ハンセン溶解度パラメータ基礎講習会。外部記憶メモリー。

学生と始めたpirikaの研究会。第2回目のまとめ資料をpirikaにアップロードした。
Abbott先生と共同で、半分は自分が作っているはずだが、Abbott先生の作った部分の説明は、どうもキレが悪い。

特に自分の両親が亡くなった時期や、退職の前後はバージョンアップにもあまり貢献できていなかった。

学生に教えるというのは、色々なことを思い出すのにはとても良いリハビリだ。

ハンセンの溶解度パラメータ(HSP)というのは、溶媒などの低分子のものと高分子や構造の確定できない石炭のようなマテリアルで取り扱い方が異なる。

低分子のいわゆる溶媒は蒸発潜熱と分子体積からトータルの溶解度パラメータが決まり、後はそれをどう分割するかだ。

同じ3次元の溶解度パラメータでも、Hansenのものと、Van Krevelenのもの、Hoyのもので全く概念が異なるものだ。

私は、Hansen先生とHansenの3次元の溶解度パラメータを研究している。
Y-MBという私の作った機能を使うとイオンや塩以外の中性分子のHSPを推算する。

HSPは高分子や構造の分からないものでもHSPを決定できる。しかし、非常に基本的な構造がはっきりしているもの以外、推算するのは無理だ。
HSPが既知の溶媒を使って溶解性試験を行うと、HSPiPのSphere機能を使って溶質のHSPを決定できる。
それは生体高分子のうさぎの目であっても、人間の皮膚であってもHSPを計算できる。

目や皮膚を介して化合物がどう働くは、Y-MBで計算してHSP距離を計算すれば見当がつく。

そこで、今回、学生と勉強会をやっていて思い出した事がある。

昔の僕は天才だったのでは無いかと思う。

通常、HSPiPで、HSPが既知の溶媒で挟み撃ち法で溶質のHSPを決定すると、求まったSphere(中心のHSPと半径が求まる)に対して、新たな化合物のHSPがそのHansenの溶解球の内側に来るかどうかで、溶解性や刺激性が判断される。

大事な点は、Scoreで1で判断したのと同じ程度に溶解や刺激するということだ。
先生達は中心に近いほどより高い溶解性や、より強い刺激性があると言っているが、僕はそれは言えないと思っている。

それでは、定量性に関して何も言えないのか?と言ったらそんなことは無い。
今回、学生に教えていて思いだした。


例えば、皮膚への透過係数を計算する時には、HSP距離が短いほどlogKpが高くなるように、ハンセンの溶解球を探索してやると、分子体積が大きいものは、HSP距離は短いにも関わらず、logKpは小さくなるというのが明確にわかる。
例えば高分子の可塑剤もそうだ。HSP的には溶解するが、分子が大きすぎるのでポリマーを溶解できない。でもポリマーの中に留まって可塑剤としての役割を果たす。

同じように、0,1でScoreをつけてSphereを探索すると、HSPの距離とlogKpの量とは相関がないので混沌としてしまう。

そんな機能をver3.1には搭載していたのだから驚きだ。
もう12年前の話だ。

若い学生には、覚えておいてもらおう。
こうなってくると、外部記憶メモリーだな。僕はアゲハに夢中になっていても良い。