2022.9.25改訂(2010.2.10)
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概要
グラフェンやカーボンナノチューブは溶解というよりは分散しているのだろう。
どんな溶媒に分散しやすいか?
それはHSPが似た溶媒に分散しやすいのだろう。
また、そうしたカーボンファミリーを分散しやすいポリマーは、同じくHSPが似ているのだろう。
内容
Abbott教授,ストックフォルムで 2010年6月9-11日 Nanoparticle Conference
でHSPの招待講演をされます。
参加されるユーザーさま,いらっしゃいましたら,是非,先生にお声をかけてください。
2010年のノーベル物理学賞に炭素新素材グラフェン!
受賞おめでとう!
英マンチェスター大学のアンドレ・ガイム博士とコンスタンチン・ノボセロフ博士が受賞。
次には応用だ。溶媒法でグラフェンを作成している、Coleman博士にも頑張ってもらいたい。
この1ヶ月、このページへのアクセスが非常に増えた。
グラフェン 溶媒法でグーグルを検索すればトップヒットなので当たり前かもしれないが、それだけなのか?
ノーベル賞候補者が予想された段階で、色々な所が作製法も含めてネット検索したのかな?
2010年2月8日の記事で、IBMがグラフェンの100GHzトランジスタを開発したというニュースが流れた。
グラフェン(Graphene)は鉛筆などの炭素化合物(グラファイト)の単層化合物、つまり厚みが原子一個分で、ベンゼン環が平面方向に広がった構造をとる。
その構造によって特殊な電気、光学的な性質を持ち注目されている。
普通のシリコンのトランジスタでは40GHzしか達成できないのが、グラフェンでは電子の移動が非常に高速なので100GHzが達成できたらしい。
WikiPedia より
電気的な事はよくわからないし、コンピュータが速くなってくれれば自分としては満足だ。
では、こうしたグラフェンはどうやって作るのだろうか?
最初に見つかった時のやり方は、グラファイトからセロテープで引き離していたらしい。
ハンセン溶解度パラメータ(HSP)もこの技術には貢献している。
Coleman博士は新しい溶媒法でグラフェンの溶液を作る事に成功している。(SPIEの記事に出ていた。)
実はColeman博士はHSPiPのユーザーで、グラフェンを溶解する溶媒はHSPの技術を利用して最適化された。
自分がイギリスに遊びに行っていた時に、アボット先生の所にColeman博士からメールが来て、HSPで最適化して論文を書いた。
Hiroshiによろしくとコメントされた。(実は当時のHSPiPは多環芳香属の計算に問題があって、Y−MBの計算部分を改良して、きちんと合うように改造を行ったからだ。)
最近、Coleman博士からメールを頂いた。こうした炭素化合物の溶解性について情報交換を行いながら新しい溶解理論の構築を行っている。
そのうちに紹介しよう。
KAISTに遊びに行ったときにCNTの飯島先生の講義を聞く機会があった
グラフェンを溶媒法で取り出したって、小さな片でどうやってデバイスにするのか疑問に思っていたのだが、小片を適当に並べておいてから、CVDをかけると端っこ同士がくっついて大面積のグラフェンが作れるのだそうだ。
まれに2層ぐらい重なったものがあっても、もともと薄いので透明性は変わらないし、電気も流れる。
A4サイズのグラフェンのシートでタッチパネルを作った例を見せてくれた。高価なレアアース、インジウムを使わなくても透明電極を作れる。オモシロですねー。
HSPiPのe-Bookの中にも古くはアスファルトのポリマー設計やカーボンナノチューブ、C60などの溶解性について詳しく説明されている。
グラフェンに関しては原報を参照していただくとして、今回はこうしたカーボンファミリーについてのトピックスを紹介しよう。
化学工業社の雑誌、”化学工業”、2009年5月号にカーボンファミリーへの期待という特集記事がある。
その中に藤ケ谷先生の可溶化カーボンナノチューブの新用途展開というのがあった。
その記事によれば、カーボンナノチューブ(CNT)はピレン誘導体、ポルフィリン誘導体、DNA、芳香族ポリイミドに溶解しやすいらしい。
WikiPediaより
先生たちの研究ではこのCNTはポリベンズイミダゾール(PBI)に溶解しやすいらしい。
HSPは溶解度パラメータをdD(分散項),dP(分極項),dH(水素結合項)へと分解して3次元ベクトルとして扱う。
このベクトルが似たもの同士は溶解しやすいというのが基本的な概念だ。
ベクトルの類似度はHSP距離で計算する。
HSP distance(Ra)={4*(dD1-dD2)^2 + (dP1-dP2)^2 +(dH1-dH2)^2 }^0.5
(dDの差分の前に4という係数がつくことに注意)
HSPiPを用いてこのポリマーのHSPを計算してみる。
ポリベンズイミダゾール(PBI)は実はHSPiPのデータベースに記載されている。
しかし、名称とかから検索するのは大変である。
HSPiPにはJSMEと言う分子を描いてSmilesの構造式を得るWebアプリが同梱されている。
これを用いて、ポリベンズイミダゾール(PBI)の構造を描く。
ポリマーの繰り返し末端はAtを指定しておく。
そしてSMILESの構造式を得てから、AtをXに変換する。
(ここでAtを指定するのは、RDKitで3次元構造を得るためである。)
[X]c5ccc(c4nc3cc(c2ccc1nc([X])[nH]c1c2)ccc3[nH]4)cc5
このSMILESをHSPiPのDIY, polymerの所定の位置に入れて計算ボタンを押す。
ポリマー用の拡張Smilesはこちらの記事を参照していただきたい。
プログラムが自動的に分子を原子団に分解してHSPを計算してくれる。HSPの値は[20.7, 6.1, 5.1]になる(ver. 5.4)。
そして、このポリマーの一致する候補は、PCode 50801のPBIと示されている。
このポリマーは、ジメチルアセトアミド(DMAc)、Nーメチルピロリドン(NMP)に溶解するとある。
DMAcのHSP[16.8, 11.5, 10.2], NMP[18, 12.3, 7.2]がオフィシャルなデータベースの値だ。
非常に興味深いのは、意外とdP(分極項)、dH(水素結合項)が大きいポリマーにCNTが分散するという事実だ。
CNTが良く分散するというピレンのHSPは[22.8, 4.2, 1.7]が計算値だ。
CNTのHSPはe-Bookの中で詳しく検討されている。
詳しくはe-Bookを読んでいただきたいがSWNTのHSPは[19.4, 6.0, 4.5]と定められている。
溶媒としてはo-Dichlorobenzene/Benzaldehyde (50v/50v)の混合溶媒が溶解度を最大にするとある。
従って、CNTは平面からカーブを持つ事に寄ってdHが増加していると考えて良さそうである。
そこで次に、
dD 19〜22
dP 5〜8
dH 3〜7
のポリマーを探索すると39種類のポリマーがあることが分かった。
詳しくはHSPiPを購入してみてもらうとして、いくつかの例を示そう。
こんなポリマーには溶解しやすいとなった。
どなたか試した方がいたら結果を教えていただきたいと思う。
グラフェンがノーベル賞をとったとなると、グラフェンをバインドするポリマーの設計などがホットになり、HSPiPの購入が増えるかもしれないな。
硫黄系の導電性ポリマーのHSPはこちらの記事を参照していただきたい。
2012.9.3
世界最高レベル性能の塗布型カーボンナノチューブ分散高性能薄膜TFTを開発 ディスプレイ用途の実証研究進む-東レ・慶煕大
東レは,CNTの表面に導電性を阻害しないような半導体ポリマー(ポリ-3-ヘキシル
チオフェン(P3HT))(HSPは [19.1, 3.9, 6.4])を付着させることにより単層CNTの凝集を抑制できることを見出していたとある。
CNTのHSPが[19.4, 6.0, 4.5]なので、似たものは似たものを溶かすの原理で凝集を抑えているのだろう。
C60の溶媒に対する溶解度についても紹介しよう。C60の溶媒の溶解度のデータとして下のようなものがあった。
結果を見るとHildebrandのSP値と良い相関があるように見える。
そしてこの論文の作者はC60のHildebrandのSP値は18.4であると結論づけた。
しかし,数年経って他の研究者が他のデータを発表した。そうしたデータを全てプロットして見ると非常に困ったことになってしまう。
トップピークの位置は20.3 (25000ug/ml)にずれてしまい,しかもピークに近いHildebrand SP=19.7の溶媒が1ug/mlしか溶解しない事が分かった。
つまり,非常に限られた範囲の溶媒だけなら,それなりに相関が見られるが,非常に広い範囲の溶媒に適用すると矛盾をきたしてしまう。
HSPiPのSphere機能を使ってC60のHSPを決定すると,[20, 3, 2]になり,上に示した溶媒とC60とのHSP距離をLog(溶解度)に対してプロットすると下図のようになる。
dDを22にするとさらにフィティングはよくなるが,dDが20でも全体的な傾向は変わらない。この図を見ると,“ベクトルの距離が短い=良く溶解する”という関係が簡単に見て取れる。
その関係を実施にハンセン空間で見てみよう。
2011.4.22
Drag=回転, Drag+Shift キー=拡大、縮小, Drag+Shift キー=拡大、縮小, Drag+コマンドキーかAltキー=移動。溶媒をクリックすれば溶媒の名前が現れる。
さらにQSPR式を作ってC60の溶解性を推算するプログラムを作ってみた。詳しくはこちらのページを参照して頂くとして、対応するブラウザーをお使いなら試してみて頂きたい。
対応するブラウザーを使い、上のキャンバスに分子を描けばどのくらいの溶解度かを得る事ができる。詳しい分子の描き方はこちらを参照してください。
自分の注目しているのはソニーの特許で、フッ素やスルホン酸基を持たせたものだ。
燃料電池用の電解質膜材料に使うらしい。
こんな物質のHSPを計算して、どんなポリマーに分散するか調べる。
HSPiPを使うと色々なことができる。
2010.10.6 2010年3月にver.3が発売になり、旧ユーザーはバージョンアップが無償で受けられます。新バージョンをダウンロードしてインストールしてください。
近いうちにver.3.1がリリースされます。
2010.12.13
Version.3.1.Xがリリースされました。
顔料の分散性は水素結合項を酸性/塩基性に分割する方法が有効だ。
2012.1.9
炭素素材に対する定量的な解析例を自分でやってみよう(DIY)で解説した。
詳しい事はこちらの記事を参照していただきたい。
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