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02-Jan-2013

 悪 妻 心 得 十ケ条

 ”女子ト小人ハ養イガタシ”と言うけれども、トルストイ・モーツアルトの奥さんがたの例もさりながら、プラトンという賢人を弟子として育て「汝自身ヲ知レ」なんて喝破した哲人ソクラテスでさえ、自分の女房だけは、思うように行かなかったらしい。
 男なんて、女とは関係なしに偉い人は偉いものゝようであるが、「結婚しなさい。よい妻を持てば幸せになれる。悪い妻を持てば私のように哲学者になれる」と言ったソクラテスは、クサンチッペという大変な悪妻を持ったが故に、妻にささげる愛情とかそんなことに気を回さないで、後顧の憂いなく研究に没頭することができた。あの偉大なソクラテスを生んだのは妻の功績だという。そのソクラテスの妻になるための十ケ条をお届けしよう。

 一、亭主ハ、朝夕 ブスットシタ顔デ送リ迎エヨウ
   
 女房は家で昼寝をしていても亭主が家族のために外で働くのは当たり前のこ
とである。オトコはいったん外へ出ると七人の敵がいるというけれども、前か
からだけの敵では足りない。帰ってきたら仏頂面で「あら、もう帰ってきたの」と、後ろからもひと太刀あびせよう。

 二、「家事ノコトハ、タイミングナンカ気ニシナイデ切リダソウ」

 亭主が帰宅してホッとした瞬間、構えのできていない時、例えば玄関口で靴を脱いでいる時など、溜まっている用事を頭からおっかぶせて切り出すのが効果的である。 亭主は外でどんな嫌なことがあっても,濡れた犬のように門の外でブルブルッと身震いして振り落とし、やっかいなことは家の中に持ち込まないようにしているものである。身軽になって入ってきた亭主は玄関口で迎え撃とう。

 三、「家庭ノ中デノ化粧ハヤメヨウ」

 釣った魚にエサは要らない。家庭の中で化粧しておくのは勿体ない。その代わり外へ出るときは、人の女房なんか誰も振り向いてくれないのだから、目立つように大いにメカシこんで外出しよう。もし有るなら全部の指に指輪をはめるくらいでないと誰も関心を持ってくれないだろう。
 朝食前は特に貴重な時間だからぎりぎりまで寝て、亭主が出た後ゆっくり髪をとかしたっぷりお化粧をしよう。そして、時折「亭主達者で留守がいい」などとつぶやこう。

 四、「亭主ハ常ニヨソノ旦那ト比較シヨウ」

 常にアンテナを高くして情報を仕入れ、会社で人事異動があるたびに「あら、今度XX長になった人、あなたと同期じゃなかったかしら?」などとさりげなく聞こえよがしにつぶやこう。
 「社宅の00さんのご主人、またゴルフコンペで優勝なさったんですってね。賞品は素敵なネグリジエだったんですって」・・と、常に鈍感な亭主に発破をかけよう。

 五、「日曜日ハ 待ッテマシタトコキ使オウ」

 できれば、休みの前々日くらいに宣言しておいたほうが効果的である。どうも物置の戸締りがうまくいかないこと。包丁の切れ味が悪くなっていること。庭の雑草が伸びていること。風呂場の流しが詰まっていること・・・etc。
 そしてそれらが済んでホッとしたところでデパートに誘い出し買い物の荷物を持たせよう。

 六、「夫ノ友人ハ粗略ニ扱オウ」
 
 夫が友人や部下を連れてきたら,出来るだけものぐさに接待しよう、女房にたてられている亭主を見せることは、友人や部下を羨ましがることになるし、第一あんまりいい顔をしてはたびたび来られることになるだろう。

 七、「家庭内デハ 関白ニサセナイヨウニシヨウ」
    
 眠っている時間を除けば、家で夫と顔を合わせている時間は一日のうちほんの四~五時間だからと言って、亭主をいい気にさせないように、手綱は常に引き締めておこう。ユメ、ひょっとして亭主が家の中で一番えらいのだという錯覚を起こしてしまわないように。

 八、「唇カラ歌ヲナクソウ」

 いつも”私はただ働きのオサンドンみたい”とボヤキ、夕食のお茶碗を洗いながら、”名モシラアヌ 遠キシマヨリ・・・”なんて口ずさんだりしないように気をつけよう。そんなことをすると家の中が急に明るくなるし、第一自分の気持ちが浮かれてしまうことになるから気をつけよう。

 九、「亭主ニハ貴方ハ駄目ナ男ナノヨト暗示ヲカケヨウ」

 亭主は常に尻をひっぱたいて走らせよう。賞与袋を貰ったら、当たり前のように受け取り、家計が苦しいことを細々と例を挙げて説明しよう。心にもなく有り難うなんておだてたりすると、亭主はホントに自分が立派になったような暗示にかかり、出来もしないのに自信を持つようになる。常に「アンタは駄目な人なのよ」と言い聞かせておこう。

 十、「常ニ愚痴ロウ」

 亭主の力ではどうにもならないこと、例えば、雨が降り続いたら、「ほんとによく降るわね。洗濯物が乾かなくて困るわ」とか、天気が続いたら「ちっとも降らないわね。ほこりがひどくて拭き掃除が大変だわ」とか、寒いにつけ暑いにつけ「寒いわねえ。暑いわねえ」と眉の根にシワを寄せて愚痴ることを忘れないようにしよう。
(82・S・57・1)