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02-Jan-2013

宇   宙

 小学校の頃「空気中で音の伝わる速さは、一秒間に三百四十㍍である。従って稲妻がピカッと光ってから、ゴロゴロという音が聞こえてくるまでの秒数を数えて、これに三百四十を掛ければ雷までの距離が分かる。二回目も数えて比較すれば、その雷が近づいてきているのか遠ざかっているのかが分かる。光は一秒間に地球を七回り半するほどの速さであるからして、この際、光の走る時間は無視しても宜しい」。

「それほど速い光が、ピカッと光って走り出してから、一年間走り続けて到達する距離を、天文学では ”一光年”という・・・と自慢げに教えられ、はるか宇宙のどこかから、今生まれたばかりの新しい星の光が、宇宙の闇の中を地球に向かって矢(?)のように、何年も何年も走り続けている様子を思い浮かべたものだった。

 とても土筆生の頭の計算機には入りきれないが、一秒間・・・瞬時に、地球を七回り半する光の一光年の長さを、キロメートルに換算すると何と九兆四千六百億㎞になるのだという。
 現在、地球上の天体望遠鏡では、十二億光年向こうの星まで観測することができるそうだが、九兆五千億㎞を十二億もつなげた彼方の星・・・。今、地球に到達した光が、実は何十億年も昔に宇宙の彼方をスタートした光・・・?、と考えていくと、宇宙の拡がりというものは、もう何がなんだか分からなくなってしまう。

「宇宙」といえば、昭和十六年、太平洋戦争開戦を前にして、時の連合艦隊指令長官・山本五十六が友人に宛てた手紙に「宇宙の一小黒子たる地球上、悠久に対する一閃光にも比すべきこの数年を、非常時、非常時と喚叫する有様を天は何とみるべきか、思へば浅ましき限りといふべし、など思ふことも有之候」と書いている。
 *
「蝸牛角上の争い」という言葉があるけれども、我々の日頃の争い・葛藤・もろもろの悩みも、五十六さんじゃないが、皆が ”宇宙の中の・・・ホクロの上の・・・一瞬の・・・”と客観的に、巨視的にみることが出来れば、この世の中だいぶ様相も変わってくるのだろうがなあ。

          変  化

 Y・G氏からの手紙。
 「・・・ところで、新入生というと、ここ一~二年の間に高校生達の手から学生かばんが消えてしまったことにお気づきでしょうか?。あの中身の何も入ってないペチャンコの鞄も、頭の中身を映しているようで頂けませんが、ピクニックにでも行くようなバッグもネエー・・・。
 それにしても知らないうちに社会風俗が変化していて、オジンは益々落ち込む今日この頃です」。

 言われてみれば、成る程どの高校生も申し合わせたように、男も女も肩から黒いずだ袋を提げている。そう思って回りを観察してみると、いつの間にか色んなものが変わっていた。
 ある日ふと気がついたのだが、紳士靴がいつの間にか紐なしのつるりとした型になってしまっていた。電車の中で見回しても十人中七~八人がそうである。飲み屋の小あがりで飲んだ帰り、土間に並べられた靴を見てみたまえ、酔眼にはどれを履いたらいいのか迷うほど同じ型の靴が並んでいるから・・・。

 それに傘。いっとき皆自慢げに持っていた二つ折りの携帯傘が、いつの間にかすたれて、丸く曲がったステッキのような柄の大振りでカラフルな傘が幅を利かせるようになっていた。
 昔、中学生になって、Pen・Bookとともに最初に習ったアンブレラは黒一色と相場が決まっていたものだが・・・。

 ついでに言うなら、いろんなものの呼び方が変わった。いつの間にかジャンバーがブルゾンになっていた。BGがOL(オバサン・レディの略だと思い込んでいる人あり)になってから久しいが、フロア・レディとは一体誰のことか?、テレ・クラ、オレ・カ、ホコ・テン、セク・ハラ・・・どれも相手の独りよがりで世の中分かりにくくなってしまった。
 ホントに「オジンは益々落ち込む今日この頃でございます」。
(90・H・2・9)