あゝ ジョギング
人間は、進歩するか退歩するかのどちらかで、体力・知力、何によらず現状維持ということはあり得ないのだそうだ。知力については具体的に比較する方法がないので措くとして、体力の方は目に見えては分からないが,潮がそれと知らず干いていくように、ひたひたと退歩しているのは確かである。
そこで、なあに年などに負けてなるものか・・・若さに挑戦。まだまだ気力・体力ともに充分と、カーター大統領の向こうを張ってジョギングを始めた。
以下、そのジョギングの記ーーー。
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まず朝。
いつもより一時間早く起きるのが第一の難関・眠い。”やめようか”・・・ ”雨が降ってないかなあ”と思う日もあるが、とにかく一念発起、「継続 は力なり!」」トレーニングウエアに着替える。薄暗いなか玄関に出て運動靴の紐を結ぶ時の、やや興奮した? ”いざ出陣”・・・といった気持ちの高ぶり。玄関を一歩でたときの朝の空気の爽やかさ。あゝ、やはり決心して起き出してよかった。
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新聞配達、牛乳配達のほか、いろんな人と出会う。意外に多いのが犬を散歩させている人。血統のよさそうなのから、明らかな雑種までいろいろあるが、ご丁寧なのは犬フン処理用のスコップと袋を持っていたりする。
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向こうから同好の士が走ってくる。”オヤ外人だな”と見ているうちに”グ・モーニン”と声をかけられてどぎまぎする。すれ違いざま若い女性から思いがけず ”オハヨウゴザイマス”と爽やかな声をかけられると、急に自分の足取りがカロヤカに早くなるのはどういう訳か。
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そうこうして、相当走ったつもりで、息が切れて汗びっしょりになって、やっと時間で十分、距離にして二000メートル。まあいきなり休まず3㎞も走れたら立派なもの、他の動物に比べて人間という動物の何とだらしなくなっていることか。
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それにしても、本当のマラソン選手は鍛え抜いているとはいえ、こうして休みなしに四○数㎞を一気に走るワケ。四○数㎞といえば洞爺湖一周の距離である。いつか観光かたがた洞爺湖を自転車で休み休み一周したことがあるが、それでも自転車から降りたときはヒザが笑って、暫くはコトにならなかったが、あの人達の体や心臓はどうなっているのだろう。
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特別に汗かきのせいでもあるが、起き抜けに飲まず食わずで走ってこの汗ーーー。夏場だと一合や二合ではきくまいと思うが、もし走らなければそれだけ自分の体の中にこれだけ溜まっていた訳だから、確実に新陳代謝ーーー強制排出したワケ。勿論、昨晩飲んだ三種混合のアルコールも混っている筈・・・。
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ジョギングを始めてから確かに体調はいい、足腰にハリが出てきた感じで、心なしか何かの拍子の敏捷性も増したように思える。何よりも快い疲れとともに、おおげさに言えば、何か人生に立ち向かっている・・・といった感じの心の充実感がある。
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人生に向かっていると書いたが、先日野っパラに黄色い(菊のような)花が群生しているのに出会い、あまり奇麗なので十本ばかり切り取ったのだが、どうも何かを持って走るということは、何かから逃げている感じでうしろめたい気持ちになるのはどうしてだろう?。
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しかし、何はともあれ、走っていて額を伝った汗が,眉のところでいったん止まり、そのうち朝日を含んで、キラリと輝きながら目の前をハネルときの健康的な爽快感は何にも代えがたいもの。
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そして日曜日。いつもより幾分距離も伸ばし、時間もかけてたっぷり走り、流れた汗をシャワーで流し・・・さて、それから飲むビールの味。ウマカ・・・ ああ、わが命ここにあり!!。。
(80・S・55・4)