続・煙 草 片 々
嘘か本当か定かじゃないが「煙草を止めるほど簡単なことはない。私は今までに何十回もやめた」と、あのマークトエインが言ったという話があるが、”私は、これで会社を辞めました”のＣＭで評判になった禁煙パイプは、一年間に三十億円を売り上げたそうだ。
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ナニそんなに売れた？。よそに儲けさせてばかりなるものか。・・今度はＨ社から ”煙草？何も止めることはありませんヨ”というパイプが売り出された。その宣伝文句に曰く「”煙を出さずにうまい一腹”・・・マッチもライターもいりません。煙も出ません。迷惑かけずにどこでも吸えます」。
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近頃ＴＶでやたらに目に付く外国煙草ともども、一方では吸わせよう、もう一方では止めさせよう、そんなものよりこの方が・・・と、何ともかしましいことではあるが、いずれにしてもこの世は持ちつ持たれつというところか。
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煙草を止めたある有名人が随筆で ”煙草を止めるのに成功した”・・・その間のことを ”フライパンの上であぶられるような苦痛・・・”と表現していたが、この”成功した”という言葉も ”あぶられる”という表現も、大げさではなく
、煙草を止めると言うことは、それほど大変なことなのである。
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煙草を止めるのに、自分のひそかな決心だけでは何度も失敗しているので、今度は背水の陣。職場でも家庭でも大きな声で「止める！」と一大決心を宣言しーーー。
二日・三日を何とか乗り越え、五日・・・六日・・・ついに一週間！。とうとう一本も吸わないで過ごした。もう大丈夫ーーーと気を許して、ちょっと吸ってみた一本。
ああ、とうとう吸ってしまったか、あの一週間のそれこそ ”あぶられる”ような苦しみに比べて何とあっけないことかーーー、だけど大丈夫、今日まで一週間も止められたんだ、又明日から止めればいいさ。今日は吸ってしまったついでに吸えるだけ吸って、また明日からすっぱり止めよう。などと思ったのが運のつき、次は四日目で・・・次は二日目で・・・結局は元の木阿弥・・・。誰もが何度も辿った道である。
こうして、今度はおおっぴらに宣言した手前、そこらで吸うわけにはいかず、トイレの中で煙をもみ消しながら、と密かに世を忍ぶあわれな姿に成り果てて・・・。
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例によって、蜂の喧嘩（さしつさされつ）の中から「煙草」について。
Ａ氏。「私はね、上司にこう言われたことがありますよ。”君ね、煙草を吸うのに自分はフィルターで煙をろ過して吸ってるからいいけど、回りの我々は火のところから出る煙を直接吸わされてるんだぜ。これはどう見ても割が合わんと思わんかい？。なるほど悪いと思うんなら,火の方をくわえて、煙を出さんよう吸えよ」
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Ｂ氏。「私はもっと酷いことを言われましたねえ。 ”世の中の人は、俺達呑み助のことを悪者みたいに言うけど、俺らはいったん飲んだものは出さん。お前さんも煙草吸いたけりゃ吸ってもいい、だけどいったん吸ったものは、出すな！”」。
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次は、わが敬愛する江国滋氏の、煙草についてのややふてくされ？の弁。
「外国の学者だか医者だか、誰だったかが ”煙草の一本は棺おけの釘の一本だと思え”というようなことを言い出して、なるほどうまいことを言うものだ、と感心した覚えがあるけれど、それでもって、たちどころに反省したりするほど私は意志が弱くない。二十本入りの煙草を毎日、四箱から五箱も空にして、それをもう二十何年も続けてきたのだから、煙草が棺おけの釘であるなら、私の体はもうとっくに釘だらけである。（略）そう思って目をつぶると,自分の胸板から腹にかけての皮膚がコリントゲームの盤に見えてくる。（略）ああ、まだ沢山の釘が打てるぞ、というふうに考えてみると、すこぶる気が楽である」。
（90・Ｈ・２・５）
