バランス (18)
模型飛行機は、他の部分がどんなによく出来ていても、主翼の前3分の1のところに機体全体の重心がくるようにバランスがとれていなければ、うまく飛ばないものである。
さて、出来上がった飛行機の重心を支えてみる、機首が下がる。これでは突っ込んでしまう。そこで尾翼のほうに釣り合うだけの重さのものを付け加えればバランスがとれてめでたしめでたし。模型飛行機を作るときによくやるテである。
ところが、これでは前が重かった分だけ後ろを重くしたのだから、機体全体が重くなったわけで、動力ゴムが同じであれば航続距離が短くなる勘定である。
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会社でも 、仕事上バランスがどうこうということを良く言う。そして、物事を決する場合、このバランスがとれているかどうかが決め手になることが往々にしてある。
この場合、Aが下がっているから、Bを下げる事によってとれるバランスならば、BをそのままにしてAを上げる努力によってもバランスはとれる筈である。
ところが往々にして、われわれはA・Bのバランスをとることにのみ心を奪われて,取り敢えずの調和を保つために、高いほうを下げて低いほうのバランスさせる安易な方法をとろうとしがちである。
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もちろん、それでもバランスはとれる訳だが、積極的に高い次元に低い次元のものを上げる事によってバランスさせる努力を忘れてはならない。
十 姉 妹
ある日曜日の朝、軒先に吊していた鳥篭の十姉妹が野良猫に狙われ、篭が落ちた拍子に二羽のうちの一羽が飛び出してしまった。
篭の中で生まれ篭の中で育ったひよわい十姉妹だから、自然の中で思い切って飛ぶ事も出来まいと思っていたが、子供と一緒に捕まえようと網を持って追いかけ回しているうちに、隣の家の木からまた隣のうちへ・・・そうこうしているうちに、とうとう行方を見失ってしまった。
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それこそ生まれながらの 「篭の鳥」。何が敵かも知らないまゝ自然の中に飛んで行ってしまって、まずは助かるまいと諦めていたその十姉妹が、夕方になったら自分で篭のところへ戻ってきたのである。
捕まえよう、捕まえよう(捕まって元のカゴの中の生活に戻ることが、おまえ自身の安全な生活のためになるのに、何故逃げるんだ)、と追いかけ回しているときはどんどん遠くへ行ってしまったのに、諦めて忘れた頃に、気がついてみたら、残った一羽の篭の上にちゃんと戻ってきたのである。
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「旅人のマントを脱がせるのに風と太陽が力くらべをして、結局は脱がせようとあせった風は、かえって旅人のマントを固く閉じさせ、旅人に時間をかけて微笑みかけた太陽が結果的にマントを脱がせることが出来た」という子供の頃読んだ童話。
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とんだ日曜日のハプニングから、あらためて力ばかりではどうにもならない情(こころ)というものを小鳥に教えられた。世の中の人間関係のあれやこれやもまたかくの如きか。
野 球
TVの中継を見ながら子供二人の会話。
妹「お兄いちゃん。野球ってどうして九回で終わりなの?。どうして十回ま
でやらないの?」
兄「野球は九人でやるだろう。だから一人一回ずつという意味で九回にして
あるんだよ」。
妹「そんなら、十人にして十回までやればいいじゃない」。
兄「守るところが九つしかないもん、十人だと一人あまっちゃうじゃない」。
妹「そんなの簡単じゃない。四ルイを作ったらいゝじゃない」。
兄「・・・?」