報 道 (24)
いささか旧聞に属するが、一九六十年代の掉尾を飾った話題、アポロ十一号の宇宙飛行。世界中の耳目を集め、アームストロング・オルドリン・コリンズの三飛行士は一躍世界のスターとして脚光をあびた。
アームストロング・オルドリン両飛行士が人類初の足跡を月に印したとき、コリンズは、一人,月の周りを回り続けていた。彼らを地球に連れ戻すために・・・。
すべての報道機関は月に降り立った二人にスポットをあて、彼らの一挙手一投足を細大洩らさず世界中に報道したが,その陰にかくれて、ともすればコリンズについての報道は少なかった。
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彼らは無事地球に生還し、そのまま空母ホーネット上に用意された隔離室にはいり、小さな窓ごしに大統領から歓迎の挨拶を受けた。
TVに映し出されたその時の情景を私は忘れられない。コリンズが前面に立ち、その横にオルドリン、そしてその二人の後ろから顔だけをのぞかせて挨拶しているアームストロング船長。
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アームストロング船長は、意識して二人を・・・特にコリンズを歓迎の前面に押し出したに違いない。彼は「長」として、誰よりもコリンズの役割と三人に対するそれまでの報道の扱い方を知っていただろうからーーー。
一瞬の一分のミスが、即、死につながる大任を「長」としての役割で見事に果たし、懐かしい地球に生還しながら、その最初の華やかな歓迎の檜舞台では、部下を前面に立て、しかも、ともすれば報道の目から忘れられがちであったコリンズを前面に立たせた。その心の余裕。
「長」とは、かくあらねばならぬ、と思う。
孝 行
「近いうちに母が会社や独身寮生活がどんなものか、北海道の観光を兼ねてやってくるんですよ」。「それで、私はね、今洗濯物やつくろいものをせっせと溜めているんです。母がきたら、どさっとそれらを出してやるんです。そしたらーーーまあ、こんなに洗濯物を溜めて。オヤ、こんなところがほころびたまゝでーーーと、母は短い滞在期間を割いてせっせと手馴れた手つきで片付けてくれるでしょう」。
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「もし私が、何もかもきちんと、全く母の入り込む余地のないような生活をしていたらどうでしょう。きっと、母は淋しい思いをするに違いありませんものね。」
新入社員、T・Y君の着任早々の話。
返 事
「ハイ]という返事は気持ちのよいものである。女子社員に限らず、例えば電話をかけながら ”ハイ、ハイ”とうなずきながらメモを取っている姿が好きである。
「ハイ」は「拝」に通ずる。もっとも同じ「ハイ」でも歯切れ良く、語尾を少し上げ気味に切って発音するから美しいのであって、「ハイー、ハイー」では馬子になってしまう。子供の頃親の言いつけに不承不承「ハイ・ハイ}と言ったら「返事は一度でよろしい。馬をひっっぱってるんじゃない」とたしなめられたことを思い出す。
何によらず、ものは形だけでなく、内に秘められた ”こころ”が大切ということか。
ごまめの ねごと (Ⅱ)
(選 択)
子は、親を選べない。
部下は、長を選べない。
(未 亡 人)
”未だ亡くならない人”。ーーーご主人が亡くなったのに、いつまでも
恋々と生きている人と言わんばかりで嫌な言葉だな。
( 字 )
明日という字は 明るい日と書くのネ
好きと言う字は 女の子と書くのネ
貴方という字は 貴いお方と書くのネ
仕事という字は 事に仕えると書くのネ
親という字は 木の上に立って見ると書くのね
協力と言う字は 三つの力をプラスすると書くのネ