所内報 に い が た ・ (79・S・54・8)
くまん蜂は何故飛べるか?
アメリカ、ゼネラルモーター社の研究所の壁に「くまん蜂は何故飛べるか?」ーー航空力学を知らないからだ」というパネルが掲げてあるそうだ。
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航空力学の知識に従えば、あの体型、重さ、羽の振動からみるとくまん蜂の羽はもっと大きくなければ飛べない筈なのだそうである。力学的に計算上は飛べない筈のくまん蜂が、併し、現実には目の前を飛んでいる。
ーーー「不可能と思われることも、やってみなければ分からない。何事も最初から駄目だと思い込んだら何も出来ないし、新しい進歩はない」という教えである。
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昨年の褒章伝達式の際、佐竹所長の挨拶の中に「ゴルフに”ネバーアップ、ネバーイン(とどかない球は入らない)”という言葉があるけれど、これと同じように科学の面でも人智の及ばないことには、人間は到達することはできない。どんなに突飛だと思われることでも、とにかく人間が思いついたこと、考え及んだことにのみ実現の可能性がある。そういう意味でこれからもあらゆることに疑問と希望を持ち、それらの中から新しい進歩をはかるようにして貰いたい」という意味の言葉があった。
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確かに人間が月に立つことも、或いは地球の裏側で起っていることが瞬時に茶の間のブラウン管に天然色で映し出されることも、”そうしたい””そうであったらいいなあ”という、初めは儚い夢物語であっても、とにかく人間にそのような欲求があったればこそ現実に実現したのである。
”そんなこと無理だよ。丸い地球の裏側のものが見えるはずがない”と初手から投げてしまったのでは、アポロもTVも実現しなかった筈である。
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ところが、我われには保守的な傾向があって、出来れば今までどおり現状のまま安易に進もうとする傾向がある。身近な仕事の進め方の中でも、何か新しいヒントやアイディアを出された時、ふと身構えて ”いや、今までずっとこの方法でやってきました””それは、多分無理だと思います” ”そんな前例はありません”というネガティブなアプローチから、とにかくトライしてみようとすることをしない。逆にいうと、とにかくやってみようという前向きの努力よりも先に ”出来ない””やれない”という理由を口実に準備して動こうとしない傾向がある。
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「多分出来ない」と思う理由を挙げる努力をする前に先ず動いてみてはどうか、そして若しそれが本当に出来ないとしても、それなら”どうすれば出来るか”一歩でも半歩でも進んでみようという肯定的な努力をしてみてはどうか。
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「出来ないというな、したくないと言え」と言ったのは誰だったか。とにかく熊ん蜂は飛んでいる。