FFE(Formulating for Efficacy)プログラムの紹介
2011.4.1
HSPiP Team Senior Programmer, 横浜国大非常勤講師 山本博志
2011.11.6 Prof. Dr. Johannがクワランプールで伝染性肺炎で亡くなられたそうです。心からのご冥福をお祈りいたします。FFEについては、プログラムの開発、バージョンアップについてはAbbott教授(溶解度パラメータ、物性推算に関する部分については自分も協力する)がこれまで通り行う。Johann教授のやってきたSkin Scientist としての役割は、Dr Majella LaneとProfessor Jonathan Hadgraftが代行してくれることになった。ふたりとも著名なSkin ScientistでJohannが行うはずだった学会発表も代理で発表する。
FFEは化粧品、経皮医薬品の処方設計(Formulating)するプログラムだ。どんな処方にしたときに効き目(Efficancy)が最大になるかを検討するのに役立つ。Prof. Dr. Johann W. Wiechers(オランダ)とProf. Dr. Steven Abbott(イギリス)によって開発された。 Johann教授はIFSCC(International Federation of Societies of Cosmetic Chemists )、国際化粧品技術者会 の2007年会長だ。Abbott教授はHSPiPをハンセン先生と開発された教授だ。このプログラムの本体は以下のサイトからダウンロード出来る。そして、ライセンスをSwregシステムを使って購入するという形態をとる。(HSPiPと同じだ)このプログラムの要の部分はAbbott先生らの作られたハンセンの溶解度パラメータによる溶解性の評価部分だ。Y-MBの技術も使われている。そこでハンセン溶解度パラメータのユーザーフォーラムでも紹介させていただく。日本語で購入できる代理購入が必要ならこちらから。
先生に許可を頂いたので、上のHPの翻訳をここに載せることにする。
製品概要
FFE(効き目を最大にする処方設計)のためのソフトウエアー
このプログラムはProf. Dr. Johann W. Wiechersの”処方成分と有効成分や薬剤の経皮送達(delivery)の関係”の研究とProf. Dr. Steven J. Abbottのハンセンの溶解度パラメータを使った画期的な溶解性推算技術という2つの先駆的な仕事に基づいている。2003年にWiechersは韓国のソウルで行われたIFSCCの会議で論文を発表した。その論文で彼は初のIFSCC大会賞を受賞した。この論文では2つの相反する要因が、十分な皮膚への送達(delivery)を得るために必要であると説明されている。
- 有効成分の基材成分への溶解の絶対量が大きいこと。すると十分な量が存在できて、続いて皮膚を透過して作用部位に辿りつける。
- 有効成分の基材成分への相対的な溶解度が低いこと。すると、薬剤や有効成分は基材成分から離れて皮膚に移行しやすい。
明らかにこの二つの効果は相反している。そこで、有効成分の最小量が最大の送達(delivery)となる理想的な運搬車が必要になる。この論文はその理想的な処方の見つけ方を説明した。
この研究は、化粧品会社、化粧品の製造会社から有効成分を販売している会社まで、多くの興味を得る結果となった。 皆、臨床効果(Clinical Effect)を欲した。そして、これこそがFFE(Formulating for Efficacy)が最適化する部分だ。
臨床効果(Clinical Effect)に関しては、次の3つの条件を満たしている必要がある。まず最初に、人間の皮膚を透過する十分な能力(つまり本質的な輸送能力)がある有効成分を持っている必要がある。2つめにその分子が正しい活性プロフィール(本質的な活性)を持っていなくてはならない。3番目に、その有効成分が正しい処方(非本質的な輸送)に含ませる必要がある。そうして初めて臨床効果(非本質的な活性)を得ることができる。非本質的な輸送を確保することは、FFEのコンピュータプログラムが行うことと全く同じだ。有効成分の構造はSmilesの構造式で入力する。プログラムは必要なパラメータを計算する。製剤特性のいくつかを入力すると、独自の送達(delivery)に最適された処方を作成する準備が整う。
Prof. Dr. Johann W. Wiechersの10年に渡る経皮送達(delivery)の専門性と Prof. Dr. Steven Abbott(彼は有名な実践ハンセンの溶解度パラメータHSPiPも書いた)の10年に渡る溶解性推算の専門性に基づいているので、FFEソフトウエアーは最新の有効成分の経皮送達(delivery)が(あなたの領域内で)最適化されることが保証される。推奨の処方レシピは、製剤の水相または脂質相(有効成分が組み込まれている相)の構成物として提供される。化粧品や医薬品の調合は、さらに、界面活性剤、防腐剤、香料、増粘剤など当てはまるものをを加え、処方を完成させる必要がある。
トップを目指すなら、FFEソフトウエアーは、そのすぐそばまで連れていってくれる。
FFEソフトウエアー
効果的な化粧品処方を作成するということは大変なことだ。 有効成分の経皮送達(delivery)が効率的になる(多くの調剤師は最善の結果となる事だけを願っている)までには、処方上、非常に多くの要因を考慮に入れなくてはならない。この”願って、様子をみる”という考え方は、そうしたくてしてるのでは無い。単に、ほとんどの調合師にとって、複雑な経皮送達(delivery)の理論を現実上の処方へ変換することが難しすぎるだけだ。有効成分から実効性のある処方を創りだすのが難しいと、多くの化粧品の調合師が思うのも無理ないことだ。
しかし、これはもう言い訳にならない。論理的な処方戦略ソフトウエアー、FFEが今や使え、これは処方設計のプロセス全体を手引きする。このソフトウエアーはJW Solutions、化粧品科学の独立コンサルタント、 Prof. Dr. Johann W. Wiechers(オランダ)によって開発された。基材(有効成分を溶解できる何か)を入力し、有効成分を入力し、そしていくつかの物性、例えば有効成分の濃度などを入力すると残りはFFEが計算する。 いくつかの基材への有効成分の溶解性を最小限の回数実験しシステムの校正をかける必要がある。そしてFFEソフトウエアーは既存の処方を最適化するか、全く新しい処方の基材の最も効率的な組み合わせを提案する。
FFEソフトウエアーはコンピュータのプログラムであり、正しい基材(これは一方で有効成分を溶解する溶媒として働き、もう一方で、有効成分を皮膚のなかに届ける働きをする)を特定するのに役立つ。プログラムの動作概略図を下に示す。
基材を入力する:有効成分を溶解する、化粧品用の基材と他の溶媒(水やエタノール)を入力することによってスタートする。約100種類の化粧品成分の広範なリストがソフトウエアーと伴に提供される。もし、自分が望む成分が含まれていない場合には、自分だけのものを入力することができる。
有効成分を入力する: プログラムの次のページで有効成分を入力する。ほとんどの会社では有効成分は独自のものを使っているので、プログラムにデフォルトで入っている有効成分のリストはとても小さい。独自の有効成分はSMILESの構造式で入力することができる。このページでは、他にも2−3点指示しなくてはならない項目、オイル/水の比率、有効成分の濃度をどのくらいにするか、などをがある。
処方の最適化(何を最適化するか?) 基材の化粧成分(溶媒)と有効成分をを設定し終わったら処方設計に取り掛かれる。しかし最初に根本的な決断をしなくてはならない。何を最適化するか?だ。3つの選択がある。
- 有効(Active)成分の最適化:もし、有効成分をなるたけ多く処方中に溶解したい場合はこれを使う。典型的には、有効成分の溶解性がどんなものに対しても非常に低い場合に使う。溶解した量が、得られる処方の臨床効果のボトルネックになる。
- ターゲット濃度(TC)に対する最適化:このオプション(すでに決まっている成分の比率を最適化する場合にだけ使える)は、有効成分のページで選択した濃度が最大溶解量の限界に近い場合に、基材から離れ皮膚に移行する最大の駆動力を達成するように働く。
- 角質層(Skin)へ向けての最適化:普通にはこれをおこなう。このオプションの選択は、有効成分の大部分が角質層へ浸透するようになる。そこから、(有効成分の物理化学的性質によって決まったように)皮膚のより深い層、表皮と真皮へ移行する。
右の部分に、送達(delivery)を最適化する3つの選択肢がある。この図では"Optimize to Skin" (皮膚に対する最適化)が選択されている。
校正: この時点で、システムの校正のための実験をいくつか行う必要があるかもしれない。しかし、これは選択したオプションに依存する。やらなくてはならないことは、有効成分の基材への溶解実験を基材の範囲を変えて行うことだ。これはプログラムが計算した数値に適応され、FFEプログラムの予測性能を向上させる。
処方を創る4つの方法:最後に選ばなくてはならないのは、上の図の4つのメイン・ボタンだ。
- すでに処方がある場合で、かつ、成分を変えたくない場合、選択した各成分の比率だけが変えられる。その時は、“Optimize selected ingredient list”(選択された成分リストを最適化)ボタンを押す。これは、選ばれた成分が、有効成分が皮膚へ最もよく送達(delivery)するように最適な比率を特定する。 それは、あなたが希望する成分のいずれかが投げ出される事が起きる可能性がある。それが起きてほしくない場合にはレベルを固定化することもできる。コンピュータのプログラムは、選択した基材とあなたが決めた限界量から、常に最適比率を計算する。
- もしコンピュータがひとつの新しい基材を処方に加えることを許すなら、最適な成分を(あなたの決めた濃度で)選び出す。プログラムはあなたの指示(Active: 有効成分、Target Concentration: ターゲット濃度、Skin:皮膚)にしたがって処方を最適化する。この結果は、成分の比率だけを最適化するのを許した場合と比べ、一般的にはより良い結果を達成する。
- もし、まだ処方を持っていないなら、より大きな自由度を持っている。"Find best 2 ingredients"(最適な2つの基材を探す)にチェックをいれれば、プログラムはあなたの指示(Active: 有効成分、Target Concentration: ターゲット濃度、Skin:皮膚)にしたがって、システムにある基材のペアを全部計算する。これは一般的に言って、有効成分をより良く送達(delivery)する。しかし、その成分が(会社の主義、値段、汎用性などの理由で)使えないと判明したら、その基材を外して、2番目に良いものを特定する。
- "Find best 3 ingredients"(最適な3つの基材を探す)ボタンは同じように働く。計算しなくてはならない組み合わせ(基材が100あれば、100*99*98種類の可能な組み合わせがある)が増える。そして、それらの混合物の組み合わせごとに配合比率の一番いいものがあるので、長い計算時間がかかる。 事実、約100万の相図から、何を最適化したいかという指示に基づき、これらの基材の最適比率を特定し、溶解性を推算するプログラムが、これらすべてを15秒程度で行うのは驚きだ。
最終処方? これが完了し、理論的には有効成分を良好に送達(delivery)できるシステムを手に入れても、実際の処方はまだ準備出来ていないこともある。独自の界面活性剤のシステムを入れ、処方を安定化させる必要があるだろう。粘度、防腐剤、香料などを最適化させる必要もまだある。しかし、有効成分の皮膚送達(delivery)の世界最高峰を目指すなら、このプログラムは最低限、ヒマラヤのどこかにあなたを置くだろう。今の技術レベル(棚の上の5つの標準的な処方)では、オランダの海面のレベルより低いところにエベレスト山を探しているのかもしれない。
もっとあるだろうか? FFEソフトウエアーは、もっと多くの違ったことをできるようにする。有効成分の最適溶媒を確定することができる。逆のこともできる。たとえば、太陽光を遮蔽する成分が皮膚に浸透するのを妨げることもできる。一度、遊んで、実験をして、能動的にプログラムを使ってみれば、皮膚への送達(delivery)を超えた複数の機能を持つことを発見するだろう。
FFEソフトウエアーの未来: JW Solutionsの一部である、JW Solutions Softwareでは、アップデートが小さな場合にはアップデートは無償で行われる。しかしながら、メジャーなアプデートが利用出来るなら、既存の顧客にはバージョンアップ代を払うことが求められます。将来のバージョンに含めたいと計画されているものに、皮膚への送達(delivery)ギャップの計算がある。これにより有効成分の最低の有効濃度が使えるかどうか予測することができる。つまり、その分子が””簡単に”送達(delivery)されるか、迷子になるか(lost case)かがわかる。そして、もう一つ、角質層における、有効成分(そして化粧品の基材)の濃度分布の予測の問題が計画されている。これを達成するには、データが必要だ。それも多くのデータだ。そこで、このプログラムのユーザーが皮膚デリバリーの結果を我々と共有することを望む。それによって、我々は彼らの願いを念頭において、ユーザー関連の化学物質を使って、より高度なプログラムの構築が可能になる。
我々はFFEプログラムへの、あなたのコメントを聞くことを楽しみにしている。プログラムのできることを知るために、プログラムで遊んでみてほしい。プログラムを行かせてみて、あなたがどう乗りこなしているか教えてほしい。
Prof. Dr. Johann W. Wiechers
Independent Consultant in Cosmetic Science
JW Solutions B.V.
Prof. Dr. Steven Abbott
Independent Consultant for Formulations and Technical Software
www.stevenabbott.co.uk
このFFEのチュートリアルを頂いたので映像工房クエスチョンさんに翻訳をお願いしている。下訳ができたら監修して、クエスチョンさんから購入した場合、その日本語チュートリアルが付属することになるだろう。2011.5.2現在、およそ2/3が終了したそうだ。
2011.5.16 日本語チュートリアルが完成した。 一部修正、例題をつけ終わった。映像工房クエスチョンさんからFFEを購入した場合には、サービスとしてこの日本語チュートリアルが付属する。