ぐにゃぐにゃの分子と硬い分子の溶解性

海外の研究者と溶解性に関して議論している。特に分子軌道計算で正しい値が出にくいと言う。

そういえば、2017年の分子集合体の化学(東大での授業)でそんな話をしたのを思いだした。
分子が大きくなってくると、様々な自由度を取れるようになってくる。
そのバリアーの高さはCH2がエーテル酸素やO-Siになったりするととてもぐにゃぐにゃになる。
そして、実際の溶液の中では、こうした様々なコンフォメーションの分子が混ざっている。その時に分子のダイポールモーメントには差が出てくる
従って、ハンセンの溶解度パラメータの中でδPの値は幅を持っているはずだ。


それでは、こうしたぐにゃぐにゃの分子と硬い分子で物性的には、どのような差が出るだろうか?

右の分子は硬い分子で回転障壁が高く、ほとんど動けない。
それに対して、左の分子は様々なコンフォメーションを取ることができる。
その差は熱伝導度に大きく表れている。
分子が衝突した時に、左の分子はぐにゃりと形を変えてエネルギーを吸収してしまう。
冷蔵庫の断熱材に使われていたクロロ・フルオロ・カーボン(CFC)が低い熱伝導度だったのも、ハロゲン原子が大きくて回転障壁が高くて硬い分子だったからである。

そうした所に酸素とかが入ると、コンフォメーションだけでは無く、水素結合や誘起される電荷とかで、δP、δHもある幅を持つことになる。(しかし、フルオロエーテルの場合には酸素上のローンペアがフッ素に引きずられてしまう。これはこれでとても面白い。)

HSP理論では溶質には相互作用半径が与えられている。
私の見解では、ぐにゃぐにゃで酸素や窒素を持った溶媒は大きなHSP的な半径を持っても良いと思っている。グリーン・ソルベントを使いこなすには大事な概念だ。

酢酸は、分子の周りの環境によって大きくダイポールモーメントが変わる。(これは電荷平衡法による計算)

例えば、キシレンと言う溶媒は、エチルベンゼン、o-,m-,p-キシレンの混合物になる。
こうした溶媒の溶解性が高いのは、HSPがある程度幅を持っているからではないかと思っている。

もう少し体系化できると面白いと思うのだけど、議論している彼が興味を持ってくれれば面白いのに。