2024.7.31
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HSPiPにもSFBoxという機能が搭載されている。
ムービーも公開されているが、どうにも内容が理解できていない。どういうデータを集めればどういう解析ができるのか、わからないので、使っていない。
模式図を見るだけなら、無機物の分散に関して重要なことを言っているような気がするのだが。
塗料業界では、顔料とポリマーと溶媒の関係を正しく知るのはとても大事だろう。そこで塗料業界でもHSPを使うことは増えてきた。元々HSPはペイントが発祥なので、遅いとも言えるが。
それが難しかったのが、HSPはイオン性のものを取り扱うのが得意ではないからだ。
イオン性のものでも、挟み撃ち法(HSP値が既知の溶媒が分散させるか、させないかで決める)を使っている以上、取り扱える。しかし、溶媒のHSPは蒸発潜熱をベースに決めていくので、蒸発潜熱を持たないイオン液体のHSPを決めるのはとても大変だ。
塩基性顔料でも酸性顔料でも、溶媒ごとに良分散、貧分散を決めてあげれば顔料としてのHSP[dD, dP, dH]は決まる。でも酸性顔料、塩基性顔料の違いはわからなかった。
そこで、今回新たに開発したHSP距離の式を適用してみた。
顔料分散の溶解性パ ラメー ター による若干の評価
分散性パラメーターの決定、大日本塗料(株) 色材, 47 (1974) 47_411
古い論文であるが、ネットからダウンロードできた。
Type | Pigment | Sign | Remarks | Required HLB |
Inorganic | Titanium dioxide | TDO | Rutile Type Al-Zn Coated | 17-20 |
Inorganic | Chrome yellow | CRY | 18-20 | |
Inorganic | Iron oxide ochre | IOO | α FeOOH | 20+ |
Inorganic | Iron oxide brown | IOB | Fe2O3 | 13-15 |
Inorganic | Chrome vermilion | CRV | 16-18 | |
Inorganic | Carbon Black | CB | Furnace Type | 10-12. |
Organic | Phtharocianine blue | PCB | α -Type | 14-16 |
Organic | Brilliant carmine | BC | 14-16 |
8種類の顔料を42種類の溶媒とチューブミルを使って分散させた。グラインドスケール(0-100ミクロン)を用いて分散データを取った。μが小さなものが良溶媒と言える。
二層分離したものはXと表記されている。
各溶媒がどんなものかは原本を見ていただくとして、ここでは42番の水だけは解析から外したことをお断りしておく。
HSPの平均場理論
HSPはそのトータル分は、totHSP=sqrt(Hv/MVol)で計算される。そこでアミン、カルボキシル、水酸基が分子に導入され、Hv(蒸発潜熱)が大きくなったところで、分子が大きく(Mvol)なれば相殺されるので、上図の4化合物はほぼ同じようなHSPになってしまう。分子の平均値としてのHSPが同じHSPを持つ無機物を分散させる、平均場理論だ。最新のLumisizerやPulseNMRのデータ解析も3DのHSPを使っている以上、この4つの化合物で差が出るはずがない。
ただし、不思議なことに、3Dでも結構ちゃんと解析できてしまうので、HSPiPを販売している側としてはありがたいことだ。
塩基性顔料の分散
顔料に塩酸や水酸化ナトリウムの水溶液を加え、中和熱を測定するマイクロ・カロリーメトリーという技術がある(らしい)。塩酸を加えて発熱するなら塩基性表面を持っているということだ。それでは、そうした塩基性顔料にカルボン酸化合物を入れたらどうなるだろう? もし粒子表面にある塩基部分がカルボン酸で中和されて発熱するなら、加えたカルボン酸の分子量には依存せず、塩基点の総和の中和熱が発生するだろう。
そこで、YMB24pro4MIでは分子のSMILESの構造式から次の指標を作成する。
YMB24Pro4MIの酸塩基指標
この分割自体はHSP50周年記念講演会(2017年)にはできていたが、HSPの思想との整合性が取れなかった。
そこで思想は置いておいて、とりあえず、MI的に利用を始めることにした。
δD項も分割するので、全部で33式を全部作り、一番良いものを選び出すという方針でこの顔料を解析してみた。
HSP距離の拡張
3次元以上はSphereとは呼べないが、これまでの流れでSphereと呼ぶ。半径と呼ぶよりは閾値だろう。
ChatGPTの利用
PDFの書類を読んでテーブル作成と、溶媒のCAS番号を集めて整理してくれる。必要であればプログラムから扱えるようにJSON形式で出力してくれる。ありがたいことだ。
後はScoreの取り方を変えて片っ端から距離の計算を行うようのデータをYMB24Pro4MIに付属のWebアプリで作る。
Scoreの取り方
新しいデータフォーマット
距離計算用Webアプリ
データが準備できたら、新フォーマットのテーブルを距離計算用のwebアプリへ放り込む。計算は時間がかかるので、計算が終わったらビープおんがなるようにしてある。
HSPiPでもすぐに計算できる
Score0,1で評価したTiO2の分散をHSPiPで計算すると、Wrong In/Outは0になる。
つまり2層分離する、しないは、しないものを良溶媒としてScore 1と設定すれば、例外なく計算できる。
3D-HSPで十分と言われる所以である。
Score 1(良分散)の溶媒はμの実数を持つ
良分散の溶媒は、分散サイズμの実数を持つ。このμは小さいほど凝集しておらず良溶媒である。このμとHSP距離をプロットしてみる。
上図のように分散サイズとHSP距離には相関がない。
つまり2層分離するかしないかはHSPから予測できるが、より凝集の少ない溶媒を検討おすることはできない。
HSP距離と実数のScoreとの間の相関係数が高くなるHSPの中心を探索する。
Scoreに100/μの値を入れ、入力データを作成する。
HSPiPでもData Pointsオプションを使うと上図のように相関を持たせた探索が可能である。
GA法を使った最新の距離の式
水素結合の分割がμに影響を与えるか?を33式から評価した。相関係数が低くてもバランスの良い式はそちらを採用した。
TiO2
Chrome yellow
Iron oxide ochre
Iron oxide brown
Chrome vermilion
Carbon Black
Phtharocianine blue
Brilliant carmine
有機性の色素はδHの分割効果はほとんどないようだ。中心金属と有機部分が非常に複雑だからであろうか。
多くの場合は、Euclid Typeの式は距離の式に差が出ず、寝ている。
Beerbower Typeの方は傾きが立っている。
Euclid Typeの式は、距離がゼロの化合物を探索するのは簡単である。
それに対して、Beerbower Typeの式は用いる溶媒群を準備しておいて、得られた式から一番短いものを探索しなくてはならない。
また両者とも混合溶媒の設計は大変かもしれない。
顔料によって、最適な式のタイプが異なる、係数も異なる。
HSPiPのように1つの式で全てを評価するのとは異なり色々面倒である。
しかし、得られる洞察はとても深いと思う。
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