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ハンセン溶解度パラメータ・ソフトウエアー(HSPiP)の購入方法とインストール

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27-May-2017

アプリケーション・ノート#31
HSP基礎ポリマー:ハンセン溶解度パラメータ(HSP)を使った離型剤の洗浄:高分子を射出成形したときにポリマー表面に残る離型剤だけを溶解し、ポリマーを溶解しない溶媒を探したい。といった状況の時にハンセンの溶解度パラメータをどう使うのかを解説する。ポリマーブレンド、相溶化剤の開発にもつながる基本的な考え方。HSPiPのデータベースから希望のHSPをもつ溶媒を探す方法の解説。

2010.4.8

HSPiP Team Senior Developer, 非常勤講師 山本博志

 

ハンセンの溶解度パラメータ(HSP)を使うと、ある物質が溶剤にどのくらい溶けやすいかの指標を得ることができます。

ハンセン溶解度パラメータ(HSP)

ハンセンの溶解度パラメータ(HSP)は、ある物質がある物質にどのくらい溶けるのかを示す溶解性の指標です。ヒルデブランドのSP値と異なり、溶解性を多次元のベクトルで表し、そのベクトルが似ているもの同士は溶解性が高いと判断します。”似たものは似たものを溶かす”、”似たものは似た所にいたがる”というのがHSPの基本です。このベクトルは[分散項、極性項、水素結合項]で表されます。分散項はファンデルワールスの力、極性項はダイポール・モーメントの力、水素結合項は水、アルコールなどが持つ力です。(さらに水素結合項をドナー、アクセプターに分割すると4次元になります。)


”似たものは似たものを溶かす”と言う単純な考え方で、ポリマー、医薬品などがどんな溶剤に溶けるか? 高分子の添加剤がどれだけポリマー中に居やすいか? 匂い物質が鼻の嗅覚細胞にどのくらい溶けるか? 医薬品がレセプターにどのくらい溶けるか? ガスクロやHPLCの充填剤にどのくらい溶解しやすいか? 化粧品の皮膚への溶解性は?などを理解するのに役立っています。

PirikaのHSPを計算するJAVAアプレットのデモ、HSPLightはこちらから。
最新の研究はパワーツールで紹介しています。どのような方向に進化しているのか知りたければ覗いてみてください。

ここでは、HSPiPの使い方を、離型剤の洗浄を例に説明しようと思います。

HSPiP(Hansen Solubility Parameters in Practice)

HSPを効率的に扱えるように、ハンセン先生とアボット先生がHSPiPというWindows用のソフトウエアー、データベース、電子書籍の統合パッケージを開発されました。これを使うと溶解性に関する様々な疑問に答えてくれます。もちろん材料設計は溶解性だけで決まるほど単純ではありません。そこで、Y-MBという分子を自動的に分割し、様々な物性を推算する機能が付け加えられました。Y-MBはver.4 からはY-Predictというパワーツールとしても提供されています。

概要についてはこちらをお読みください。(2013.1.22)
機能についてはWhat Newをお読みください。
自分が使いたい化合物が計算できるかは使用できる官能基のリストで確認ください。
HSPiPの購入とインストール方法をまとめてあります。
他の会社はどんな使い方をしているのか? 特許をまとめてみました

プラスティックを成型する時には射出成型などが使われます。これは金型の中に溶けたポリマーを打ち込んで金型の形のポリマーを得る技術です。その時にポリマーが金型にくっつかないように金型に離型剤を塗っておきます。多くの場合、シリコーン系、フッ素系の離型剤が使われます。
従って、できあがったポリマーの表面に離型剤が付着している場合があります。
非常にわずかなので通常の用途であればそのままで良いのですが、医療用に使われるプラスティックの場合残っていると困る場合があります。シリコーン系、フッ素系の離型剤の溶媒に対する溶解度を探したのですが見つからないので、ステアリル酸を例に説明します。(何かを洗浄したい場合にはやり方は同じなので、ターゲットを読み替えてください。)

まず始めにやることは、ステアリル酸がどんな溶媒にどのくらい溶けるかを調べます。
油脂化学便覧を見ると溶解度が載っていました。(実際には、ステアリン酸を離型剤に使う場合にはZnやCaの塩が多いです。必要であればそうした塩の溶解度を探すか、実測します。)

2011.6.11
分子を描くと電荷を計算するプログラムを作ってみた。 これは横浜国大での講義用のプログラムだ。YNUの学生はこんな計算にもトライしてみて欲しい。

 

Hcode name MW Density 30C(g/100g) 30C(g/100ml)
10 Acetonitrile
41.053
0.786
0.3
0.2358
7 Acetone
58.08
0.79
4.8
3.792
570 isopropyl alcohol
60.096
0.785
10
7.85
325 Ethanol
46.069
0.7905
3.42
2.70351
328 ethyl acetate
88.106
0.902
5.2
4.6904
102 butyl acetate
116.16
0.882
8.1
7.1442
122 carbon tetrachloride
153.823
1.584
10.7
16.9488
181 cyclohexane
84.161
0.779
10.5
8.1795
443 diisopropyl ether
102.177
0.724
10.5
7.602
306 1,4-dioxane
88.1
1.029
15.3
15.7437
156 chloroform
119.378
1.489
17.5
26.0575
637 toluene
92.141
0.867
10.45
9.06015
92 butanol
74.123
0.81
9
7.29
481 methyl ethyl ketone
72.107
0.805
8.34
6.7137
417 hexane
86.177
0.659
4.3
2.8337
52 benzene
78.114
0.879
12.4
10.8996
456 methyl alcohol
32.042
0.791
3
2.373

そして、上の表のようにまとめます。
エタノールは95%エタノールを使っているとあるので、一応注意喚起のため黄色でマークしてあります。便覧の溶解度はg/100gのデータですが、溶解度パラメータでは体積で評価しますので、換算した値を用意します。
次に、各溶媒のHSPの値を探します。

HSPiPを立ち上げて、Master List のところにチェエクを入れると、1200化合物の一覧が現れます。これらの化合物のHSP値は吟味された、オフィシャルな値が収録されています。そこに化合物が無い場合には、10,000setにチェックを入れると拡張リストが現れます。しかし、この場合はHSP値が推算値などになります。そして自分で作ったリストの化合物を探してダブルクリックをすると左上の自分用のリストにコピーされます。(その前に、File メニューからNewを選んで自分用のテーブルを作っておいてください。)
すぐに見つからない場合は、マスターリストの上の双眼鏡の上にあるテキストフィールドに化合物名やCAS#を入れて双眼鏡のボタンを押してください。見つかったらダブルクリックをして自分用のテーブルに付け加えます。
(双眼鏡の隣のXボタンを押せばもとのマスターリストに戻ります。)
全部用意できたら、そこにScoreを入れます。
Scoreは良く溶解するものに1、溶解しないものに0を入れます。
ここでは、試しに8g/100ml以上溶解するものを1、それ以下なら0を入れます。

そして、Pボタンの2つ下、青い電卓マークを押します。するとプログラム(Sphereプログラム)は1とラベルされている溶媒がすべて球の内側、0とラベルされている溶媒がすべて球の外側にくるような最も小さい球を探し出してくれます。
いきなり球と言われてもピンとこないかもしれません。
HSPでは、溶媒の溶解度パラメーターを3つの成分に分割します。
dD:分散項(ファンデルワールス力に基づくエネルギー)
dP:分極項(ダイポールモーメントに基づくエネルギー)
dH:水素結合項(水素結合に基づくエネルギー)
各溶媒や溶解の対象となるものに、この[dD, dP, dH]が与えられます。
これを3次元のベクトルと見なすと、良く溶解するベクトルは皆近い所に集まりまって球を作ります。
溶解しにくい溶媒は球から離れた所にベクトルが向きます。

ハンセンの溶解球

ある溶質を溶解する溶媒と、溶解しない溶媒のハンセンの溶解度パラメータを3次元空間(ハンセン空間、HSP空間)にプロットすると、溶解する溶媒は似たところに集まっている。そして、その集まっている溶媒はハンセンの溶解球と呼ばれる球を構成する。

その球の中心を溶質の溶解度パラメータと定める。球の半径を相互作用半径(R0)と呼び、半径が長いものは多くの溶媒に溶けやすく、半径の短いものは溶かす溶媒が少ない。溶解球が2個あるとして解析を行うDouble Spheresという拡張機能がV3.1.xから搭載された。

Pirikaの溶解球を見る、HTML5のアプレットはこちら。
このSphereを見るHTML5のプログラム、SphereViewerがHSPiP ver. 4からパワーツールとして提供されている。

そしてこの球の中心点がステアリン酸のHSPになります。
この場合は、[17.59, 0.24, 4.6]という計算結果になります。

この値が求まれば、他の溶媒がステアリン酸を溶かすかどうかは、その溶媒のHSPとステアリン酸のベクトル距離を計算すれば分かります。このベクトル距離(HSP距離と呼ぶ)は
HSP距離=(4.0*(dDsolvent-dDtarget)2+(dPsolvent-dPtarget)2+(dHsolvent-dHtarget)2)0.5
で計算されます。通常のベクトルと違いdDの前に4という係数がつきます。

HSP距離

HSP distance(Ra)={4*(dD1-dD2)2 + (dP1-dP2)2 +(dH1-dH2)2 }0.5


この距離が先ほど求まった球の半径(図中の計算結果でR=4.7と表示)の内側であれば良く溶かす、そうでないなら溶かさないというのがハンセンの理論です。

ちなみに、ステアリン酸のHSPはオフィシャルデータベースの中に値があり、[16.3, 3.3, 5.5]になっています。ですから、この実際の溶解度から求めたHSPも十分信頼性がおけると考えられます。
(さらにオフィシャル値に近くなる、Scoreの取り方を色々調整して計算してみてください。)

それでは、次にHSPiPのデータベースから [17.59, 0.24, 4.6]を良く溶かすもののを探してみましょう。

メニューバーのFindMolsを選ぶと、上記のウインドウが開きます。
そこに、目標値を入れて電卓マークを押すと、この場合は28化合物あることが分かります。
こうした中からコストや安全性などを考慮してステアリン酸の溶媒を探すことができます。

それでは、HSPiPのデータベースにも載っていない、溶解度データも全くない無い場合にはどうすればいいでしょうか?

HSPiPには化合物のHSP値を予測する機能が搭載されています。
カメラの上のδボタンを押してください。DIY(Do It Yourself)ウインドウが開きます。
そこに計算したい化合物のSmilesの分子構造式(こちらを参照)を入れて電卓ボタンを押すと、化合物を原子団に分解し、HSP値などを計算します。(他にもいろいろな物性を計算しますが、その説明はまた別に)

Smilesの構造式

分子の水素は書かずに重原子の元素記号だけ線形に表記する。
有機化学用のC, N, O, P, S, F, Br, Cl, Iは角括弧は省略。他の原子には[]をつける。
枝分かれは()を使う。
2重結合は=,3重結合は#で表す。
環状構造は環の結合を一つ切りその両端に1以上の同じ数字をつける。
PirikaのSmiles構造式を得るJAVAアプレットはこちらから
分子の描画によってSmilesの構造式を得るDraw2SmilesがHSPiP Ver.4 パワーツールに搭載されました。

計算値は、[16.3, 3.0, 4.9]ですのでオフィシャルのHSP値に非常に近い事がわかります。
ちなみに、分解された原子団の情報から、HSPiPのデータベースをサーチして、この化合物はHcode(Hansen code) 603 のStearic Acidでは無いか?と表示されています。ものがデータベースにあるならオフィシャル値を使った方がいいので、このようになっています。

もし、データベースに無い化合物だったら、推算値を信じるのも良いのですが、溶解実験をしてみようと言う気があるのであれば、この近辺のHSPから実験をスタートして、フィードバックをかけながら探索して行くと早く答えにたどり着くことができます。

このように、
データベースに値がある。
溶解度の実験値がある。
推算値がある。

いずれにしても、ターゲットのHSPが求まれば、それを良く溶解する溶媒は簡単に探索できます。

しかし、今回の話はまだ終わりません。

目的はポリマーに付着した離型剤を溶解する、でした。
離型剤を溶解したいのに、そのポリマーまで溶解してしまっては元も子もありません。
例えばポリマーがABS樹脂だったとしましょう。

Helpの下のPボタンを押すと、ポリマーの一覧が現れます。
双眼鏡の横にABSといれ双眼鏡ボタンを押すと、ABSのHSPとその半径が出てきます。
例えばここでは、No.390のABSだったとしましょう。
HSPは[17.6, 8.6, 6.4]で球の半径は10.9です。
ステアリン酸のHSPは [17.59, 0.24, 4.6]です。
ABSとステアリン酸の距離を計算してみると、

SQRT(4*(17.6-17.59)*(17.6-17.59)+(8.6-0.24)*(8.6-0.24)+(6.4-4.6)*(6.4-4.6))

となり、距離は8.6になります。
つまりステアリン酸はABS樹脂の球の内側に入ってきます。

従って、
ポリマーを溶解しないー>赤い球の外側、
ステアリン酸を溶解するー>青い球の内側
とかなり狭い範囲にしか答えは無いことが分かります。

2011.4.27

Drag=回転, Drag+Shift キー=拡大、縮小, Drag+コマンドキーかAltキー=移動。

もしiPadやChrome、Safari (iPad/iPhoneのMobile Safari)、FireFox4などのHTML5対応のブラウザーをお使いなら、上にキャンバスが現れるだろう。 溶媒をクリックすれば溶媒の名前が現れる。

水色の大きな球がABSの球、緑色の小さな球がステアリン酸の球です。

ただし、付着している離型剤の量は非常に少ない事を考えると、洗浄溶媒の溶解力は7g/100mlもいらないと考えれば、ステアリン酸の球の半径は広がりますので、候補も増えて行きます。(ただし、ステアリン酸がABS樹脂に溶けやすいなら、離型作用も無くなる事にご注意ください。この考え方は、ポリマーをブレンドしたときにどのぐらい混じりやすいか?相溶化剤はどんな構造がいいか?などの研究に役立っています。)

以上、簡単にHSPiPを使った離型剤の洗浄について説明しました。
化合物などはご自身のものに置き換えてお読みください。
ABS樹脂を射出成型するか? とかは聞かないでください。あくまでも例題です。

ポリマー同士がどのくらい重なっているか?を計算する機能はHSPiPにも搭載されていますが、HTML5のプログラムも作ってみました。HTML5対応のブラウザーを使っているのなら試してみてください。

 

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