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ハンセン溶解度パラメータ・ソフトウエアー(HSPiP)の購入方法とインストール

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27-May-2017

アプリケーション・ノート#16
バイオ・化粧品FFE:LD50(うさぎ、皮膚)とハンセン溶解度パラメータ(HSP):毒物が体内に入る時には、どこかで生体膜を透過しなくてはならない。皮膚を介した透過と胃や腸を介した透過で毒性はどう違うのだろうか?うさぎの皮膚を介した毒性評価は、データが最も豊富であったのでこれを用いて、皮膚に対する溶解度を手がかりに検討をおこなってみた。

2011.01.30

HSPiP Team Senior Developer, 非常勤講師 山本博志

 

LD50

ここでは、LD50について書こうと思う。LDというのは"Lethal Dose"の略で致死量のことだ。そこで LD50というのは、ある量の化学品を一度に投与したときに、検体動物が50%死んでしまう時の濃度のことをいう。この試験は、急性毒性(acute toxicity)の試験だ。

HSPiPには、現在10,000化合物以上のデータベースを備え、LD50の情報も集積されている。経口のLD50で最も一般的なのはラットに対するもので、皮膚に対する物ではうさぎが一般的である。 こうしたDBを構築していて、ある一つのことに気がついた。

ある化合物はラットの経口LD50で見たときにとても毒性が高く、うさぎの皮膚のLD50で見たときにも、毒性が高い。しかし、経口LD50で見たときにとても毒性が高いのに、うさぎの皮膚で見たときには毒性が高くない化合物もある。どんな構造のものがどちらになるか見当がつくだろうか?

自分は完全に読み誤った。(まー、毒性は素人だからしょうがない)

データベースから、LD50(oral, Rat)<180になるものを取り出してみた。最初のテーブルは、ラットの経口LD50でも、うさぎの皮膚のLD50で見ても毒性が高いものだ。これらのlogS(水への溶解度の対数)が2.0、すなわち完全に水溶性だ。自分は疎水性の化合物が毒性が高くなるのかと思っていた。何故なら、皮脂の層を透過しなければ血管に入り込めないと考えたからだ。

CAS name

LD50

(oral,Rat)

LD50

(skin,rabbit)

logP logS
75-86-5 acetone cyanohydrin 18.65 15.8 -0.03 2.00
107-19-7 propargyl alcohol 20 16 -0.38 2.00
107-11-9 allylamine 102 35 0.03 2.00
107-18-6 allyl alcohol 64 45 0.17 2.00
107-07-3 2-chloroethanol 71 67 0.03 2.00
1464-53-5 Butadienedioxide 78 89 -0.28 2.00
111-44-4 Di-(2-Chloroethyl) Ether 75 90 1.29 0.24
Average 0.12 1.75

 

CAS name

LD50

(oral,Rat)

LD50

(skin,rabbit)

logP logS
591-87-7 allyl acetate 130 1021 0.97 0.31
109-75-1 vinylacetonitrile 115 1410 0.40 0.53
13952-84-6 sec-butylamine 152 2500 0.74 1.05
79-22-1 methyl chloroformate 60 7120 0.14 0.97
126-98-7 methacrylonitrile 120 12500 0.68 0.41
Average 0.59 0.65

2つ目のテーブルはラットの経口LD50では毒性が高く、うさぎの皮膚のLD50でみるとそんなに毒性が高くない物だ。これらは中ぐらいの水溶性を示す。

ある毒性の高い化合物が、経口で投与されると毒性が高く、皮膚に塗られると毒性が高くない。どちらの投与の仕方でも、血中濃度が高くなったら毒は毒ななのだろう。では、なぜ2つ目に示すテーブルの化合物は血中濃度が高くならず、一つ目のテーブルの化合物は血中濃度が高くなったのだろう。

自分が読み誤った点は、皮膚の細胞膜を通り抜けるのはどちらかというと、疎水性が高い2つ目のテーブルの化合物と思った点だ。もしかしたら、水溶性の化合物は、汗のでる穴に染みこんで、Sweat glandのところから血中に入り込むのかもしれない。

それでは、2つ目のテーブルの化合物はなぜ、毒性が低くなるのだろう?もしかしたら、血液の側に行くより、貯留脂肪に強くトラップされてしまうのではないだろうか? LD50は急性毒性の指標なので貯留脂肪にトラップされて徐放されたら値は低くはならない。

こうした脂肪に対する溶解性になったら、ハンセンの溶解度パラメータを使って解析するのが有効だ。

ハンセン溶解度パラメータ(HSP)

ハンセンの溶解度パラメータ(HSP)は、ある物質がある物質にどのくらい溶けるのかを示す溶解性の指標です。ヒルデブランドのSP値と異なり、溶解性を多次元のベクトルで表し、そのベクトルが似ているもの同士は溶解性が高いと判断します。”似たものは似たものを溶かす”、”似たものは似た所にいたがる”というのがHSPの基本です。このベクトルは[分散項、極性項、水素結合項]で表されます。分散項はファンデルワールスの力、極性項はダイポール・モーメントの力、水素結合項は水、アルコールなどが持つ力です。(さらに水素結合項をドナー、アクセプターに分割すると4次元になります。)


”似たものは似たものを溶かす”と言う単純な考え方で、ポリマー、医薬品などがどんな溶剤に溶けるか? 高分子の添加剤がどれだけポリマー中に居やすいか? 匂い物質が鼻の嗅覚細胞にどのくらい溶けるか? 医薬品がレセプターにどのくらい溶けるか? ガスクロやHPLCの充填剤にどのくらい溶解しやすいか? 化粧品の皮膚への溶解性は?などを理解するのに役立っています。

PirikaのHSPを計算するJAVAアプレットのデモ、HSPLightはこちらから。
最新の研究はパワーツールで紹介しています。どのような方向に進化しているのか知りたければ覗いてみてください。

これらの化合物のSmilesの構造式を入手して、HSPiPというソフトウエアーを用いると簡単にこれらの化合物のHSPと分子体積が手に入る。

HSPiP(Hansen Solubility Parameters in Practice)

このHSPを効率的に扱えるように、ハンセン先生とアボット先生がHSPiPというWindows用のソフトウエアー、データベース、電子書籍の統合パッケージを開発されました。これを使うと溶解性に関する疑問に答えてくれます。もちろん材料設計は溶解性だけで決まるほど単純ではありません。そこで、Y-MBという分子を自動的に分割し、様々な物性を推算する機能が付け加えられました。Y-MBはver.4 からはY-Predictというパワーツールとしても提供されています。

概要についてはこちらをお読みください。(2013.1.22)
機能についてはWhat Newをお読みください。
自分が使いたい化合物が計算できるかは使用できる官能基のリストで確認ください。
HSPiPの購入とインストール方法をまとめてあります。
他の会社はどんな使い方をしているのか? 特許をまとめてみました

Smilesの構造式

分子の水素は書かずに重原子の元素記号だけ線形に表記する。
有機化学用のC, N, O, P, S, F, Br, Cl, Iは角括弧は省略。他の原子には[]をつける。
枝分かれは()を使う。
2重結合は=,3重結合は#で表す。
環状構造は環の結合を一つ切りその両端に1以上の同じ数字をつける。
PirikaのSmiles構造式を得るJAVAアプレットはこちらから
分子の描画によってSmilesの構造式を得るDraw2SmilesがHSPiP Ver.4 パワーツールに搭載されました。

結果を纏めると下表のようになった。

name dD dP dH Volume
acetone cyanohydrin 16.76 14.99 18.53 87.8
propargyl alcohol 16.13 8.45 20.00 61.8
allylamine 15.18 6.40 9.87 74.5
allyl alcohol 15.57 8.08 17.71 69.2
2-chloroethanol 17.21 11.24 17.49 67.5
Butadienedioxide 17.65 10.22 7.88 80.8
Di-(2-Chloroethyl) Ether 17.18 8.25 4.90 118.3
Ave 16.52 9.66 13.77 80.0

 

name dD dP dH Volume
allyl acetate 15.81 5.05 7.59 108.4
vinylacetonitrile 15.78 11.45 5.59 81.8
sec-butylamine 14.99 4.39 7.18 98.8
methyl chloroformate 16.71 7.47 9.10 76.2
methacrylonitrile 15.74 11.79 5.36 82.3
Ave 15.81 8.03 6.96 89.5

ハンセンの溶解球

ある溶質を溶解する溶媒と、溶解しない溶媒のハンセンの溶解度パラメータを3次元空間(ハンセン空間、HSP空間)にプロットすると、溶解する溶媒は似たところに集まっている。そして、その集まっている溶媒はハンセンの溶解球と呼ばれる球を構成する。

その球の中心を溶質の溶解度パラメータと定める。球の半径を相互作用半径(R0)と呼び、半径が長いものは多くの溶媒に溶けやすく、半径の短いものは溶かす溶媒が少ない。溶解球が2個あるとして解析を行うDouble Spheresという拡張機能がV3.1.xから搭載された。

Pirikaの溶解球を見る、HTML5のアプレットはこちら。
このSphereを見るHTML5のプログラム、SphereViewerがHSPiP ver. 4からパワーツールとして提供されている。

こうしてみると、うさぎの貯留脂肪のHSPは[15.81, 8.03, 6.96]ぐらいなのかもしれない。(平均的な脂肪より、dP、dHが高めな気がする。)上でいう溶解度球の中心が[15.81, 8.03, 6.96]で、それに近い化学品が溶けこんできやすいという考え方だ。

分子の大きさも、皮膚の透過には重要だ。大きな分子は透過しないだろう。しかし、そのよう化合物は経口でも、そんなに毒性が高くないのか、テーブルには現れていない。

うさぎは水浴びの嫌いな動物だ。それならうさぎ用の香水を開発するにはどうしたら良いだろう?それは、 HSPが[15.81, 8.03, 6.96]くらいのものを使えば、もっとも徐放性の香水になるだろう。HSPiPのデータベースからそのような香料を検索してみた。

CAS: 6789-80-6
Zeon make this compound for fragrance.
Odor description: vegetable green.

 

 

 

CAS: 5436-21-5
odor description:ethereal musty nutty alcoholic bitter

 

CAS: 4440-65-7
Odor description: leafy green stem tomato melon apple

最近、マンションなどで飼う動物のふん尿が臭くならないよううに、とかで、動物用の香料の研究が盛んだ。そんなモノをつけられて動物が幸せかどうかの議論は置いておくとして、そうしたものを開発するにはハンセンの溶解度パラメータは有効だ。

うさぎの皮膚から吸収される徐放性の薬を開発したいなら、薬の成分に [15.81, 8.03, 6.96]の部分をくっつけてやるとか、

こんな界面活性剤を設計してやるとか。いろいろできるだろう。

では、人間の皮膚は?
人間の皮膚のLD50のデータがないから、HSPを決められていない.....。

 

HSPiPはlogPやlogSを推算する機能が搭載されている。例えば今回の化合物のlogPをプロットすると上図のようになる。しかし、logPはこちらの記事でも触れたように溶解度を示す指標ではない。logPだけで整理がつかないときにはHSPを試してみて欲しい。

対応するブラウザーをお使いなら、上のキャンバスに分子を複数描けばlogPがどのくらいかを得る事ができる。詳しい分子の描き方はPowerToolsのSmilesを参照して頂きたい。

 

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