キャスター
こんなところでTV番組の宣伝をしていいものかどうか分からないが、毎週日曜日の朝{サンデーモーニング」という一時間半の番組みがある。
毎朝、新聞にはそれなりに目を通すが、夜は帰る時間が不特定で、ニュース解説を定時に見ると言うわけにはいかない。そこへいくとこの番組は日曜日の朝、その一週間の出来事を整理して、進行役(関口宏)が男女四~五人のコメンテーターとの会話を通じて、あらゆる分野にわたるニュースを楽しく解説してくれる。
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最初に女性キャスターが,、紅葉とか冬の滝とか遊園地とか、季節の話題になる場所の紹介を兼ねながら気象情報を知らせる。ところが、ここは新人クラスが度胸づけに登場するところらしく、いつかその新人が、胸のブローチの代わりに見習い運転の ”若葉マーク”をつけて出てきたのも楽しかった。
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ところが、ある時その”若葉さん”が名所の紹介をやっているうちに、話の前後がつながらなくなってしまった。・・・自分なりに、カメラがこっちを向いたら、まずこの事を言って、次にはあのこと・・・それから・・・といろいろ工夫を凝らしていたのだろうが、それがフッと途中でつっかかってしまったのだ。
ベテランであれば、そこは何とか切り抜けるのだろうが、そこが ”若葉”の悲しさ、最初に考えていた通りの話の筋にに戻そうとするため、かえってこんがらがってしまい纏まらない。
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スタジオからも助け舟を出して、何とか間を取ってやるのだが駄目。とうとうその ”若葉”さん、カメラに向かって「関口さーん、すみません」と頭を下げてしまった。ところがその時、関口氏少しも悪びれず”・・・どうもすみません。彼女は慌てると頭の中が真っ白になってしまうものですから・・・”と軽く引き取って、さりげなく次の話題へ移っていったのも思わぬ勉強だった。
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ところで実は、ここまでは余談で、ここで是非紹介したいのは、この番組が進行役の関口氏を除いて、取り上げたニュースの取材から解説までを担当するキヤスターがすべて若い爽やかな女性であるということ。・・・政治・経済・外交・選挙・裁判・スポーツ・・・何によらずその時々の話題について、まだ二十台と思われる担当者が、夫々の担当ごとに自分で取材してきた材料を何枚ものパネルを使いながら実に歯切れよく説明してくれる。
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ある時少しシンドそうに ”風邪を引いてしまって、声がお聞きき苦しいかも知れませんが・・・”と断って、東欧問題の話を始めたキャスターが、解説しているうちにだんだん調子が出てきて ”関口さん、も少し時間頂けますか?”と体を乗り出した。ーーーと関口氏あわてて ”駄目!もう時間がないから・・・ハイご苦労さん、○○君風邪を引いているんでしょう。今日は早く帰って寝なさい”。と言ったのには、一同大笑いだったが、アットフォームな関口氏のアドリブの中から、キャスターへのさりげないイタワリがほのぼのと伝わってきて微笑ましかった。
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他のニュース番組でも、男女二人のキャスターが掛け合い的に話を進めていくのは幾らもあるが、この番組は女性の持っている特性を上手に引き出して、夫々に変化をを持たせて成功した異色の例だと思う。
そして、この爽やかな女性達を見ながらいつも思うことは 「われわれも女性を何時までも古い殻から眺めて”マドンナ旋風だ””ウーマンパワーだ”などと自嘲的に斜に構えたりしないで、ここらあたりで発想を変えた新しい試みに挑戦する勇気を持たねば・・・」ということである。
ーーーところでわが社では、期待に充分応えるセンスと能力を持った女性を、無駄にクサらせているようなことはないだろうなあ?。