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HSPiP Hansen Solubility Parameter in Practice(HSPiP)HSP統合ソフトの本家HP

ハンセン溶解度パラメータ・ソフトウエアー(HSPiP)の購入方法とインストール

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Last Update
27-May-2017

アプリケーション・ノート#60
HSP基礎:ハンセン溶解度パラメータ(HSP)で考える副生成物の抽出除去:リチウム電池用のカーボネート系溶媒から副生成物を抽出除去する溶媒を探索してみる。副生成物が良く溶け,主生成物が溶けにくい溶媒の探索方法。使い方が分かりづらいというユーザーにハンズ・オンで説明した。その説明の改訂版。最適な抽出溶媒のHSPがわかったら、そうしたHSP値を持つ化合物をデータベースから探索する方法、混合溶媒の設計方法を解説する。

2010.10.7

HSPiP Team Senior Developer, 非常勤講師 山本博志

 

HSPiPのユーザーから相談を受けた。

HSPiP(Hansen Solubility Parameters in Practice)

HSPを効率的に扱えるように、ハンセン先生とアボット先生がHSPiPというWindows用のソフトウエアー、データベース、電子書籍の統合パッケージを開発されました。これを使うと溶解性に関する様々な疑問に答えてくれます。もちろん材料設計は溶解性だけで決まるほど単純ではありません。そこで、Y-MBという分子を自動的に分割し、様々な物性を推算する機能が付け加えられました。Y-MBはver.4 からはY-Predictというパワーツールとしても提供されています。

概要についてはこちらをお読みください。(2013.1.22)
機能についてはWhat Newをお読みください。
自分が使いたい化合物が計算できるかは使用できる官能基のリストで確認ください。
HSPiPの購入とインストール方法をまとめてあります。
他の会社はどんな使い方をしているのか? 特許をまとめてみました


HSPiPは色々なことができそうだし、導入したのだけど、Tabやボタンがたくさんありすぎて、何をどうやっていいのか分からない。マニュアルも一部日本語化されているので、それを読めば良いのだろうけど、膨大すぎて取り付きにくい。猿にでも分かるように簡単に説明してくれないか? というものだ。
そこで、実際にハンズ・オンで使い方を説明した。

実際のターゲットは当然明らかにできないが、副生成物の抽出除去が問題になっている。そこで今回はそのハンズ・オンで行ったことを、別の例題でやってみる。そこで何か良い例題は無いかと特許を調べたらリチウム電池用の溶媒で面白いものがあった。

このエチルの1の部分にフッ素が導入されたカーボネートは、「これ を用いて作成したリチウム二次電池が、一般に用いられるジメチルカーボナート(DMC)を用いて作成した電池よりも、リチウム極の充放電効率が高く、サイ クル寿命が長く、さらに低温において非常に高い放電容量を有していることが示されている」「高い放電容量残存率が発現」「高い保存特性が得られる」と特許に記載されている。
ところが、作り方によっては、ジフルオロ体やトリフルオロ体が生成し、これらは物性を下げるので好ましくないとある。(特許自体は選択的に1の位置を1つだけフッ素化するものなので関係ないが)こうした副生成物を抽出除去したいと仮定してHSPiPをどう使うかを説明する。

(当然,最初に考えるのは蒸留分離だろうけど,そこは目をつぶってください。)

抽出の基本的考え方は、ある溶質があったときに、そのハンセン溶解度パラメータ(HSP)と溶媒のHSPで、そのHSPベクトルがどちらに似ているかを調べることから始める。

ハンセン溶解度パラメータ(HSP)

ハンセンの溶解度パラメータ(HSP)は、ある物質がある物質にどのくらい溶けるのかを示す溶解性の指標です。ヒルデブランドのSP値と異なり、溶解性を多次元のベクトルで表し、そのベクトルが似ているもの同士は溶解性が高いと判断します。”似たものは似たものを溶かす”、”似たものは似た所にいたがる”というのがHSPの基本です。このベクトルは[分散項、極性項、水素結合項]で表されます。分散項はファンデルワールスの力、極性項はダイポール・モーメントの力、水素結合項は水、アルコールなどが持つ力です。(さらに水素結合項をドナー、アクセプターに分割すると4次元になります。)


”似たものは似たものを溶かす”と言う単純な考え方で、ポリマー、医薬品などがどんな溶剤に溶けるか? 高分子の添加剤がどれだけポリマー中に居やすいか? 匂い物質が鼻の嗅覚細胞にどのくらい溶けるか? 医薬品がレセプターにどのくらい溶けるか? ガスクロやHPLCの充填剤にどのくらい溶解しやすいか? 化粧品の皮膚への溶解性は?などを理解するのに役立っています。

PirikaのHSPを計算するJAVAアプレットのデモ、HSPLightはこちらから。
最新の研究はパワーツールで紹介しています。どのような方向に進化しているのか知りたければ覗いてみてください。

 

これらの構造のSmilesの構造式を得るのが最初の仕事だ。

Smilesの構造式

分子の水素は書かずに重原子の元素記号だけ線形に表記する。
有機化学用のC, N, O, P, S, F, Br, Cl, Iは角括弧は省略。他の原子には[]をつける。
枝分かれは()を使う。
2重結合は=,3重結合は#で表す。
環状構造は環の結合を一つ切りその両端に1以上の同じ数字をつける。
PirikaのSmiles構造式を得るJAVAアプレットはこちらから
分子の描画によってSmilesの構造式を得るDraw2SmilesがHSPiP Ver.4 パワーツールに搭載されました。

対応するブラウザーをお使いなら、上のキャンバスに分子を描けばSmilesを得る事ができる。詳しい使い方、フルバージョンはPowerToolsを参照して頂きたい。

それをスプレッド・シートにコピーして次々に副生成物と思われる構造を書いてSmilesをC/Pしてスプレッド・シートにまとめる。

ここまでの所用時間は、10分程度だろう。
これが準備できたらHSPiPを立ち上げる。

初期画面に何が出ているかは、ユーザーごとに違うだろう。最後に読み込んだファイルが表示されている。ここで赤丸で印した、δのボタンを押す。するとDIYのパネルが現れる。
そして一番左のY-MBが選択されている事を確認しよう。

そして、Smiesのインプットの所に、先ほどのスプレッド・シートからSmilesの式を1つコピーしてペーストする。そして右の電卓マーク、計算ボタンを押す。するとプログラムがSmilesの構造式を解析して原子団に分割し、様々な物性値を計算する。この計算結果はクリップボードに入っているので値を控える必要は無い。スプレッド・シートの邪魔にならない所にペーストする。その時に値のタイトルもペーストされるので次々に計算する時には注意する。

1回目はタイトルごとコピーしてC1にペーストする。
次からはデータだけC/Pする。
バッチ処理についてはこちらを参照

すると、5分もかからずに、各化合物のHSPの値と物性値の一覧が得られる。
MVolより後ろのデータはいらなければ削除してよい。(粘度や蒸気圧の推算値はリチウム電池の溶媒としては重要かもしれない。適宜利用してほしい。)

例えばFの1置換体のHSPを見ると、副生成物のHSPは幸いな事に良く似ている。ここで似ているというのはHSP距離で評価する。

HSP距離

HSP distance(Ra)={4*(dD1-dD2)2 + (dP1-dP2)2 +(dH1-dH2)2 }0.5

 

そこで目的物のHSPから副生成物のHSPに線を引き、その延長上のHSPの溶媒を使えば副生成物だけが良く溶けると考えられる。(HSPの基本的な考え方、似たベクトルは似たベクトルを良く溶かす。)

ハンセンの溶解球

ある溶質を溶解する溶媒と、溶解しない溶媒のハンセンの溶解度パラメータを3次元空間(ハンセン空間、HSP空間)にプロットすると、溶解する溶媒は似たところに集まっている。そして、その集まっている溶媒はハンセンの溶解球と呼ばれる球を構成する。

その球の中心を溶質の溶解度パラメータと定める。球の半径を相互作用半径(R0)と呼び、半径が長いものは多くの溶媒に溶けやすく、半径の短いものは溶かす溶媒が少ない。溶解球が2個あるとして解析を行うDouble Spheresという拡張機能がV3.1.xから搭載された。

Pirikaの溶解球を見る、HTML5のアプレットはこちら。
このSphereを見るHTML5のプログラム、SphereViewerがHSPiP ver. 4からパワーツールとして提供されている。


そこで、dDが16.5〜17.5、dPが7〜9、dHが2〜4の溶媒が無いかHSPiPを使って探索してみる。

溶媒の探索はメイン画面のFindMolsを使って行う。これを選択するとHSPの範囲、沸点の範囲を使って溶媒を探索する。探索に使うものにレ点を入れ電卓ボタンを押す。すると9種類の溶媒が探索された。ほとんどが塩素系の溶媒だ。この探索はオフィシャルなHSPを決めてある1200化合物に対して行われる。10,000setにレ点を入れると、残りの8800化合物のHSP推算値を含めて探索が行われる。そして、これはという溶媒があったら実際に抽出試験を行う。
ここまで、20分もあれば候補溶媒が得られる。

Drag=回転, Drag+Shift キー=拡大、縮小, Drag+コマンドキーかAltキー=移動。

もしiPadやChrome、Safari (iPad/iPhoneのMobile Safari)、FireFox4などのHTML5対応のブラウザーをお使いなら、上にキャンバスが現れるだろう。 溶媒をクリックすれば溶媒の名前が現れる。赤い球が目的物のHSPを示している。青い球が副生成物のHSPだ。緑色の球が1,2ジクロロプロパン[17.3, 7.1, 2.9]を示している。副生成物のHSPは1,2ジクロロプロパンに近く、目的物からは遠い事が判るだろう。

そして、実際の抽出試験の結果が出たら、その値を使ってさらに最適化を進める。
(これについては、また別途説明しようと思う。)

最終的に最適な溶媒が見つかったら、(特に今回みたいに塩素系の溶媒だらけでそれを使いたくない場合には特に)安全で、安く、その後の分離が容易な沸点差がある混合溶媒を探索したくなるかもしれない。
例えば、溶媒としてNo.1221の1,2ジクロロプロパン[17.3, 7.1, 2.9]が最適だったとしよう。

HSPiPのメイン画面でOのボタンを押すと溶媒最適のペインが現れる。
そこのターゲットの部分に目的の溶媒のHSP値を入れて、2のボタン(これは2成分の最適溶媒を探す)を押す。
するとシクロヘキサン:γ-ブチロラクトンを58:42の容積比率で混ぜたものがその値に近い、と答えてくれる。

混合溶媒のHSP

[dDm, dPm, dHm]=[(a*dD1+b*dD2), (a*dP1+b*dP2),(a*dH1+b*dH2)]/(a+b)

混合比率は体積で計算する。

Pirikaの混合溶媒を設計するJAVAアプレット・デモ、GSDはこちら。
dHをdHdo,dHacに分割した混合溶媒の探索は最新の研究はPowerToolsのプログラムで紹介している。どのような方向に進化しているのか知りたければ覗いてみて欲しい

この最適溶媒のリストは自分専用のものも作れる。普段使う溶媒を登録しておけば、よく使う溶媒の混合溶媒が得られるので慣れてきたらやってみると良い。

実際の実験をどの段階でやるかは、悩ましい。単独溶媒で良いものが無かった段階で、最初から混合溶媒を探して、それで実験するのもいいかもしれない。
ただ、実験値からさらに最適化するのであれば、混合溶媒を使うにしても、ある程度の多様性を持った溶媒(HSPがある程度幅をもった)で行う事をお勧めする。
それは、ここで使った溶質のHSPはあくまで推算値で、実はもっと違う値かもしれない。実験結果が違う所に来て解析した場合に、これらの化合物の本当のHSP値が実験的に求まることになる。

何にせよ、HSPiPを使うと、30分もあれば、「よし! これで試してみよう」と思える抽出溶媒が見つかるというのが、今回の記事のポイントだ。

ターゲットは各人読み替えて試してみて欲しい。

実際の抽出がHSPでどのくらい理解できるかはこちらの記事を参照していただきたい。
アミンなどに使うのはお勧めしない。

 

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