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悲しき酒(片々草抜粋)

 

 

 

 

 

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02-Jan-2013

公 園 で            (2)
  
 最近の若い男女は、あんなにして手をつないで相手を捉まえていないと不安なのだろうか?。
 十三夜という歌がある。
 「・・・ゆきずりに /ふと見あわせる /顔と顔 / 恥ずかしいやら /嬉しやら /あおい月夜の十三夜・・・」。こんなほのぼのとした情景はもうなくなってしまったのだろうか。

  先日、上司Y・Tさんとの会話。
「あなたも、最近の若い男女を見ていると、いゝなあ、もう一度あんな時代に若返ってみたいなあと思われるでしょう」。
「イヤ、わしは現在に満足しとるで。大体、今どきの若い夫婦なんてのは見ておれんな。この前もゴルフに若いのを誘って、朝早く駅で待ち合わせたんだが、奴らカアチャンに朝めしを食わして貰っとらんのだな。朝は早いし、遊びに行くんだし、日曜日ではあるし・・・というんで ”一人で起きて出かけるから寝ていていゝよ”とか言ったんだろう。まあ、その気持ち分らんじゃないが、ワシらそこへいくと、出張に限らずゴルフだろうが何だろうが、ワシが出かけるとなれば、六時だろうが五時だろうが、ちゃんと先に起きてあったかいご飯にミソ汁を食わせてくれるデ・・・。だからワシは、今の若いもんをうらやましいとは思わんな」。

         駅  で             )

 駅の構内アナウンス、・・・私鉄・国鉄を問わず男の声がほとんどである。あれを劇場のアナウンスみたいに女性の声で出来ないものかなあ。そういえば改札口の切符切りだって、切符売り場だって、女性のほうがずっとなごやかでいゝんじゃないかなあ。

 大抵のホームにキオスクという小さな売店がある。ミルク・ガム・タバコ・新聞・ビール・・・いろんなものを売っていて便利だが・・・あそこで物を買って ”有難うございます”と言われた経験は一度もないな。競争相手のいない商売と言うものはあゝなってしまうのかなあ。

          振り子              
 
 電極にプラスとマイナスがあるように、世の中すべてのものに反対の立場がある。その一方が他の一方の成立発展を阻害するかのように見えるが、実はさにあらず、その反対の立場の ”何かがあるために、もう一方のものが成立・発展するということもある。

 世の中、何にしても何かひとつの色合いだけで埋め尽くせば、めでたしめでたしで、何の争いもなく、波乱もなくすべて順調であろうが、それでは、何も考える事もなく、進歩も発展もないだろう。反対の立場があるからこそ、お互いが切磋琢磨して進歩発展していくのではなかろうか。
 時計の振り子も真ん中では止まってしまう。洋服の色にしても然り、真っ赤な服に白いボタンをつけるから赤も白も引き立って服全体が引き締まるのではないか。

 甘い汁粉を作るのでさえ塩を入れるではないか。

         人さまざま            

 
 晴れた空に一点の雲が出たのを見て ”雨が降るのでは・・・”と心配する人。曇った空に少しの晴れ間を見て ”ああ、これで雨が上がるかもしれない”と思う人。楽観と悲観・・・人さまざま。

 然し、銚子の酒が半分になったとき、 ”ああゝ、もう半分飲んじゃった”と思う人より  ”あゝ、まだ半分残っている”と思える人の方が幸せであることは間違いない。

(68・S・43・8