光学分割にハンセンの溶解度パラメータ(HSP)を使う。

学生向けpirika研究会に参加している学生で、光学分割を行っている学生がいる。講義ネタを探していたら、アルコール類と水の混合溶媒で誘電率を制御して光学分割を行う論文を見つけた。

群馬パース大学紀要No.23の「キラル医薬品製造技術の進歩」-分子認識を制御する新しい工学分割技術ーが元論文で、ネットから入手できる。

ざっくり言えば、誘電率が上図のように30以上55以下(この範囲は化合物によって異なる)では(S)体の光学純度が高くなり、それ以外では(R)体の純度が高くなる。

そこで、アルコール類と水との混合溶媒の誘電率のデータを探した。
古い論文だが、化学工学第28巻第11号(1964年)に「有機溶媒-水混合溶媒の誘電率と電解質の溶解度との関係」という論文に値があった。

スキャンしてまとめるとこのようになった。

現在、別の用途で誘電率をハンセンの溶解度パラメータから推算するQSAR式を構築している。もともと、ハンセンの溶解度パラメータのδP項(分極項)は誘電率から決められている。

また混合溶媒のHSPは体積分率(φ1,φ2)を使って
HSPmix = HSP1*φ1 + HSP2*φ2
で簡単に計算できる。(もっとも、水/アルコールは共沸を起こしたりするので本来は活量係数まで加味しなくてはならないかもしれない)

そこで、上図の横軸を混合溶媒の重量%から混合物のtot HSP(= sqrt(δD2+δP2+δH2))に変更してみた。

すると、誘電率とtot HSPは、ほぼ綺麗な直線関係になることがわかった。

その、相関するtot HSPの本質はδHであって、δPではないようだ。


このように溶解度パラメータと誘電率に直線関係が得られるなら、一番最初の図の横軸をtot HSPもしくはδHでプロットしても良いということだ。

そしてHSPを使うのであれば、混合溶媒は体積分率で計算できる。そこで必要なHSP(かなり狭い範囲で急激に変わる)の混合物はHSPiPを使えば簡単に設計できるということだ。

アルコール以外、アセトンやジオキサンなどはアルコールの線からは少しずれる。
ということは、ドナー/アクセプター性が効いているのかもしれない。
それについては、学生ともう少し深掘りしよう。

まー、いくらでも論文書けるな。