動物実験代替法のシステムをHSPiPを使って簡単に実装してみよう。

データとHSPiPを持っていれば30分もあれば、予測システムを作れるので、夏休みの自由研究でやってみよう。Draize Scoreとか、JaCVAMで検索すると色々データは入手できる。

アバターを使ったVtubeを作った。今回はわけって英語版。

System design of alternative methods for animal experiments using HSPiP

僕は試しに次の文献をネットからダウンロードしてきた。
Vitrigel-Eye Irritancy Test Method Using HCE-T Cells
toxicological sciences 135(2), 347–355 2013

データはこのようにまとめておくと良い。
化合物のSmilesの構造式とCAS#はPubChemあたりから持って来れば良い。
一番時間がかかるのはこの部分だろう。
そして、HSPのScoreをどう扱うかを決める。例えば
GHS=1 Score=1
GHS=2A Score=2
GHS=2B Score=3
GHS=NC Score=4
とする。

準備ができたら、データをコンバーターにかけて、hsdxのファイルフォーマットへ変換してセーブする。

HSPiPから読み込む。
Scoreシステムが1-6システムなので、どのレベルからハンセンの溶解球の内側にするか選択する。(ここではInsideを3に設定する。)後は計算ボタンを押せば瞬間で結果が得られる。

GHSが1,2A,2Bのもの(刺激性)が緑色の大きなハンセン溶解球の内側、GHSがNCのものは球の外側に配置される。

そして、緑色の大きなハンセン溶解球の中心は、[δD,δP,δH]=[15.7,6.2,12.1]で半径は7.8になる。

これで、任意の化合物をGHSが1,2A,2B(刺激性)かGHSがNCかの判定するシステムが作成された。
新しい化合物のハンセン溶解度パラメータを計算して、それをハンセン空間にプロットしたときに、緑色の大きなハンセン溶解球の内側にあれば刺激性、外にあれば刺激性が無いといえば良い。

RED= HSP Distance / Radiusで計算できるので、エクセル上で行なっても良い。

GHSが1,2A,2BをInsideにしたので、Draize Scoreでは13以上のものが球の内側に入る。例外はHexyl cinnamic aldehydeで、GHSが2Aで刺激性であるのに、REDが1以上になる。


ハンセン溶解度パラメータ基礎講習会。外部記憶メモリーで扱ったように、Scoreを実数で取り扱っても良い。
またHSPiPのQSAR機能を用いるのであれば、HSPiPのQSAR機能で経口吸収、皮膚透過性に書いたようにやれば良い。

どのやり方でやるにしろ、10分もあれば、予測システムは構築できるだろう。

とても簡単なので、夏休みの自由研究にはもってこいだ。
少なくてもここまでは自分でやってみよう。

仕事でやる人はもう少ししっかりやる必要がある。

これでは分子の大きさが加味されない。
当然、大きな分子は皮膚刺激性はないことが多い。
そして、実はこの問題の場合、HSPiPに搭載されている程度のQSAR機能では、モデル式を作成できなかった。

pirikaの新しいモデル化ツール、MIRAI-Gを使う必要がある。
この場合、QSAR式から大きく外れる化合物は、2-Methyl-1-Pentanolになる。
n-HexanolのDraize Scoreが64.8であるので、2-Methyl-1-PentanolのDraize Scoreが13では小さすぎると認識したようだ。
Hexyl cinnamic aldehydeは27.5と計算されるのでほぼ直線に乗る。Hexyl cinnamic aldehydeの分子の大きさは、用いた化合物の中で2番目に大きい。大きさを補ってさらにHSPの溶解性で大きな刺激性を持つと考えられる。

Draize Scoreのスコアの無い化合物を予測したところ次のようになった。
Methyl pentyl ketoneで10.7
Gluconolactoneで5.1
どちらも13以下なので刺激性は無いと正しく判断される。

MIRAI-Gの計算は少し時間がかかるが、非線形性と項目相互作用が加味される。差し当たっては、pirika研究会などで、プログラムの使い勝手などをもう少しブラッシュアップしよう。将来的にはCLIライセンスとセットにすることも考えている。

この論文自体は、実は、「試験薬品の眼刺激性を簡便かつ正確に評価できる新しい眼刺激性試験(EIT)法「ビトリ ゲル EIT 法」を開発することを目指した。HCE-T細胞(HCE由来細胞株)をCVMチャンバー内で6日間培養し、生体内のHCEの特徴である6つの細胞層とそのバリア機能を有するビトリゲル-HCEモデルを形成しました。30 種類の化学物質を HCE モデルで曝露した際の TEER 値の時間依存性プロファイルを 3 つの指標(タイムラグ、強度、プラトーレベル)のスコアに変換し、各指標の基準を用いて化学物質を刺激性または非刺激性に分類した」
と私には全く意味不明の代物だった。

まー多分、動物を使わない代替膜で試験したら、動物実験を再現できたと言いたいのかもしれない。

もし、論文書いた人がこのブログを読んで興味を持ちデータを使うことを許してくれるなら、IntensityやPlateau LevelのHSPとの相関を考えるのも面白いかもしれない。