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02-Jan-2013

序   列           (20)
  
 相撲界で場所ごとに発表される番付表の真ん中に「蒙・御免」と大書してあるのをご存知でございましょう。
 相撲界では、どんなに年が若くても本場所での星勘定さえよければ番付は上がっていきます。とにかく土俵の上の勝負だけがすべてを支配するのでございます。そこで、「他の社会に出ればどう評価されるかは存じませんが、私んとこの社会では勝ち負け一本で序列を決めさせていただきます。その結果、今場所の横綱はOO山でございます、大関はXX川に致しました。・・・こうして虫メガネまでの序列・番付を決めました」。
 そういう意味で、番付表の中央に「御免蒙る」と、天下に断ってあるのだそうでございます。

 近頃、猛烈社員がどうの、実力主義がこうの、ということを仄聞いたします。
 実力主義とは一体どういうことなのでございましょうか。われわれサラリーマンの評価は、お相撲さんの世界とは違って、力だけではありません、もちろん頭の切れ味だけでもございません。
 知識・技能・責任感・統率力・協調性・順応性・・・etc。その他沢山の人間的な諸要素を綜合したもので初めて評価できるものなんです。
 何故なら、私たちサラリーマンの社会はチームプレーであり、組織としての綜合戦力で価値づけられる社会だからでございます。決して相手の足をすくっても、とにかく這わせれば白星がふえるというものではございません。

 サラリーマンの実力とは、いったい何によって決まるのでしょうか。
 たとえば、同僚が栄進していくのを見て ”確かにあいつは俺よりできるからな ”と心底思える人がサラリーマンの中に何人いることでしょうか。
 心の底にチロチロ燃えるジェラシーの炎を ”彼は俺より年が多いもんな” ”あんな田舎に転勤させるんじゃ昇格させなきゃな” ”あの課にはもう彼より上の年次の人物がいないからな”etc・etc。いろんな要素を指折り数え分析綜合し ”まあ、仕方がないさ・・・”と自らを慰め自分を正当化し、ジェラシーの炎に時間の水をかけながら小さくしていくのが精一杯なのではございませんでしょうか。

 哀しいかな、人間には彼が自分を抜いた事を、彼の ”実力”という見方はできないのでございます。たとえば、ある会社で、アンケートの結果、”もっと実力主義の人事をとるべきである”という意見が過半数を占めたといたしましょう。皆がそんなに望んでいるのなら、従来の秩序を保ってきた、いわゆる広い意味の年功序列一切の要素を抜きにして序列を定め、”明日からはこれでまいります”となった場合どうなんでしょうか。

 従来の秩序を形づくってきた一切の要素を抜きにしていゝから、一から百までの序列を付け直しなさい、とおっしゃるなら、それはさして難しい問題ではございません。
 ただし、それは、わたしが、これが会社にとっての実力だと思ってつけたものでして、いくら天地神明に誓いましても、アナタがつけた序列でない以上、アナタの位置を含めてアナタの納得のいくものではございますまい。人は誰でも自分が人より劣っているとは思えないのでございます。

 だから、現在の方法が良い、といっているのではございません。新しい時代の息吹に水をかけようというのでもございません。ただ、人間集団の中で、自分さえ良ければよい、という考え方ではなく、自分を含めた集団がどうすれば秩序をもって繁栄できるのか、その方法を冷静に考える必要があると思うのでございます。

 巷間のゲバ暴徒のように、 ”俺の気に入らないから、ただブッ壊せばいゝ”というものではありません。社会というものはもっと大人なのでございます。
 ”ウワバミが腹が空いたので腹立ち紛れに、自分のシッポをかじった。もう少し、もう少しとかじっているうちに、自分で自分を食べてしまい、残ったのは口だけだった”という落語のオチにならないように、と思う今日この頃でございます。 
(70・S・45・2)