液液抽出をHSPで考えるのは難しかった

2024.7.21

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2010年当時は、水とオクタノール、ジエチルエーテル、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、ヘキサンの液液平衡をHSPで考えるのは難しかった。ある化合物の水とのHSP距離、有機溶媒とのHSP距離で簡単に計算できると思ったのだが。

大まかにはlog Kdの値を有機溶媒と化合物のHSP距離に対してプロットすると2種類の線が現れる。上の線はアルコールやアミド、下の線はエステルやカルボン酸になる。
難しいのがアミンであった。これは通常の3D HSPでは評価されない、酸塩基相互作用が大きく働いていることを窺わせる。

今回33種類の距離の式を自動で作成するWebアプリを作ったので、各抽出溶媒のkdに対して最適な距離の式を求めた。
結果的には、どの抽剤に対しても最適式は同じであった。

Euclid Typeの式
14:sqrt((dDvdw1-dDvdw2)^2+(dDfg1-dDfg2)^2+(dP1-dP2)^2+ (dHacid1-dHacid2)^2+(dHbase1-dHbase2)^2)

Beerbower Typeの式
29:(dDvdw1-dDvdw2)^2+(dDfg1-dDfg2)^2+(dP1-dP2)^2 +coeff*(dHacid1-dHacid2)*(dHbase1-dHbase2)

ちなみに、HSPiPに搭載されているのは、次式だ。
1: sqrt(4.0*(dD1-dD2)^2+(dP1-dP2)^2+(dH1-dH2)^2)
距離と溶解性の相関係数が最も高くなるようにパラメータが決定される。

どの系も、クラッシックな3Dより圧倒的によくなっていることがわかると思う。
Euclid TypeとBeerbowerでどちらを使うかは微妙なところである。
Beerbower typeの式では極性項の交換作用項の前にCoeffという係数を使っている。これは不確定要素なので、精度が同等であれば、Euclid Typeを使う方が良いだろう。

今回は相関係数の大小で式を選んだが、本来はバラツキなどもう少し精密に検討すべきであろう。

また、水に対する溶解度の評価では、Beerbower Type の距離の式が優れていた。こうしたデータが集まってくると液液平衡の理解も進むと考えられる。


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