う ち の 宿 六 (54)
( 健 康 法 )
いささかのご参考になればと存じ、「不惑」を越したウチの宿六の「迷いぱ
なし」の健康法について、その言行録をご紹介致します。
(山の神・敬白)
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(その一) もう十年も昔になりましょうか、出張先から,蓋に小さな穴を
あけたお菓子の缶を大事そうに持ち帰りました。中にパン屑と、
小さなホタルのような虫。・・・「これを、生きたまま飲むと、
健康上すこぶるいゝそうだ、しかもいくら飲んでも、この虫にパ
ンくずを与えておくだけでどんどん増えるのだそうだ・・・」。
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(その二) 「二日酔いしないヒケツを聞いてきたよ。 ”酢一合に、生タマゴ
一個をつけておく、一昼夜経つと卵の殻がグニャグニャになる。
これを引きあげその黄味と酢をかき混ぜ、毎朝杯に一杯ずつ飲む
んだ・・・」。
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(その三) 「人間、幼児の頃は自分の足の指をしゃぶって遊ぶくらいに体が
柔らかい。それが長ずるに及んで固くなり、手の指先さえ床に着
かなくなる。それが、この本に書いてある真向法という体操を行
えば、体の中心「腰」が鍛えられて健康になるそうだ・・・」。
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(その四) 「最近は物質文明に毒されて人間が軟弱になっておる。寝るとき
は布団は一枚あれば十分で、その下にマットを敷くなんてのは、
背骨が曲がるもと、だいたい西式健康法では、わざわざ板の上に
シーツを敷いて寝るくらいのもので云々。俺には家中で一番薄
い布団を敷いてくれ・・・」。
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(その五) 「人間、風邪を引くか引かんかは、精神の役割が六分だが、常に
心がけて肌を鍛えておけば,風邪など引きたくても引けんもんだ。
風呂に入った時水をかぶる。そして、タワシで全身をこする。そ
うすりゃ血行がよくなるし、肌も滑らかになる。おまけに風邪を
引かなきゃ、これが一石二鳥というもんだ・・・」
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(その六)「人間にはビタミンCが健康上一番重要なものだ。そしてそのVC
はミカンの皮の中に大量に含まれておる。そこのところを剥いて捨
て、中身だけを食するというのは本末転倒だ、ミカンは皮をこそ食
するものだ・・・」。
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(その七) 「車のエンジンの性能テストで、エンジンはそのまゝで排気関係
をいじっただけで、走行性能が何%だか上がったそうだ。人間の
心臓と肺の関係も理屈はエンジンと同じ、吸うためには吐かなけ
りゃならん,如何に沢山排気するかが、如何に新しい空気を沢山
吸うかに影響する。大体、 ”呼吸”という字は,”吸う”という字の
前に、吐くという意味の ”呼”という字がきていることからも判る
だろう。人間生れ落ちた時、最初にオギャアーというーーーまず
吐くことから始まって、死ぬときに ”息を引き取る”というが、最
初に吐いたのだから最後に吸って一巻の終わりという訳だ。毎日
意識しないで行っている呼吸に、”吐く”という意識を持つのが健康
の第一歩だ・・・」。
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(その八) 「コンブの中には、ヨウドという大事な養分が含まれている。だ
から日本人は生活の知恵で昔からこれをいろんな形で食している。
ところが、その大事な養分が凝縮している根の部分を捨てるのは
理に合わんことだ。この根コブを一個一合の水に入れてひと晩お
く、そして毎朝この水を一気に飲み干す。高血圧によしベンピに
よし・・」
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(その九) 「ニンニクが体のためによいことは誰でも知っているが、あのニ
オイのためにどうしても敬遠しがちになる。ところがオイ、この
本にニオイを抜いて、しかも滋養を抜かない食し方が書いてある。
今度ニンニクと焼酎、それに氷砂糖を買ってきてくれ・・・」。
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さて、このうちどれとどれが現在も続いているかは、読者の皆様のご想像におまかせするとして、人間関係がナンとか申しては、毎晩吐くほど飲んできて、たまの家での夕食に ”一日くらいお酒を抜いたら?”・・・に、 ”これは俺のノイローゼ解消の薬と思え。それに人間一旦緩急ある時のために平素から鍛錬を怠ってはならん。戦国の武将も言っておる「治にいて乱を忘れず。」云々。
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あれは、いつ買ったものだったでしょうか、庭の物干台に錆びて下がっているエキスパンダーが寒風に揺れている今日この頃でございます。
(74・S・49・3・43歳)