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02-Jan-2013

台   湾 (Ⅱ)         (77)
    
         (観  光)
 豪華旅運公司(観光会社)のバスに乗る。もともと白髪三千丈のお国柄、”豪華?”なバスの、もとはビロード風と思われる座席のシートは擦り切れて地肌が出ている。さしずめジステンバーにかかった犬の肌といった感じ。
 ガイドは、五十がらみのおじさん。日本語はペラペラ。「昔は学校の先生をしていたが、この方が生活に変化があっていゝ。何よりも、この方が収入がいゝ」というが、どうやら観光客を土産物屋に送り込んだリベートで笑いが止まらないらしい。バスが止まると、 ”お茶でもどうだ、コーラもサービスです”と手をとらんばかりにして店に案内する。

         (山)
 「日本は経済大国だが、東南アジアで二番目は台湾だ」とガイドが胸を張る。胸を張ってはみたが威張るものがない。「日本で一番高い山は富士山ーーー高さ知っていますか?。三、七七六メートル。台湾には三千メートルを越すそんな山が百三十以上もある。面倒くさいので名前のついていない山もあるくらい。ニイタカヤマなんか、ひとつでそんな峰が五つもあるーーー」。「日本で太平洋戦争開戦の暗号文が ”ニイタカヤマノボレ”だったのをご存知か?」。と低い鼻を高くした。

         (バスガール)
 若くて奇麗な台湾産のバスガール。この方はおしぼりを配ったりのサービス専門。日本語で歌ってくれた歌が ”かっぱからげて三度笠” ”湯島通れば思い出す”・・・レコードを買って覚える。”瀬戸の花嫁”も人気があります、という。
 観光客は日本人が一番多い。ガイドは日本語が出来ること、日本人にウケルことが第一条件。とにかく人間が余っている。うっかり評判が悪いと 、即 ”明日から出社に及ばず”。・・・だからガイドモもバスガールも必死のサービス。降りるとき握手しながら ”また来たら指名して下さい”とキャバレーみたいに名刺をくれた。

         (治   安)
 台湾は「工業報国」だから労働組合はない。ストでもしようものなら、治安を乱したカドで銃殺というが、街の中にそんな暗いカゲはない。なるほど治安は行き届いていて、スリ・泥棒・空き巣の心配は全くないと言うし、街を歩く女性もミニスカート、パンタロンと思い思いながら、こざっぱりしていて子供の服装も日本なみ。小雨にけむるキールンで相合傘のアベックもオツなもの、ひとつの目標に統制されながら、結構自由を楽しんでいるとみた。
     
        (故宮博物館)
 この国で初めて見る珍しい自動開閉ドア。中国数千年の歴史を彩る秘宝が陳列してある。表に出ているのはほんの一部で時々入れ替えるそうだが、そのたびに欠かさず観ていっても全部見るのには何年かかかるという。
 背の高さくらいのビャクダンの枠に、ヒスイの透かし彫りを嵌めた八双の衝立。骨董的価値を別にして、本体だけでもいくらになるのか、値段の見当がつかないという。

 小指の先くらいの小さな象牙に屋形船が細かく彫りあげてある。ケースの外に大きな拡大鏡。 ”ただの船じゃありませんゾ。これで覗いてミイ ”というわけ。その拡大鏡で覗いてみると、何とその屋形船の中でマージャンがリャン卓、他に見物人まで彫ってある。

 仙人みたいな老人が牛に乗っている形の木の根っこ。よくもまあ、ずばりこんな形の根っこがあったものだと感心したほうが浅はかであった。出来上がりをこんな形にしたいという枠の中に木の根を這わせて育て、その形になるのを待って作ったものだと言う。親子三代はかゝったろうといった逸品がさりげなく鎮座している。

       香   港 (Ⅰ)         
      
        (ス   リ)
 国際都市香港は、スリと暗黒組織の巣窟、上陸前のオリエンテーション。・・・地図に赤枠をして「ここは危険地域、絶対に足を踏み入れるな。腕に自信があっても手を出すな。明日は河に浮いているハメになる。スリは一人と思うな、一人が足を踏んだりして気をそらす、一人が抜き取る、一人が運ぶ・・・だからスリーと言うんだ。悪いのは男ばかりじゃない、ウットリするような美人スリもいる」。
 「我々はこうやってオリエンテーションをやっているが、相手は国際組織、どんな船からいつどんな団体が降りてくるかぐらいの情報はとっくに入っている。”カモガジャンボでやってくる”相手も今頃はオリエンテーションをやってるはず」ーーーとは念が入っている。

        (看   板)
 とにかく、めちゃくちゃな街である。豪壮なビルがあるかと思うと,船上生活でまだ陸に上がれない民族もある。どこかの団結小屋みたいな家が点々と山腹にへばりついている。横に、赤坂離宮みたいな妾宅。バスも電車も二階建て、看板も英語・日本語・中国語(右書き・台湾系)(左書き・中共系)とワレがオレがで競い合っている。ビルの屋上に「毛主席万歳」と真っ赤な看板。

         (車)
 交通信号は車向き、歩行者専用なんて細かい神経はない。人間は車の動きの合間を縫ってそゝくさと動く。
 マイクロバスの乗り合いタクシーが繁盛している。平日・土・日・祭日と、同じ区間でもその日の需要によって値段が違うと言う。運転席の前に「今日はナンボ・・・」というパネルが立てゝある。

         (土  地)
 香港は、山も海底も花崗岩。地盤がいゝのでビルも橋も基礎工事が楽だという。なるほど脚がおそろしく細い。土地がなければ埋め立てとなる。「政府が埋立て工事の入札をした。金額はともかく、それだけの規模の工事じゃ二十年かかるとイギリス。私のところじゃ十五年でやりましょうとフランス。ところが日本が八年の契約で落札してこれを七年で仕上げた。私とこのエレベーターも日本製で、何年とか無事故。九龍から香港に通じる海底トンネル、海底といっても底は花崗岩。関門海峡のように海の底を掘るわけにはいかない。海底の上に車の通れる大きさのパイプをつないで置き、回りをコンクリで固めた。このパイプが日本製で、工事は何とか組。日本の技術は優秀です」とベタぼめ。

 そんなところだから、何しろ土地が高い。「棺桶分が百二十万円。私なんか死んでも埋めてもらうところがない。そんな人のために政府が土地を借してくれる。ただし六年間。六年もたてば骨だけになるだろう、そしたらその骨を掘り出して後は自分の方で何とかせえ」とは、仏様も浮かばれない。

         (ポ リ ス)
 台湾と違って香港は治安の保障なし。半ソデ・半ズボンの高校生みたいな可愛いポリスが歩いているが、市民は全く頼りにしていない。「悪漢と渡り合ってピストルの撃ち合い ”やった”と行ってみたら倒れてたのはポリスだった」。「あのピストルは市民を守るためでなく、自分を守るために吊げているんです」とガイドが笑った。

        (立ち小便)
 観光客のために”香港の街を奇麗にしよう”、という運動が何年か前から実施されている。紙くずも煙草の吸殻も路上に捨てゝはならん、立小便などもってのほか。見つかると五千円の罰金。開いている前ボタンの数で金額が決まる、という。”ファスナーはどうする?” ”それは物指しで測ります”。・・・と、これは冗談にしても,街路樹に十糎くらいの丸い板に犬の絵が描いてあって、下向きに→の標識が吊るしてある。「あれは?」・・・「犬の散歩で、この木は犬ションOKのマークです」。とは徹底している。

        (ワ イ ロ)
 車の事故、立小便、ゴミ捨てなどの罰金をチョイと袖の下で大目に見てやる。この収入がバカにならないので、ポリスは専らその方を見つけるのに血眼。だからポリスの一寸したのは塀つきの家に住んでいる。・・・と、こゝでもポリスの悪口。
 消防車が火事場に駆けつけてきたが、握ラセルまで反対の方に水をかけていた、なんて笑い話を方々で聞かされる。火のないところに煙は立たぬーーー大変な街である。

(76・S・51・2)