水への溶解度

2024.9.17

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2011-2024年横浜国大(YNU)で行なった授業で使ったYNU-YMBを公開した。
重原子は15まで、CHNO以外の原子は1以下。パラメータは2013年のものなので古い。JSMEの使い方はこちらを参照して欲しい。

以降、2011.6.28の古い記述。

YMBシミュレータ(HTML5 プログラム 2011.6.10)
web版でPass Codeを持たない場合、重原子4つまでしか計算できません。

シス、トランス化合物はその平均値を返します。
芳香族用のパラメター、ハロゲン化合物のパラメーターは入っていません。
分子の描き方はこちらを参照してください。

水に対する溶解性を、情報化学を利用して計算式を構築するにはどのような点に気をつけなくてはならないかを解説しました。2013.9.24

最新の推算方法は、HSPiPに搭載された。HSPiPに搭載の商用版では、F, Cl, Br, I,S, P, B, Siが使える。芳香族も扱え、最大重原子数は120になる。

プログラムによってんな原子団が使えるかはこちらで確認のこと

水への溶解度

水への溶解度は、多くの場合100gの水に対して何g溶解するかの値がデータベースに登録されている。
データ集によっては1Lの水に対する溶解度であったり、ppm単位であったり混乱が大きい。
そこで、単位を統一した溶解度のデータベースを作成するのに膨大な作業が必要になる。

そうしたこともあり、10年前の段階では推算式はできておらず、pirikaの物性推算でも取り扱っていなかった。現在では3667化合物について信頼性の高い水への溶解度のデーターベースを構築済みで、解析を進めている。

例えばlogPとlogSの間には次のような関係があることがわかる。

lgoS1

つまり、logPの大きい化合物はlogSが小さい。

logPは疎水的で大きい化合物ほど値が大きくなる。そのような化合物の水への溶解度は小さい。これは真実であろう。

しかし問題は2点ある。
logPは比率であるが、logSは絶対値が意味がある。100/100でも0.001/0.001でも比率は1でlogPは0になるが、絶対値は10000倍異なる。
そこでこの二つをプロットしてもおおよその相関しか得られない。

もうひとつの問題点はlogSは100gの水に対して何g溶解するかをlogをとったものだ。
通常の100%水溶性の化合物は100gに対して∞溶解してしまうが、データ値としては100gの水に対して100g溶解する、つまりlogSは2で実験は打ち切られてしまう。

これがlogSの推算を非常に難しくしている。つまり、OH基など親水性基の加算値が、あやふやになってしまう。

lgoS1


そこで、YNUーシミュレータに搭載した物性推算式の精度は余り高くない。限界を理解した上で利用して欲しい。

このlogPとlogSは抽出や晶析に非常に重要な情報を与える。
つまり、ある医薬品などを合成し溶媒から抽出しようと考えた場合、どんな溶媒が一番良く溶解するかはHansenの溶解度パラメータを使えば設計できる。

そうして得られた候補の抽出溶媒に対して、logPとlogSのデータは不可欠である。
水から抽出するのに水溶性の(logSの高い)溶媒を使っては抽出できない。

また排水の観点から分配比率も重要である。
候補のlogPとlogSを睨みながら総合的な判断を下さなくてはならない。そうしたときに、推算値であってもこれらの数値が得られるのはとても有用だ。

最新の推算方法(2023.4.19追記)

有機物の水への溶解度推算に関しては、2011年以降もいろいろ検討したが、このページは更新して来なかった。
ここで、まとめておこう。

ハンセン溶解度パラメータ(HSP)と環境関連物性値 2010.11.24
 HSPiPのV3.1.xを使って揮発性有機化合物( VOC:Volatile Organic Compounds)の水への溶解度を評価した。

水への溶解度を予測するQSPR式の構築法 2021.5.28 2013.9.24
水への溶解度を予測する式を作るときの注意点を網羅した。
特にこの系特有の、完全水溶性化合物のlogS(g/100g水)が2となってしまうことの問題点を詳しく解説した。

原子団寄与法の基礎 2021.5.5
原子団寄与法を使って水への溶解度を推算するときの問題点を整理した。
原子団の係数を定められない時には、RDKitなどで水への推算式を作って、定められない原子団を含む分子の水への溶解度を仮決めして、係数を得る方法を解説した。

 RDKitの使い方 2018.12.13
RDKitはトポロジカルなインデックスを作り出してくれるツールだ。
これを使って水への溶解度を推算する式を作ると、JSMEで分子のお絵かきをするとlogSを推算するWebアプリが簡単に作れる。 

SDF fileの取り扱い  2018. 12.21
様々な水への溶解度のデータがネットの上に転がっている。
その多くはSDFファイルで提供される。それをエクセルで扱えるように変化する方法を解説した。

EPA T.E.S.T. 2019.1.23
EPAのTESTには水への溶解度のデータが含まれる。これをPLS法を使って解析した。水への溶解度のデータが増える。すると推算精度が出なくなり、推算式を作り直す。いつまで経っても、計算は実験の後追いでしかない。暗鬱になる。

PCA(主成分分析)2019.1.22
PLS法と同様にPCA法を用いて水への溶解度を検討した。

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