HSP雑記帳:HSP、思うことを徒然に
2010.7.27
徒然なるままにその日暮らし
2年前に,カルフォニア工科大学の友人の紹介で,初めてメールを交わした時には,「お前は何ができるんだ? 自分のメジャーの論文を送れ。」などなど。
まー当たり前ですな。
それから,半年はユーザー・ハンドブックにある化合物にCAS番号をつけてくれとか,Smilesの構造をUNIFACの原子団に変換できるようにしてくれとか結構つまらない話しか回ってこなかった。構造の間違い,HSP値の間違い,名称の間違いなどを指摘したりするにつれ,半年後ぐらいから徐々に受け入れてもらえるようになった。それからはトントン拍子に重要な部分のプログラミング,データベース管理なども任されるようになった。
アメリカ人は損得でついたり離れたり激しいが,ヨーロッパの人は受け入れるまでは時間がかかるが,ひとたび受け入れてもらえれば,芯から親密になれる。
そして,去年の夏休み(2009)に家族もろとも招待でイギリスに行ってきた。メールは多い日は一日10通以上やり取りしてはいたが,なにせ会うのは初めて。うちの奥さんは,本当に大丈夫なの? どこかに売られちゃうんじゃないの? とすごく心配していた。その話を,教授のお宅で,奥さんを交えてしていたら,向こうの奥さんも,「日本人の研究者を2週間家に泊めるから」「なんですって!?」「実は奥さんも連れてくんだ」「どうするのよー?」「さらに,双子の7歳の男の子を連れてくんだ」「・・・・・・」という会話がされていたらしい。
まー,子供連れなら最悪,悪い人では無いだろうと納得してくれたようだが。
途中,ハンセン先生も合流してくださり,色々議論をした。その中で,日本では溶解度パラメータと言えばHildebrandでハンセンの溶解度パラメータは余り使われていないという話をした。理由は簡単で,溶剤ハンドブックなどのデータ集,化合物のデータベースにはハンセンの溶解度パラメータの値は無い。ポリマーハンドブックには載っているが,これはポリマー屋ぐらいしか見ない。そこで,もっと宣伝をしようということになり,ユーザーフォーラムを立ち上げて色々な使い方を紹介しようという事になった。それがこのページだ。
デンマークはデンマーク語があるが,ハンセン先生も奥さんも流暢な英語を話す。奥さんは元国際線スチワーデスなので当たり前かもしれないが。アボット先生,奥さんが英語を話すのは当たり前で,うちの奥さんもアメリカで4年も暮らしていたので,通訳できるぐらい英語は得意。自分だけが,どうも英語の壁がある。化学は構造式が全てだし,プログラムはCだろうがFortran, JAVA, C#, C++, Objective-C みんなユニバーサル・ランゲージで世界中で通用する!って威張った所で,どうにも会話について行かれない。サイエンスに関する物はそれでもOkなのだが,奥様連が入って来るともう駄目。まー,英語がもう少しできれば,日本には見切りを付けて,海外進出するのだけどなーと,せめて子供にはNativeの先生をつけている。
PIRIKAのHPは10年以上前からやっている。
英語は得意ではないにしろ,とにかく世界に向けて情報発信しないと,という思いから始めた。その甲斐あってか,Google, Being, Yahooどれで検索しても,非常に高い位置にヒットする。個人が運営する科学系のHPで,一日のpage viewが1000を超えているのは立派なもんだろうと思う。もちろんメインのターゲットは英語圏の研究者だが。
ちなみにgoogle でwww.pirika.comを検索すると,7720件検索される。随分有名になった物だ。ページランクでは4-5を貰っているので,一応人気サイトにランクされる。これは一つにはGoogleの検索は英語として間違っているとか,文法が間違っているとかを採点するわけでは無いからだろう。キーワードさえうまくすれば,検索には引っかかって来る。しかし,それでどなたかがリンクをかけてくれるかどうかは別問題だ。
内容があれば,多少の英語の間違いは問題にならないようである。習うより慣れろで,書きまくるしか無い。ちなみに,pirikaには理工学書からのリンクが多いのでランクが高くなっているようである。欧米での理工学書の著者が多くのリンクをかけてくれる,それに恥じない英語になれば良いのだが。
そんなこともあり,HSPの認知度も随分高くなってきた。
それが日本での売り上げに効いているかと言えば答えはノーである。
でも日本以外の売れ上げは宣伝によって(値上げしたにもかかわらず)3倍になったと先生たちから高く評価されている。(だったら,HPの英語を直してくれって言うのだが,これはこれで味があるから気にするなと言う。)
2年前には,HSPは物性推算のターゲットの一つぐらいであったのが,いつの間にか先生たちとケンケンガクガクの議論をするようになり,(ちなみに口から泡を飛ばすのが自分とAbbott先生,まーまーとなだめるのがHansen先生)ヨーロッパのユーザー(しかも,国立研究所の先生)に偉そうに講義するようになってしまった。フランスやドイツの研究者の質問に答える,中国,韓国,インドの研究者に使い方のノウハウを教える。まー,個人としては評価されているのでいいのだが,日本が元気が無いのは気になる。
HSPの応用のおもしろいところはどんどん他所とのコラボが進んでしまう。
電気電子の分野ではそのスピード感の違いで台湾,韓国勢にやられてしまった。化学も同じ道を歩むのかもな。
友人でソフトの営業をしているやつから見分け方を教わった。
HPへのアクセスが,週はじめに多いなら見込みがある。週末にかけて増えるなら,単に暇つぶしに来ているだけで,売り上げは伸びない。まさにその通りである。日本以外では週はじめにHPに来て,半ばに購入して,週末ぐらいになると議論を吹っかけて来る。日本語のページがにぎわうのは木曜日の後半から金曜にかけて。大きな違いは,日本以外の訪問者は関連するページしか読まない。さーと来てさーと読んで帰って行く。日本語のページは・・・・・。
最初は日本人は勉強家だと思っていたのだけど・・・。
ソフトが英語なので利用が進まないのだという意見も頂いた事がある。
まー,それもあるかもしれない。(なので翻訳も進めている)
でも,中国,韓国,インドの研究者から英語だから使えないと言われた事は無い。
HSPはドナー/アクセプターを分離してないので使えない。
分割法が難しいから使えない。温度効果がいい加減だ。
などなど。使えない理由をあげつらう評論家。
まー,言っている事に理はあるんだろうけど,そう言っていれば他所の国に勝てるの?
どんどん日本だけ相手にされなくなって行く。
HSPの開発チームは実質2人しかいない。
Abbott先生と自分とで得意分野を分けて対応するしか無い。
徐々に対応しなければならない海外の大口のユーザーが増えてきている。
「ガラパコスの対応はGoogle Translateに任せたら?」といわれても仕方が無い。一日1000 Page view のうち、日本の100ページ分が無くなった所で、Google rankにも影響は無いだろう。
でも、日本人としてのこだわりもある。次世代への責任もある。どうしたものか。