Pirika logo
JAVA,HTML5と化学のサイト

Pirika トップ・ページ

Pirikaで化学
 物性化学
 高分子化学
 化学工学
 分子軌道
 情報化学

 その他の化学
 アカデミア
 MOOC講義資料
 プログラミング

ハンセン溶解度パラメータ(HSP):
 HSP基礎
 HSP応用
 ポリマー
 バイオ・化粧品
 環境
 物性推算
 分析
 化粧品の処方設計
 その他
 自分でやってみよう

雑記帳

代理購入?
英語で諦めていませんか?HSPiPの代理購入なら映像工房クエスチョンへ。すぐにお見積りします。
(日本語ドキュメントサービス中)。Mail

 

Ad Space for you

 

 

 

Last Update

25-May-2017

MOOC: MOOC-007, 界面活性剤や医薬品の水和

講義資料 非常勤講師:山本博志  2014.7.30

界面活性剤については、pirikaのこちらのページを参照

界面活性剤というのは分子中に親水部分と疎水性部分の両方を持つ化合物だ。こうした化合物を水へ入れると、ある濃度以上でミセルを作り始める。

CMC以下 界面活性剤がミセルを作り始める
臨界ミセル濃度(CMC)

疎水性の部分は水中には居たく無いので集まろうとする。そのエネルギーは疎水性相互作用と呼ばれる。それではどんどん集まって油滴となって分離するかというと、そうはならない。親水部分は多くの場合、カルボン酸やスルホン酸の塩で、マイナスにチャージしている。そこで界面活性剤が集まってくると、親水部分のマイナスチャージによって静電反発を起こし広がろうとする。「疎水場は疎水性相互作用で集まろうとし、親水場は静電反発で広がろうとする」それらの力のバランスで様々な形状のミセルが形成されるが、一般的なものは球状である。それは、球というのは体積あたりの表面積が最小だからである。

これらの界面活性剤がミセルを作り始める濃度を臨界ミセル濃度(CMC)と呼び、様々なデータ集にCMCの値が記載されている。それでは、007.xlsを開いてみよう。

最初のCMCのタブには親水基の違い(Py:ピリジン)と疎水基の違いによるCMCの値がある。同じ疎水基であっても親水基の構造によってCMCの値は異なる事を確認しよう。

各疎水基の分子構造を表すSmilesの構造式があるので、YMBを使って物性を計算してみよう。この場合のSmilesは先頭がX(ダミー原子)になっている事を注意しよう。

準備ができたら、007.xlsのCMC-Correlationのタブにデータをまとめ直そう。(フッ素系の界面活性剤は含めなくてよい。後述)

このようなテーブルに変換するには、1-22行目を全部コピーして、親水基の数(10)個分ペーストする、Aのカラムの疎水基の名前を親水基と同じ色にっしておく。そしてCMCの値をB列に集める。CMCの値の無い行を消去する。そしてCMCのlogを取る。準備ができたらlog(CMC)と物性値のグラフを書いてみよう。

MOOC-005液晶の所でも説明したように図示するカラムを移動させて、log(CMC)と相関のある物性値がどんなものか確認しよう。

例えば分子量(MW)とlog(CMC)をプロットすると以下のような相関が得られる。

この場合のMWは疎水基の分子量なので、同じ疎水基では同じ値になる。しかし、CMCは親水基ごとに異なった値になるので、横方向に広がったものになる。他の物性値と相関をとっても、沸点など分子量と相関がある物性値とは同じように相関がある。このような、多少の誤差はあるが、CMCの値は分子量と相関があることは昔から知られている。界面活性剤のHLB(Hydrophile-Lipophile Balanc)値は、界面活性剤の水と油(水に不溶性の有機化合物)への親和性の程度を表す値として、1949年にウィリアム・グリフィンによって提唱されている。

グリフィン法:HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量で定義する。
HLB値によって次のような使い方がされる。
1-3:水にほとんど分散せず、消泡剤などに使用される。
3-6:一部が水に分散し、w/o型エマルジョンの乳化剤として使用される。
6-8:よく混合することによって水に分散して乳濁液となり、
   w/o型エマルジョンの乳化剤、湿潤剤として使用される。
8-10:水に安定に分散して乳濁液となり、湿潤剤やo/w型
   エマルジョンの乳化剤として使用される。
10-13:水に半透明に溶解し、o/w型エマルジョンの乳化剤として使用される。
13-16:水に透明に溶解し、o/w型エマルジョンの乳化剤、洗浄剤として使用される。
16-19:水に透明に溶解し、可溶化剤として使用される。

親水基が同じであれば、CMCとHLBには下図のような相関が得られる。

そこで、HLBとCMCは同じ事を言っているのが判る。ところが、このデータにフッ素系の界面活性剤をプロットすると赤四角で示すように全くラインに乗らなくなる事がわかる。フッ素は原子量が水素より大きいのでこうした結果になる。

そこで、フッ素系でも同一の線上にのる物性値を探してみると、分子体積とプロットすると全く同一の直線に乗る事がわかる。

そこで、フッ素系でも炭化水素系でも同一に扱える、Pirika法のHLBとしては

Pirika HLB=20*親水部の式量の総和/疎水基の分子体積

が新たに定義される。

すると,Griffin法ではHLBとCMCの相関でフッ素系と炭化水素系で合わないものが、Pirika法では同一になる。

それでは、YMBの分子体積と親水基の構造からCMCを予測する計算式をYSBを使って構築してみよう。007.xlsのCMC-MRのタブを開き、C列にYMBの分子体積の値を入れこむ。そして、D列以降は用いた親水基の所に1を入力する。

準備ができたらYSBを使って重回帰式を計算する。

結果を図示すると非常に良好な相関が得られることがわかる。

課題:テーブルに重回帰係数を埋めなさい。そして、各親水基のCMCに与える影響を考察しなさい。

COONa COOK COOCs SO4Na SO3Na
factor
NH3Cl NMe3Cl NMe3Br PyrBr PyrCl
factor

以上の重回帰式が得られると、疎水基の分子体積をYMBで計算し、親水基を選べばどんな構造の界面活性剤であれCMCが計算で求まる事になる。

CMCやHLBについで、界面活性剤の重要な値として会合数がある。これはミセルを作った時に何個の界面活性剤でミセルを作っているかの値でレーザー散乱などによって測定されている。007.xlsのAggregationタブを開いてみよう。

そうすると、例えば親水基がSO4Naの場合、疎水基の分子体積と会合数が求まると、

Mol Volume

Aggregation#

C7H15

136.72878

22

C8H17

153.39117

27

C9H19

169.17494

33

C10H21

185.91136

50

C11H23

202.62195

45

C12H25

219.28435

62

ミセルの疎水場の全体積はMol Volume*Aggregation#で計算する事ができる。

Total-Volume

Surface

Surface/Aggre#

C7H15

3008.03316

1007.548118

45.79764171

C8H17

4141.56159

1246.962709

46.18380402

C9H19

5582.77302

1521.635728

46.11017358

C10H21

9295.568

2137.607696

42.75215392

C11H23

9117.98775

2110.296049

46.89546776

C12H25

13595.6297

2754.293821

44.42409389

ミセルが球だとすると、球の体積の公式から球の半径が求まる。

球の半径から、球の表面積が計算される。その表面積をAggregation#で割ると、界面活性剤1つあたりの親水基が占める表面積が計算される。親水基がSO4Naの場合、上のテーブルに示すようにこの値はほぼ一定の値になる。

課題:球の体積、表面積の公式を確認しよう。006.xlsにある他の親水基の占める表面積を計算し、テーブルを埋めよ。

surface/Aggregation#
SO4Na 45.4
COOK
COONa
SO3Na
NH3Cl
NM23Cl
NMe3Br
PyrBr
PyrCl
Phenyl-SO3Na

親水基の違いによる、界面活性剤1つあたりが占める表面積の違いを考察せよ。

水の水和が球形であると仮定して、分子体積(18.0)の水が何個集まると水和面積に等しくなるか求めよ。炭化水素に付加したSO3Naと芳香族に付加したSO3Naで水の配位数はどれだけ違うか求めよ。

このように、例えば医薬品であっても、分子中にCOONaを持つような化合物はCOONaの部分に水が14個配位(あ、答え言ってしまった)していると考えると合理的である事がこの結果から示唆される。

それでは、構造が単純なこれらの界面活性剤に対して、複雑な医薬品に同じ事が言えるのか?という問題は残る。事実界面活性剤の尾が2本あるスルホサクシネート系の界面活性剤はCMCが分子体積だけでは整理できない。実は分子体積ではなく、分子表面積で、2本の尾がある場合は2つの尾が作る面積が足し算以上に大きくなっているのかもしれない

しかも、医薬品の水中での会合数のデータはほとんど得られていない事を考えると水和面積を計算するのも難しくなる。それでは手が無いのかというとそうでもない。

 

国立衛研報第 127 号(2009) にアトピー性皮膚炎用ステロイドのHPLC一斉分析という論文がある。

HPLCの解析では、Octadecylへの溶解性が高いと保持時間が大きくなり、分子が大きいと溶解しにくく保持時間が小さくなる傾向にある事が判っている。そこで溶解性の指標としてYMBが計算するtotHSPを分子体積で割ったものとRetention Time(RT)は高い相関がある事が判っている。Pirikaのこちらのページ参照

そこで、これらのステロイドについても同様に解析を行ってみる。007.xlsのSteroids-HPLCタブを開いて各化合物の物性をYMBを用いて計算してみよう。

そして、totHSP/MVolというカラムを作ってRTとの相関を取ってみよう。

するとまずまずの相関が得られる事が判る。「Octadecylへの溶解性が高いと保持時間が大きくなり、分子が大きいと溶解しにくく保持時間が小さくなる傾向にある」はおおむね正しい。

ただし、実はステロイドに芳香性のOHを持つもの、パラベン類と呼ばれるパラヒドロキシ安息香酸エステル類のRTまでプロットすると線は3本になる。 このパラベンは防腐剤として添加されている。

これは、芳香性のOHを持つステロイド、 芳香性のOHを持つパラベンの「Octadecylへの溶解性が変わったのか?」「 分子が大きさが変わったのか?」本来もっと早くでてくるはず(RTが小さい)はずであるのにtotHSP/MVolから考えられるよりずっと遅くでてきている事になる。

totHSPの値はフェノール性のOH基がある段階でYMBで折り込み済みであるので、これはフェノール性のOH基に水が配位して分子体積が大きくなったと仮定して、何個の水が配位したらこの保持時間を説明できるか計算してみよう。

課題:007.xlsのSolvationのタブを開き、水の配位数を仮定して曲線が一つになる配位数を求めテーブルを埋めなさい。

solvation#
beta-Estradiol 
Estrone 
Ethinylestradiol 
Diethylstibestrol 
Hexestrol 
Phenoxyethanol 
Methyl p-hydroxybenzoate 
Ethyl p-hydroxybenzoate 
Isopropyl p-hydroxybenzoate 
n-Propyl p-hydroxybenzoate 
Isobutyl p-hydroxybenzoate 
n-Hexyl p-hydroxybenzoate 
2-Ethylhexyl p-hydroxybenzoate 
n-Butyl p-hydroxybenzoate 

また、この配位数と界面活性剤の水和数を比較しなさい。

実際には親水基に水和が起これば溶解性も変わるだろうし、HPLCの分析もたいていの場合は溶媒組成のグラジエントをかける、pH調整にバッファーを使うなど単純ではない。

今後こうした研究が進み、界面活性剤や医薬品の水和数が定量的に行われると、医薬品の分子設計も多いに進歩すると考えられる。

 

自分でやってみよう(MOOC)トップページへ戻る。

 

メールの書き方講座