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HSPiP Hansen Solubility Parameter in Practice(HSPiP)HSP統合ソフトの本家HP

ハンセン溶解度パラメータ・ソフトウエアー(HSPiP)の購入方法とインストール

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27-May-2017

医薬品など: 自分でやってみようFFE;アセトアミノフェンの定量的溶解性

2012.4.26

HSPiP Team Senior Developer, 非常勤講師 山本博志

 

HSPiPのユーザーからParacetamolの溶解性について質問を受けた。

HSPiP(Hansen Solubility Parameters in Practice)

HSPを効率的に扱えるように、ハンセン先生とアボット先生がHSPiPというWindows用のソフトウエアー、データベース、電子書籍の統合パッケージを開発されました。これを使うと溶解性に関する様々な疑問に答えてくれます。もちろん材料設計は溶解性だけで決まるほど単純ではありません。そこで、Y-MBという分子を自動的に分割し、様々な物性を推算する機能が付け加えられました。Y-MBはver.4 からはY-Predictというパワーツールとしても提供されています。

概要についてはこちらをお読みください。(2013.1.22)
機能についてはWhat Newをお読みください。
自分が使いたい化合物が計算できるかは使用できる官能基のリストで確認ください。
HSPiPの購入とインストール方法をまとめてあります。
他の会社はどんな使い方をしているのか? 特許をまとめてみました

 

ハンセン溶解度パラメータ(HSP)

ハンセンの溶解度パラメータ(HSP)は、ある物質がある物質にどのくらい溶けるのかを示す溶解性の指標です。ヒルデブランドのSP値と異なり、溶解性を多次元のベクトルで表し、そのベクトルが似ているもの同士は溶解性が高いと判断します。”似たものは似たものを溶かす”、”似たものは似た所にいたがる”というのがHSPの基本です。このベクトルは[分散項、極性項、水素結合項]で表されます。分散項はファンデルワールスの力、極性項はダイポール・モーメントの力、水素結合項は水、アルコールなどが持つ力です。(さらに水素結合項をドナー、アクセプターに分割すると4次元になります。)


”似たものは似たものを溶かす”と言う単純な考え方で、ポリマー、医薬品などがどんな溶剤に溶けるか? 高分子の添加剤がどれだけポリマー中に居やすいか? 匂い物質が鼻の嗅覚細胞にどのくらい溶けるか? 医薬品がレセプターにどのくらい溶けるか? ガスクロやHPLCの充填剤にどのくらい溶解しやすいか? 化粧品の皮膚への溶解性は?などを理解するのに役立っています。

PirikaのHSPを計算するJAVAアプレットのデモ、HSPLightはこちらから。
最新の研究はパワーツールで紹介しています。どのような方向に進化しているのか知りたければ覗いてみてください。

 

J. Chem. Thermodynamics 51 (2012) 172–189 ギリシャのCostas Panayiotouの論文でPSP(Partial Solubility Paraneter)を使うとHSPよりもこうした医薬品の溶解性が非常に精度高く推算できるというものだ。このPanayiotou教授の作られたHSPの推算ルーチンはHSPiPにも搭載され、YMBが出る前はHSPの推算法として標準の物であった。(現在はYMBが標準とされている。) Panayiotou教授らが新しく開発した溶解度パラメータはHSPよりも優れているとというのが、この論文の主張で、質問者は実のところどうなのかを聞きたいということだ。

論文ではParacetamolの溶解性は100g/1kg溶媒を境に良溶媒と貧溶媒を分けている。それでみると、HSPは真中のカラムにあるように、正答率は14/24しか無いと言う。彼らの新しい方法ではそれがもっと高いとクレームしている。これを解析してみよう。

HSPiPのバージョン3.1からハンセンの溶解球(Sphere)を探索すアルゴリズムに定量的なSphereを探索するアルゴリズムが追加されている。SphereというのはHansen先生が導いた概念で、ある溶質をよく溶解する溶媒のHSPベクトルを3次元空間にプロットすると、よく溶かすものはHSPベクトルが似ていて、3次元空間(ハンセン空間)で集まってきて球を構成する。未試験の溶媒のHSPベクトルがその球の中に入ってくるなら、それもよく溶解するだろう、という概念だ。

ハンセンの溶解球

ある溶質を溶解する溶媒と、溶解しない溶媒のハンセンの溶解度パラメータを3次元空間(ハンセン空間、HSP空間)にプロットすると、溶解する溶媒は似たところに集まっている。そして、その集まっている溶媒はハンセンの溶解球と呼ばれる球を構成する。

その球の中心を溶質の溶解度パラメータと定める。球の半径を相互作用半径(R0)と呼び、半径が長いものは多くの溶媒に溶けやすく、半径の短いものは溶かす溶媒が少ない。溶解球が2個あるとして解析を行うDouble Spheresという拡張機能がV3.1.xから搭載された。

Pirikaの溶解球を見る、HTML5のアプレットはこちら。
このSphereを見るHTML5のプログラム、SphereViewerがHSPiP ver. 4からパワーツールとして提供されている。

その”良く”というのの概念が球の半径を規定する。そこで、100g/1kg溶媒を堺に、それ以下のものをScore=0, それ以上をScore=1として、Score=1の溶媒がハンセンの溶解球の内側に入り、Score=0のものが球の外側に来るような、最小半径のSphereを求めるのがHSPiPに含まれる通常のハンセンの溶解球を決定するアルゴリズムだ。そうして求めた球は300g溶けていようが、1000g溶けていようが球の内側であるとしてしか判断されない。そうすると、あるものを最低量の溶媒で溶かしたいとか、抽出の効率を上げたいという用途に対しては困ったことになる。

そこで新しいアルゴリズムが開発された。それは1000g溶けてたものは300g溶けたものより球の中心に近い所に配置されるような球を求めるアルゴリズムだ。球の中心からの距離と溶解”量”に相関をもたせた定量的な球を求めるアルゴリズムだ。(HSPiPのGAオプションの中に搭載されている。)

これを使ってParacetamolの溶解性を検証してみる。結果を下の図に示す。

100g/1kg logをとるので2に相当するのはHSP距離にして10ちょっとなることが判る。つまりHSP距離が10以上のものは貧溶媒、それ以下のものは良溶媒と判断されるので、赤い十字の右上と左下に入ったものが間違って認識されたことになる。それは3つなのでPanayiotouの方法と比べても同等である。そこで定量的Sphereを使えば、Panayiotouの方法を使う必要は全くない。

さらに詳しくこの現象を見ていこう。ここで定量的な方法を使っているにもかかわらず、右端のジエチルアミンと左端のジクロロメタンは大きく外れる。取り敢えずこの2つを計算から外してもう一度定量的Sphereを計算してみる。

すると上の図のように溶解の”量”とHSP距離にかなり綺麗な相関があることが判る。

Panayiotouらは次式のように水素結合項をドナー/アクセプターに分割してクロスタームを導入して推算精度を上げている。

HSPiPでもver. 3.1からドナー/アクセプターは導入済みであるので、定量的なSphereでもドナー/アクセプターとクロスタームを導入して検討してみよう。

Donor/Acceptorを入れると、HSP距離から溶解度が定量的に判ることが上の図からわかる。また、求まった球の中心と同じHSPを持つ溶媒は距離が0になるので、最大の溶解度はlogSが3.5ぐらいだろうとわかる。

それに対してPanayiotouらの結果を実際にプロットすると下のようになる。彼らの提案するΔσでは分類はできたと主張するが、定量性は無いことがわかる。(同じΔσで溶解度が大きく違う。)また溶解の限界がどこにあるのかはわからない。

さらに、我々の方法で分子体積とHSP距離からQSAR式を構築すると次のような結果になる。

一番大きく外れるものはTHFである。THFは疎水的なものもよく溶かしながら、水にも100%溶けてしまうので厄介な溶媒だ。

2つの溶媒、ジエチルアミンとジクロロメタンのうち、ジエチルアミンのPanayiotouらの結果(右端の赤四角)はそんなに悪くない。それを再現できないHSPのモデルは意味のないものなのだろうか?

これはHSPの持つ、dD(分散エネルギー)、dP(分極エネルギー)、dH(水素結合エネルギー)以外のエネルギー(例えば電荷移動??)が溶解に寄与していることを意味している。

(YMB31Eを使ってQEQ法を用いて電荷を計算した結果)

この結果は、アセトアミノフェンはHSPの結果、HSP距離が長い=溶解しにくいはずなのに、実験的には非常によく溶解する事を意味している。実際問題として生体内にはNH基は普遍的に存在しているだろう。そうした部分に特異的に溶解して薬理活性を示しているのではないかと考えることができる。

その溶解のエネルギーはまだ我々HSPteamが定量的に取り扱うすべを持っていないが、QEQ法などの技術を使って解き明かして行こうとしている。新しいパラメータを使ってどこかに押し込めてしまうとせっかくの知見が埋もれて大事なことを見落とすことになりかねないと思うがいかがだろう?

QSARをやることの意味は合わせ込むことではない。合わないものが何故合わないのかを考えどんな力が働いているのか検討することに意味があるのだと思っている。

定量的なSphereにドナー/アクセプターを導入したり、クロスタームを導入する方法はHSPiPには、まだ 実装されていない。それらがどうしても必要というユーザーとこうした例題を元に細部を詰めている段階だ。YMB31Eについても同様だ。

対応するブラウザーをお使いなら、下のキャンバスで位置関係を確認してみて頂きたい。


Drag=回転, Drag+Shift キー=拡大、縮小, Drag+コマンドキーかAltキー=移動。

もしiPadやChrome、Safari (iPad/iPhoneのMobile Safari)、FireFox4などのHTML5対応のブラウザーをお使いなら、上にキャンバスが現れるだろう。小さな球をクリックすれば溶媒が現れる。

ここで大きな球はアセトアミノフェンを示している。溶媒が球で表されているものは溶解度が大きなもの。立方体で表されているものは溶解度が小さなもの。色はdHdoとdHacを表している。赤色はdHdo性が高いもの。青色はdHacが高いもの。色の強さはdHの絶対値を示している。

このdHdo, dHacを含む4D HSPの取り扱いにはHSPiPだけでは不十分だ。PowerToolsのプログラムで扱っているのでご覧頂きたい。

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