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2012.1.12
食べて大丈夫なのはどれ?
薬なのはどれ?
触ってはいけないのはどれ?
答え
左から、エピガロカテキン:お茶の渋み成分、ゲニステイン:豆類に含まれるイソフラボン、NDGA:食用酸化防止剤、クレオソート:主成分、一番右は漆の主成分です。
もともとポリフェノールには酸化防止機能がある事が知られ、お茶やワインではその機能が強調されています。
従って3番目のNDGAが食用酸化防止剤として機能するのは当たり前のように思えますが、化学的に合成されたものはそれだけで危ないものと嫌がられます。
食品用に認可されている酸化防止剤には以下のようなものがあります。
これらのHPLCの保持時間は下のテーブルのようになります。YMBで各分子を計算してください。
酸化防止剤、保持時間データ
例えば、HansenのtotSPを分子体積と保持時間の関係をプロットすると上図のようになります。
食品中の酸化防止剤が何を使っているか、天然物と保持時間がどのくらい違うか? モデル式は有用に使えます。
上のキャンバスに分子を複数描けばRTがどのくらいかを得る事ができます。
詳しい分子の描き方はこちらを参照してください。
ペットボトル入りのお茶:
ペットボトルはポリマーの講義で触れたように酸素のバリアー性は低いです。
つまり内容物が酸化されやすいのです。
上記のお茶の成分自体も酸化防止機能がありますが、有効成分が失われる、変色してまずそうになるので、さらに還元力の強いビタミンC(L-アスコルビン酸)を入れ、カテキン類を保護します。
天然のビタミンCは合成物の50倍以上高価なですので、このような用途にはブドウ糖から化学合成されたビタミンCが使われます。
何故、同じく化学合成された酸化防止剤化合物ではなくビタミンCが使われるかというと、ビタミンCは化学合成品であっても、食品添加剤として記載するときに、栄養強化の目的で使用されるビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類については、用途名の表示が免除されているからです。
つまり、
L-アスコルビン酸を
栄養強化の目的で使用する場合 → 表示免除
酸化防止剤として使用する場合 → 「酸化防止剤(ビタミンC)」と表示
しなければいけないが、お茶に入れているビタミンCは栄養強化の為に入れていると主張できるので、消費者受けを考えると、食品用に認可された酸化防止剤を使う事はしないのでしょう。
でも化学合成品は化学合成品だ。
Solubility prediction of bioantioxidants for functional solvent by group contribution method. Journal of Industrial and Engineering Chemistry Vol.16, No.3, 490-495, 2010 にビタミンCなどの酸化防止剤の各種溶媒に対する溶解性のデータが記載されている。
酸化防止剤の溶解データ
溶媒の物性をYMBで計算し、溶解度のモデル式を構築してみましょう。
例えば、HansenのdP, dHからモデル式を作ったとします。
log(溶解度)= A*Hansen dP +B*Hansen dH -C
VSMRでA-Cの係数を定めてください。
YMBの他の物性値からモデル式を作ったり、他の酸化防止剤のモデルを作ってください。
そうしたモデル式が作成できると、上のキャンバスに分子を描けばどのくらいの溶解度かを得る事ができます。
詳しい分子の描き方はこちらを参照してください。
このように、一旦モデル式が作成できれば容易に新しい溶媒を使った時の溶解度を推算できるようになります。
それをバッチで走らせて一番いいものを探すなども簡単にできてしまいます。
このような研究の仕方が、Materials Informatics (MI)を使った材料設計です。
研究を非常に効率化する方法で、最近、盛んに使われています。
香りの良いサクラなどの木材を高温に熱した時に出る煙を食材に当てて風味付けをすると同時に、煙に含まれる殺菌・防腐成分を食材に浸透させる食品加工技法のこと
この燻煙のフェノール類は、医薬品のクレオソートの主成分です。
殺菌剤、抗菌剤なので毒性は高くなります。
フェノール類データ
YMBとYSBを使って計算し、4-ethyl guaiacolのLD50(文献値なし)を予測してみましょう。
Guaiacol 誘導体の出所(植物)を調べてみましょう。
殺菌、抗菌作用はあるでしょうか?
非ステロイド系消炎鎮痛剤で、リウマチ性の疾患や腰痛、関節痛、神経痛、腱鞘炎、月経痛などに効果的、風邪にも使用される。
J. Chem. Eng. Data 2002, 47, 1379-1383に溶解性のデータがあります。
溶媒をYMBで計算し、さらに温度の情報を加えたテーブルを作ります。
イブプロフェン溶解性の温度依存性データ
YSBで温度を含めたモデル式を作りましょう。
エタノールの35℃でのデータ以外はよく再現するモデル式が作れる事がわかります。
そこで、メタノールに45℃で溶解し、それを20℃に冷却した時にどれだけイブプロフェンが再結晶されるかモデル式から計算する事ができます。
副生成物、原料などの残りは20℃で再結晶しない量以下で無くてはならなりません。
医薬品の世界でも、化学工学にできる事はいっぱいあります。
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