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2012.1.12
ポリフッ化ビニリデン(ポリビニリデンフルオライド)はリチウム電池の負極剤のバインダー樹脂として用いられています。
日立化成のテクニカルレポート (No. 45)
http://www.hitachi-chem.co.jp/japanese/report/045/45_r1.pdf
この樹脂がLiBの溶媒、EC:DMC:DEC=1:1:1に膨潤して性能が低下してしまうと言う問題があるそうです。
ポリフッ化ビニリデン(PVdF)は、クレハが世界シェアー70%を握るキーマテリアルです。
この膨潤を考えてみましょう。
定性的に溶ける溶けないの議論ならHansenの溶解度パラメータ(HSP)の記事をお読みください。
これを定量的に扱うには一工夫が必要になります。
PVdFに3次元架橋がかかってゴムになった場合には、膨潤し重量増加する事はあるでしょうが、溶解してしまうことはありません。
ところが架橋がかかる前のPVdFは溶媒によっては完全に溶解(表中Sと記載)してしまって、それらの溶媒で定量的な値が得られません。
本来は大きな値であるので、その溶媒をのぞいてしまうと予測性能が出ないという問題があります。
表中の溶媒をYMBを使って計算しておきましょう。
重量増データ
このPVdFのパッキンの耐溶剤性はこちらで検討を行いました。そちらの溶媒と共通のものから、換算式を作って、このSとされているものにとりあえず値を与える事にします。
Acetone=17.0, MEK=16.6, エチルカーボネート=8.8とデータ補完を行い、YSBを使って重量増加率を定量的に検討してみます。
PVdF重量増加= A*logKow +B*Hansen水素結合 +C
VSBを使ってA-Cの係数を決定してみましょう。
ジエチルエーテルをのぞき、それなりに実験値を再現できています。 (logKow:オクタノール/水分配比率についてはPirikaの記事を参照してください。)
課題: logKowとハンセンの水素結合項はどのように重量増加に寄与しているか考察してみましょう。 カーボネート類の溶解性予測値のテーブルを埋めてみましょう。
溶媒 | 溶解性 | 予測値 |
Ethyl carbonate | ||
Dimethyl Carbonate | ||
ethylene carbonate | ||
Propylene Carbonate | ||
ethyl acetate | S | |
dioxane | S |
このポリマーををどう改良するかの検討はこちらを参照してみてください。
照明:家庭内の消費電力の16%、 60W相当の明るさなら,白熱電球54W,LED9.2W(17%)全てをLEDに変えれば,電気代1割削減できます。
電子線レジストポリマーをうまく使うとさらに効率が良くなるというJSTの研究があります。
三菱レイヨン:PMMA世界首位
日本ゼオン:MCA
東レ:EBR-9 Macromolecules 1984,17,2761-2764
JSR:半導体用フォトレジスト(感光性樹脂)で世界首位
三菱化学:フラーレン含有レジスト
大日本印刷、富士フィルム
Polymer | Gs |
HFIM | 3.9 |
TFEM | 2.3 |
MFA | 0.05 |
MCN | 3.3 |
MMA | 1.3 |
MCA | 6 |
TFMMA | 4.9 |
TFMAN | 2.9 |
課題:
ポリマーユニットをYMBで計算し(繰り返し末端にはとりあえず水素をつけて計算する)Gs値のモデル式を作製してみましょう。
モデル式=A*ハンセンSP値-B*生成熱-C*最小負電荷-D
YSBを使ってA-Dの係数を定めてみましょう。
EBR-9の予測値と論文にある値とを比べてみましょう。(生成熱に関してはPirikaのこちらの記事を参照してください)
この相関式が得られれば、任意のGsを得るためにどんなモノマー構造を作ればいいかを検討する事ができます。
片っ端から分子の絵を描いて計算して必要なGsのモノマーを特許で押さえても良いし、プログラムやスクリプトが書けるのであれば、自動的に探索させても良いでしょう。
企業での研究の仕方はそういう方向へ移ってきています。
ポリカーボネート(PC)の比重(1.2)は、ガラスの2.5、鉄の7.9と比べ、軽いです。
車一台あたりガラスは平均36Kg(バス、電車などではもっと多い!)使っているので、樹脂窓を使う事による軽量化の効果は大きくなります。
眼鏡用のプラスティク・レンズも以前は高屈折のCR-39というカーボネート系のレンズが使われる事が多かったです。
DVD用の基板や住宅用の合わせガラスの内部、各種ケース、ノートパソコンの筐体などに広く使われている。耐衝撃性と透明性が売り物のエンジニアリング・プラスティックです。
ところがこのPC、みかんの汁がついた手で触ると溶けると言われています。
実際にはあやふやで、ポリスチレンなどの安価な透明プラスティックがみかんの汁の主成分、リモネンに溶解する事からプラスティク・レンズはみかんの汁に弱い、ポリカはみかんの汁に弱いとされてきたのかもしれません。
みかんの汁はリモネン100%では無い事を念頭に、PCの耐溶剤性を考えてみましょう。
耐溶剤性データ
課題:
PCを溶媒に浸漬した後の重量増加のテーブルを見つました。
75℃のデータしかないものは25℃へ補間し25℃での重量増加を検討してみましょう。
まず、溶媒をYMBで計算し、テーブルを用意します。
ここでのポイントは、重量増加の定量的なデータが無くても、PCの耐溶剤性が◎☓△の溶媒を集め、それが正しく予測できているかを確認しながらモデル式の作製を進める方法の習得です。
上のテーブルの溶媒はアルコールが多く、それだけを再現するようにモデル式を組んでしまうと、とんでもないモデルになってしまいます。
例えば下のテーブルでXをつけたものは、重量増加が大きいと予測しないモデル式は駄目だということです。
予測用データ
Hcode | CAS | Name | Smiles | |
1197 | 138-86-3 | dl-Limonene | CC1=CCC(CC1)C(=C)C | ? |
306 | 123-91-1 | l,4-dioxane | C1COCCO1 | X |
182 | 108-93-0 | cyclohexanol | OC1CCCCC1 | △ |
183 | 108-94-1 | cyclohexanone | O=C1CCCCC1 | X |
148 | 108-90-7 | chlorobenzene | ClC1=CC=CC=C1 | X |
617 | 109-99-9 | Tetrahydrofuran | C1CCOC1 | X |
まず、溶解度が既知のデータを使って、モデル式を構築してみましょう。
重量増加のlogをとるために(マイナスの値はlogをとれないので)すべてに0.3を足してからlogをとってみましょう。
得られたモデルで、リモネンを計算すると、2.85になりました。
みかんを食べた手でポリカに触るのは避けた方が良いでしょう。
みかんの汁は水がほとんどで、リモネンはわずかですが、リモネンの水への溶解度、logS(g/100g水)が-3.12(YMB計算値は-2.94)と非常に小さい為、リモネンは油分として水から分離します。
携帯電話のカメラのレンズ部分には触れない方がいいと思います。
日本ゼオンのシクロオレフィンポリマー(COP)であったら、リモネンには非常に弱いです。
ちなみに、このリモネンはアレルゲンとされているので使用には注意が必要でしょう。
このような透明性を要求されるポリマーの耐溶剤性を上げるには、ガラス成分をコーティングする、ハードコートが使われているので、高級品であれば大丈夫でしょう。
ガスバリア性についてはこちらのHPに非常に良くまとまっているので参照してください。
汎用のポリマーで忘れてはいけないのはPETでしょう。
PETフィルムでは東レ、帝人、三菱化学、東洋紡績で世界シェアー70%を占めています。
PETのバルクとしては、三井化学、日本エステル、三菱レーヨン、旭化成、クラレ、ユニチカ、カネボウが大手です。
ペットボトルの9割が飲料用容器として用いられています。
このPETボトルは酸素透過性が高く、内容物の酸化劣化があるため多くの飲料で酸化防止剤としてビタミンCが添加されています。
長期保存に向かないためワインには使われませんが、2009年ボージョレ・ヌーヴォーでPET入りで販売されました。
ガラスの瓶と比べ軽く、輸送コストが安く済むからです。
アサヒビール(株) 容器包装研究所では、ボトル内面にガラスの成分である酸化珪素の膜を蒸着させ、キャップには酸素吸収樹脂を使用したものが開発されています。
一般的なPET容器に比べ、酸素バリア性を約20倍、炭酸ガスバリア性を約4倍に向上することに成功という記事がありました。
ビールもPET入りが出るのかと思ったが、未だに販売はされていないようです。
無機物であるガラスをコーティングした場合のリサイクルはどうなるのでしょうか?
三菱重工、プラズマによりDLC(ダイアモンド・ライク・カーボン)を蒸着する装置を開発しています。
無機物蒸着と異なりリサイクルには適しているとされています。
三菱樹脂が日本酒用に展開始めました。
クラレ世界1位、シェアー65%、日本合成化学。医薬品、食品の包装材料として広く使われています。
プラスティックの中で最高の気体遮断性を持つ機能材料です。
酸素の透過はプロックできますが、水酸基を持つため、水には弱くなります。
そこで表面に耐水性の高いフィルム、中間にEVOH、内側にヒートシールできるフィルムのように3層で使うのが一般的です。
削り節ミニパックにOPP/EVOH/PEという構成で使用され、ハイバリヤー材として一気に著名にな離ました。
各ポリマーをYMBを使って計算し、テーブルを埋めてください。
酸素透過性データ
VSBを使ってモデル式を構築しましょう。
対応するブラウザーを使い、上のキャンバスに分子を描けばどのくらいの酸素透過度かを得る事ができます。(Proバージョンではポリマーの両末端にXを付加すしますが、このプログラムでは何もつけなくてよいです)
詳しい分子の描き方はこちらを参照してください。
このように、一旦モデル式が作成できれば容易に新しいポリマーの酸素透過度を推算できます。それをバッチで走らせて自動設計なども簡単にできてしまいます。
EVOHが酸素透過性が低いのは、どの物性によっているか考察してみましょう。
PETのように主鎖に官能基が入るポリマーはビニル系のポリマーとは同じように比べられません。
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