1.8 活量、活量係数の入手方法

2024.9.04

pirika.comで化学 > 化学全般 > 化学工学 > 復刻版:ASOGによる気液平衡推算法 > 第1章 溶液論の基礎式

1.8 活量、活量係数の入手方法

活量というのは、「実効モル濃度」のことであると説明した。
これを使えばラウールの法則の式 P=P1*a1+P2*a2が実在溶液でもそのまま使える。

それではこの活量はどうしたら入手できるだろうか?
化学工学で用いられている化合物の種類は1万種類以上とも言われ、そうした化合物ペア全て(10,000*9,999)について、活量係数を求めるのは不可能と言わざるを得ない。

さらに多成分系の混合物になったら、その活量係数の組みは指数関数的に増えていく。

同じ純成分ペアでも、圧力一定、温度一定で測定した時の活量係数は異なるし、圧力や温度を変えただけでも活量係数は異なる。そこで必要な条件での活量係数をどうやって推算するかが大事になる。

ここで,ASOG(Analytical Solutions of Groups)の考え方が,今から50年前に生まれた。

ASOG法の基本的考え方を説明しよう。

例えば先ほどのアルコールと水といった時に,組み合わせの種類はアルコールの種類分だけ存在する。メタノールから始まって,炭素鎖が大きくなったり,枝分かれしたりした、いろいろなアルコールがある。時には2,3重結合のようなものが入っていたり,炭素鎖が環を巻いていたりする。そうしたアルコールが何種類あるかは分からないが,それらを、アルコールを構成するグループに分けてしまえば水酸基,CH2基,CH2=基,CH2(環状)と水の5グループの組み合わせで表現できる。つまり5つのグループのグループ間同士の相互作用パラメータ(同じグループ同士は0)が分かっているなら,5*4=20種類のパラメータでどんなアルコールと水の組みあわせでも活量係数が計算できることになる。つまりスモール・データを使ってビッグ・データを予測することができるようになる。化学工学の分野では、50年前からビッグ・データの合理的な取り扱いが始まっていたということになる。

それでは,「一体いくつのグループを定義したらいいのか?」は難しいところだ。グループを増やすごとに2乗で決めなくてはならないパラメータが増えていく。もし100個のグループを定義するなら、100*99種類のパラメータを決めなくてはならない。

しかしパラメータを決める精密な実験データが10,000系しかなければ、そのパラメータ全てを決定する事はできない。そこでASOGでは特殊なグループの数え方をする。

先ほどの枝分かれのあるアルコールで説明すると、分子の中には、CH3-, -CH2-, >CH-, >C<の4種類のグループが存在する。細かく分類すればするほど計算の精度は高くなるが、決めなくてはならないパラメータは増えてしまう。そこで、ASOGでは、-CH2-はCH3-と同じパラメータを使う。>CH-は0.8個分のCH3-、>C<は0.5個分のCH3-として扱うことにした。(また水に関しても特殊な個数の数え方があり、1.6個と数える)

このようなテクニックを使うことで、本来4グループのパラメータを決めなくてはならないところ、CH3-1つのパラメータを決めれば、どんな枝分かれの構造でも計算できるようになる。そのようなグループを減らすテクニックを使いながら、スモール・データを使ってビッグ・データを予測することがASOG法で可能になっている。


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