平衡法計算の結果を見てみよう。(CNDO/2についてはPirikaのこちらの記事を参照電荷平衡法についてはPirikaのこちらのページを参照

 

 

これは計算された結果を見ているのでは無い。CNDO/2の計算と表示プログラム、Dimethyl peroxideの構造データがPirikaサーバーから送られてきて、使っているコンピュータ上で実際に計算したものを見ている。(iPad, iPhoneでは少し計算に時間がかかるかもしれない) 左の部分に青い線があるだろう。これが分子軌道のエネルギー準位というものだ。最初に見た時にはそのエネルギー順位はHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)を示す(赤い線)。そのレベルは-14.92eVであることが表示される。キャンバス上でマウスをドラッグ(マウスボタンを押したまま左右上下に動かす)してみよう。分子が回転して表示されるだろう。赤い球と青い球はP軌道を示している。回転させるとはっきりわかるが、この赤と青の球は色が逆転しているのが判るだろう。これは位相が逆で節があるという。つまりパーオキサイドはHOMOが反結合性の軌道であることがわかる。分子軌道はHOMOまでは電子が詰まっている。Upperボタンを押してみよう。そうするとLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)が表示される。LUMOには電子が詰まっておらず、空軌道であるという。色々なエネルギー準位の分子軌道がどのような形をしているか確認してみよう。(注意:この分子軌道の形は速度をあげるため簡略化したものだ。単純に半透明の球を描いている。正しくは等高線図で書くので覚えておこう。)このパーオキサイドの結合が反結合性であることが、熱をかけると容易に開裂してラジカルを発生するという特質に繋がっている。

また、電荷をみても酸素が両方とも負電荷なのでその観点からも反発している事は明らかだろう。それでは、こうした開裂は溶媒によってどのような影響を受けるだろうか?

ポリマーハンドブックにt-butyl peroxideの120℃での分解反応速度が記載されている。

課題
008.xlsのt-BuPOタブを開き、各溶媒をYMBを使って計算しよう。 次にt-BuPO-DECタブを開き、YSBを用いて推算式を構築しよう。
モデル式=-0.5226*物性1+0.8119*物性2+0.1068*物性3+0.9237*物性4+0.0413*物性5+4.405

どんな物性が分解速度をきめているかを調べ物性を特定し、予測値を計算しよう。

(ヒント:このページのDiels-Alder反応でも述べたように、溶解性を表す指標が重要である。)

溶媒

分解反応速度予測値

四塩化炭素

 

トルエン

 

トリエチルアミン

 

安息香酸エチル

 

t-ブタノール

 

アセトニトリル

 

テトラヒドロフラン

 

2-メチル-2-ブタノール

 

酢酸

 

シクロヘキセン

 

ジメチルアニリン

 

 

この例で計算してみると、分解反応速度予測値は下図のようになる。

実はこの分解反応は、溶媒の誘電率と相関づけられて説明されている。

酢酸はダイマーを作るので例外になるが、誘電率が高くなるほど分解速度定数は大きくなることが教科書に示されている。しかし実はよくよく見ると同じ誘電率でも(例えば誘電率3で)分解速度定数は大きく異なり、誘電率を見ただけでは(よほど大きいものを除き)分解速度定数を予測する事はできない。今回作ったモデル式の方がどれだけましか、分かるだろう。

課題
AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)の溶媒効果をポリマーハンドブックで調べてみると、

のようになり、溶媒依存性が無い。パーオキサイドとの相違を考察せよ。

 

ラジカルとモノマーの反応

モノマーは2重結合を持つ。そこにはC=Cと2重結合に関与する2つの炭素原子がある。ラジカルはどちらの炭素を攻撃するのだろうか? 一般的な高分子の教科書では、2重結合に置換基がついた方の炭素を頭(Head)、逆を尾(Tail)と呼び、ラジカルはTailにアタックし、2重結合が消え、Headに新しいラジカルができ、重合が進むと解説される。このHead-to-Tailは一般的なラジカル重合性のモノマーで98%程度とされている。上図のビニリデンフルオライドなどでは、10%以上異結合(Head-Head, Tail-Tail)が含まれるとされている。では、CF2=CCl2ではどちらがheadでどちらがTailだろうか?環状のモノマーではどうであろうか? それを知るには上のように分子軌道を計算して軌道の大きさを見なくてはならない。(詳しい事はPirikaのラジカル重合論を参照)そうした用途には、等高線で描かれた分子軌道図よりも上のものの方が見やすい(プログラムを書くのも簡単)ので、自分はこれを採用している。

この過酸化物は温度が高いほどラジカルは多く発生し、その分ポリマーの重合度は低くなる。また、溶媒の種類によっても分解速度は大きく異なる。この溶媒効果も見ておこう。

課題:

008.xlsのVac-Solventタブを開き、各溶媒の物性値をYMBを用いて計算しよう。

次に、VacQSARタブを開きモデル式を作成しよう。

Solvent Rp予測値
Benzene  
Toluene  
EthylBenzene  
Chlorobenzene  
o-Dichlorobennzene  
Cyclohexane  
1,2-Dichloroethane  
1,1,2,2-Tetrachloroethane  

例えば、t-Butyl peroxideの分解反応の時と同じ説明変数を使うと下図のように良好なモデル式が構築できる事が判る。

この場合でも良好な溶解性は高い反応速度に繋がっている事が示唆される。

Q3C溶媒

医薬品の合成に使う溶媒が医薬品に残留した場合、最悪体内に投与される可能性があるので、その使用は規制されている。この残留溶媒に関しては「医薬品の残留溶媒ガイドライン」が,ICH(International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use)によって作成されている。このガイドラインは溶媒を,その毒性によって3つのクラスに分ける。詳しい事はPirikaのこちらの資料を参照。こうした安全な溶媒を使って反応を行うとして、t-Butyl peroxideや酢酸ビニルの反応を一番早くする溶媒を特定してみよう。

課題:

008.xlsのQ3C34タブを開き、各溶媒の物性値をYMBを使って計算しよう。次に先に求めたモデル式を使って反応が一番早くなると予測される溶媒を特定しよう。

このように、YMBの36変数と相関づけるのは何でも良い。収率、選択率などなど。次にどちらに進んだらいいかの目安を与えてくれる。うまく使うと様々なプロセスを合理化できる。

 

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