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悲しき酒(片々草抜粋)

 

 

 

 

 

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02-Jan-2013

ふんぎり             (68)
  
 野球はツーアウトからというけれど、本当に不思議にツーアウトから点の入るケースが多い。
 何故か?。・・・ツーアウトになるとランナーが思い切りよく走るからだろう。われら草野球でも、”ツーアウトになってバッターが打ったら、ゴロでもフライでもとにかく全力で走れ”くらいのことは知っている。その思いっきりのよさが、しばしば得点に結びつくのではないか。

 水泳の飛び込みや、野球の滑り込みの練習だって、ためらいながら、おっかなびっくり、おそるおそるではかえってケガをする。ここは一番思い切り目をつぶって飛び込む(滑り込む)から成功するのであって、そこらあたりのふんぎりの良さ、思い切りの良さというものが大事なことのように思うが、如何?。

         安   全           
  
 毎朝の通勤にバス停でバスを待っていると目の前をいろんな車が通る。どんどん素通りしていくのだが、近くに信号機があるので、時に数台数珠つなぎに並んで止まることがある。
 その数分の間、パンを齧っているのがあるかと思うと、新聞を読んでいるのがいる、時にカミソリでひげをそってる奴がいる。・・・世の中ってそんなに忙しいのだろうか。

 バスの運転手が直進しながら対向車線を来る運転手に、すれ違いざまお互いに片手を上げて挨拶をする。同じ会社のバスであってみれば、それも人間関係上必要なことかもしれないが、十字路で向こうから来たバスが、右に曲がろうとする、こちらのバスも右に大きくハンドルを切る、そんな時まで片手を上げて会釈をしているのをみていると、”職務遂行中はもっと真剣に職務に熱中してくれ、”といゝたくなる。

 「安全第一」という言葉は、単に言葉の語呂のよい標語なのではなくて、「安全」はすべてのことに「最優先」するという事を忘れないで欲しい。

         校   風           
  
 会社の採用関係の仕事で高校を十数校訪問した。受付で名詞を渡し応接室に通される。廊下で生徒とすれ違う。応接間でお茶が出る。担当の先生が現れる。挨拶をして用件を話す。どの学校でも、ハンで押したように同じことの繰り返しなのだがーーー。
 一日のうちに数校回って感じることは、学校ごとに雰囲気と言うか校風と言うか、その学校全体を包んでいる空気みたいなものがあって、すべてのものが同じ方向で統一されているなあ、ということである。

 玄関に立つ、向こうから受付の小窓を開いて用件を尋ねてくれるような学校はまず間違いない。生徒は廊下で目礼するし、先生は帰りの車のことまで気を遣ってくれる。お茶の出し方も丁寧で気が利いている。
 さて、わが日石の社風はどうだろう?。

         盆   栽            
  
  A 「盆栽?。まだ若いのに年寄りみたいな趣味だな」
  B 「いや、初めは俺もそう思っていたんだけど、ふとしたことから始め
     てしまって・・・」
  A 「だいたい、すくすくと伸びたい木を小さな鉢に移して、あっちを切
     ったりこっちを捻じ曲げたり・・・。どうも木をいじけさせて喜ん
     でる、その精神が気に食わんね」。
  B 「いやあ、盆栽は愛情なんだよ。毎日欠かさず水をやる。陽にあてゝ
     やる。寒いときには囲ってやる・・・。それで相手は何も言わないけ
     ど、こちらの愛情に確実に応えてくれる。それが嬉しいじゃないか」。
  A 「だいたい、いゝ若いもんがだな。もっと地球的な規模で物事を考え
     ろよ」。
  B 「小さなものゝ中に、大きなものを秘める・・・。この醍醐味が判ら
     んのかなあ。見てくれ、あの松一本、これだけ育てるのに十年かゝ
     ってる。逆に言えば、この小さい松をあかず見つめて、出てくる芽
     を生かし、無駄なものを整えながら、十年先の枝振りの構想を練る。
     愛情と忍耐と長期構想。その奥深さなんだなあ」。

(57・S・50・5)