講義資料
非常勤講師:山本博志 講義資料
シミュレータについては,Pirikaで公開したYNUシミュレータを使うのはやめた。化学工学の学生には,3次元構造がどうのこうの,というのは限られた時間では無理があるからだ。2次元構造から自動的に3次元構造を生成し,36種類の物性値を計算するYMBシミュレータを使って講義する。 (2013年も行います。)
YMBシミュレータ
分子を描くと様々な物性を推算するソフトウエアー。ブラウザー上で動作する。プログラムの言語はHTML5を用いているので、HTML5対応のブラウザーをインストールする必要がある。
Windows PC Chrome, FireFox, Safariなどがおすすめ。(IEはHTML5をサポートしていないので注意)
Mac Safari, Chrome, FireFox
iPad Mobile Safari (分子軌道計算には能力不足?)
2次元構造から原子団寄与法を用いて
Formula:分子式、MW:分子量、BP(K):沸点、MP(K) :融点
AntA AntB AntC:アントワン蒸気圧定数
Tc(K) Pc(Bar) Vc(cm^3):臨界定数
logKow:オクタノール/水分配係数、logS:水への溶解度
log(HenryC):ヘンリー定数
Mol Volume:分子体積、Mol Surface:分子表面積、Ovality:卵形度
Density:密度、Hv(@BP) :沸点に於ける蒸発潜熱
Hansen totHSP、dD、dP、dH:ハンセン溶解度パラメータ
Heat Capacity(Liq.):熱容量、 log Viscosity(Liq.);粘度
Thermal Conductivity(Liq.):熱伝導度、Surface Tension(Liq.):表面張力
Refractive Index:屈折率、Heat of Formation:生成熱
Max plus Charge atom:最大+電荷、 Min minus Charge atom:最小ー電荷
変数選択重回帰法プログラム
多数の変数から物性予測式を構築するプログラム。動作環境はYMBシミュレータと同じ。
YMBが推算する36個の変数のうち,どの変数とどの変数がどう相互作用してどういう結果を出しているかを定量的に解析するソフトウエアー。解析は相関係数の高さを用いてい判断されるため化学のセンスが重要になる。
講義では,横浜国大の卒業生が就職した会社の様々な素材,プロセスに対して分子レベレルのシミュレーションをする事によってどんな事が判り,どう役に立てられるかを解説する。
以下,講義の資料などは授業で伝えたURLからダウンロードし,実際に自分で計算してみるように。
2011年講義
第1回講義(2011.10.7)
シール材(パッキン)の耐溶剤性が溶媒分子のどんな物性によって決まっているかをYMBシミュレータを用いて検討する。分子を描いて,2次元構造から得られる28種類の物性値と3次元構造から得られる8種類の物性値を得る。目的の物性がどのような物性値の組み合わせで表現されるのかを,変数選択重回帰法プログラムを使って解析する。パッキンのような高分子材料を製造するプロセスの合理化の考え方を学ぶ。有機過酸化物の分解速度の溶媒効果を考える。ある物性値(今回の例は誘電率)があったときに、その物性値の意味合いを正しく理解する。
授業で使ったExcelの資料
シール材パッキン(Excel)
パーオキサイド(Excel)
誘電率(Excel)
No1. 講義パワーポイントのPDF
第2回講義(2011.10.14)
エネルギー関連。リチウム2次電池(LiB)に用いられている素材について,分子レベルの解析を行う。LiBに使われる溶媒の引火点,発火点を解析してみる。環状,鎖状カーボネートの物性の違いを理解する。負極バインダー樹脂の耐薬品性がどのように解析できるか理解する。負極材のうちフラーレン(C60)を抽出精製する際の溶媒について理解する。MDの基本原理とLiB用の触媒について計算してみる。
授業で使ったExcelの資料
引火点,発火点(Excel)
バインダー樹脂の耐溶剤性(Excel)
フラーレンの溶媒探索(Excel)
No2.講義パワーポイントのPDF
第3回講義(2011.10.21)
前回やり残した省エネルギー関係。ポリカーボネートを使った軽量化、炭素繊維を使った軽量化では、こうした素材の耐溶剤性、どのようなポリマーマトリックスに炭素繊維が分散しやすいかなどを前回のフラーレンの溶解性に絡め解説した。またLED照明のエネルギー効率をさらに向上させるパターニングについてレジストポリマーの設計方法、現像液の考え方を学んだ。環境関連の技術としては、シックハウス原因物質のHPLC分析法、活性炭吸着、吸収塔、大気寿命の考え方を学んだ。また原子団寄与法による物性推算について学び、自分だけの推算式を構築する方法、またその限界について解説した。
授業で使ったExcelの資料
活性炭の吸着データ
アルデヒド類のHPLCデータ
LiB溶媒の粘度
エポキシの炭素繊維バインダー性
原子団寄与法
化合物の大気寿命
ポリカーボネート耐溶剤性
レジストポリマー
シックハウス
VOC化合物とYMB物性推算検証
No3.講義のパワーポイントPDF
第4回講義(2011.10.28)
医薬,化粧品,食品関係で必要になる分子レベルのシミュレーションについて学んだ。ペットボトルの酸素透過性は高く飲料用には酸化防止剤としてのビタミンCの添加が必要になる。お茶やワインのフラボノイド類と酸化防止剤の関係を学んだ。ビタミンCの溶媒に対する溶解度の推算法,イブプロフェンの溶解性を温度まで含めて推算し再結晶操作の基礎を学んだ。医薬,化粧品,食品関係ではHPLCによる分析が非常に重要であるが,YMBを利用すれば非常に簡便に保持時間の予測式が得られる事を解説した。超臨界二酸化炭素への溶解性の予測式をYMBを使って検討した。包装用材料(ポリマー)の酸素透過性が溶解度パラメータから予測できる事を示した。
授業で使ったExcelの資料
カルボン酸のHPLCデータ
食品用酸化防止剤のHPLCデータ
アスコルビン酸の溶解度
アレルゲン化合物のガスクロデータ
イブプロフェン溶解性の温度依存性データ
LD50データ
食品封止材ポリマーの臭気溶解性
超臨界二酸化炭素の溶解性データ
アントシアニンHPLCデータ
クレオソートLD50データ
化粧品中の防腐剤HPLCデータ
ポリマーの酸素透過性
No4.講義のパワーポイントPDF
第5回講義(2011.11.11)最終回
蒸留を行う上で重要な気液平衡について学んだ。ASOG法による構造のみからの気液平衡推算、Van Laarのパラメータがある場合の気液平衡計算、そしてYMB法でMargulesパラメータを推算する方法を学んだ。そして沸点が近い化合物を分離する抽出蒸留の溶媒選択法に関して説明をおこなった。次にGreen Solventsとして環境にも人体にも優しい溶媒として、エーテル、エステル、アルコール基のみを含む溶媒を用いて、マニュキュアの除光液の分子設計、インクジェット用のインクの設計、またYMBの推算精度をこれらの溶媒の文献値を用いて検証した。次に反応の加速ということで、Diels-Alder反応の反応速度の溶媒効果、マイクロウエーブを使った反応である任意の基質があったときにそれがどれだけMWを吸収するかをYMBを用いて検討した。最後に抽出操作と抽剤の最適化について解説した。
授業で使ったExcelの資料
ブタジエン-DMF溶解度
ブタジエンーNMP選択率
酢酸セルロース、Mark–Houwink パラメータ
ニトロセルロース、Mark–Houwink パラメータ
Diels-Alder反応溶媒
抽出蒸留
Magulesパラメータ
マイクロウエーブ加熱
No.5 講義のパワーポイントPDF
2012年講義
講義の内容を再構築したものをこちらのページで公開しています。