なれる (70)
”なれる”という言葉に「慣れる」と「狎れる」の二つの字がある。
辞書によると、”「慣れる」は習慣・熟練すること。「狎れる」は、親しんで軽んじる・なれなれしくなること”とある。
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仕事には,慣れなければいけないが、狎れてはいけない。ところが現場だけではなく、事務所でも、人間関係上この「狎れ」をちょいちょい見かけることがある。人にはいくら親しんでもよいけれども軽んじてはいけない。とくに目上の人に対しては、よほど心構えをしっかりしていないと、親しみをもって接してくれる上司に対してはついうっかり「狎れ」た態度を取りかねないのである。
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あなたは、上司が近づいて話しかけてきた時、椅子から立って話を聞いているだろうか。上司と話をするとき、椅子の上で足を組んではいないだろうかーーー?。
編 隊
戦争中日本本土は、米軍のB29の編隊にめちゃくちゃに爆撃された。日本軍の高射砲の射程外の高さで悠々と、それこそ銀翼連ねて・・・お見事といゝたいような堂々たる編隊であった。
このB29が何機とかの編隊を組むと,一機に何門とかの機関砲があるので、(飲みながら聞いた話なのでオボロゲで申し訳ない)わが軍の戦闘機が死に物狂いで、どんな角度から肉薄しても全く死角がなく、どうにも手のつけようがなかったのだそうだ。
ましてや地上の高射砲の射程外、わが高射砲のサクレツ範囲は五十メートル。破片が当たってもかゆいくらいのショックだったろうという。
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話は変わるが、シマ馬は危険に遭うと、集団で頭を中にして輪になり全員(?)で外に向かって蹴るという。そうすりゃライオンだって何だって近寄ることも出来ない。さしずめシマウマはB29流というところかーーー。
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何に寄らず危険に遭えば、あるいは危険が予測されれば、それぞれの知恵で仲間が結束してその危険から身を守ろうとするのに、わが石油業界はオレガオレガ・・・一体どうなって行くのだろう?。
ハ イ ミ ス
「・・・あなたはとやかく言うけど、私達にしてみれば ”主人”という言葉に胸をときめかすものなのよ。”主人”という言葉に憧れているのよ。”ご主人を大事になさい」。
あるハイミスが、気の置けない女学校時代の友人との電話で、冗談めかしてこう云ったそうである。
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その話を聞いて、このハイミスの大げさに言えば人生の達観ぶりに感じ入った。この人は、(毎日の生活の中でダンナにいろいろ不満はあるでしょうけれど、そんな不満のもてる貴女が羨ましいと思う人は大勢いるのよ)・・・さりげなく、自分の置かれている不満はさておいといて、(今の貴女の何年もかゝって築いてきたその立場を大事にすべきじゃない?)(物事は立場を変えて考えることによって、案外新しい発見が出来るものなのよ)・・・ということを、「不安定な自由」の立場から、「安定した不自由」をぐちる友人に教えていたのではないだろうか。
反 省
”あれはうまかった、あの味だけは忘れられない”とよく言うけれども、これは、その味が忘れられないのではなくて ”その時の思い出が忘れられない”ということではないだろうか。
同じ銘柄のビールでも、いのちの水かと思うほど旨いときもあればニガイ時もある。その時の気持ち・雰囲気・体調によって同じものでも味が違ってくる。
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ふだん気にもとめない野に咲く一輪の花に詩情を動かされる時もあれば、花など目にもとまらぬ荒んだ気持ちの時もある。
すべてのことを、外なる事情のせいにしないで、自らの内なる心のありかたのせいにしてみる見方も必要なことではなかろうか。
(75・S・50・7)