1.2 理想気体

2024.9.04

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1.2 理想気体

理想的な気体の温度T、圧力Pと体積Vの間には、
PV=nRT (n:モル数、R:モル気体定数)
の関係が成立する。

実在気体の場合には、空間にしめる分子体積(Vに対する補正が必要)、分子同士の相互作用(Pに対しての補正が必要)によりこの関係は成立しない。高校の化学で、ボイルの法則やシャルルの法則を習ったかもしれない。そのボイル・シャルルの法則が成立するのが理想気体だ。

理想気体の状態方程式を変形すれば、モル数、n=PV/RTなので、気相に存在するアルコールと水のモル比は(体積、温度は共通なので)圧力の比になる。

87.135℃での水の蒸気圧=481mmHg, エタノールの蒸気圧=1038.9mmHgなので、モル比は、1038.9/(481+1038.9)=68.4モル%になる。
気相には沸点の低いエタノールがたくさん存在していることになる。

思考実験として、この気相だけを取り出すことを考えてみよう。冷却するとエタノールの68.4%モル水溶液が得られる。これは何度で沸騰してその時の気相組成はいくつになるだろうか?
沸点の低いエタノールの割合が増えているので、87.135℃よりも低い温度で沸騰するだろうし、気相でのエタノールの割合もさらに高くなるだろう。
これを何回も繰り返すとエタノールのモル分率はどんどん高くなる。

実際には、エタノール/水系では液相組成と気相組成が等しくなる共沸点が存在して、それ以上には濃縮できない。

これが蒸留分離の基本的な考え方だ。原油からガソリン成分、灯油成分を分離したり、化学品から不純物を蒸留分離したり、製造プロセスに欠かせない分離プロセスの基本になる。

ここまでの話は、エタノール/水の混合溶液が理想溶液だとしての話だ。現実的には、理想溶液はベンゼンートルエン、クロロホルムー四塩化炭素のように構造と大きさがよく似た同族体だけで成立する。

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