葬 式
区民の皆様への平等なサービスを標榜するO区役所の出張所、壁に掲示が貼ってある。曰く「どなたも利用できる区民葬祭」ーーー。一寸面白いので内容をご披露しよう。
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一、葬祭料
A,金襴四段飾り 一六七、000円
B,白布三段飾り 八九、000円
C,白布二段飾り 七三、000円
地獄の沙汰も金次第。死んでまでA・B・Cの区分けとはーーーうな重の松・竹・梅を思い出させられますなあ。
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一、霊柩車料
宮 型 一四、000円
普通車 五、九00円
宮型といったって普通車に金張りのデコレーションをのっけただけのものだろうし、一回作れば何回でも使えるもの、わざわざ差をつけた「普通車」を準備する必要はあるまいに・・・。
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一、収骨容器
二 号 七、一00円
三 号 六、一00円
一号がなくて、何故二号からなのか判らないが、一、000円の違いは骨の量・つぼの大きさによるものだろうか?。
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さて、最後に
一、火 葬 料
最上等 二七、000円
上 等 一九、000円
中 等 五、四00円
さすがに気が引けてか、下等というのはないが、何故、火葬料だけが、A・B・C・・一・二・号でなくて、上等・中等ーーーおまけに「最」がついて「最上等」となるのか。
祭壇の飾り付けや、車・骨つぼなど、物の大・小、質の上・下による値段の差は、或る程度はやむを得ない面もあるが、ビフテキじゃあるまいに、火葬して骨にするのに「最上等」とは何事かーーー。しかも中等と五倍も値段が違うのはどういう訳か?。焼きとりみたいに、こちらは炭火でこんがり焼き上げるとでもいうのだろうか。
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俗に血の通わない細かい配慮の足りない仕事のことを「お役所仕事」というけれども、あの国鉄でさえ、二等車・三等車という車両の区分を「グリーン車・普通車」と呼び変えたというのに、無神経なお役所仕事の一例かくの如し。しかも、あの掲示ががどれだけのハンコが押された上で掲示されたのか・・・その夫々の人に税金が払われている。嗚呼。
励 ま す
好きなウイスキーの瓶が半分になった時、同じ量でも ”もう半分飲んじゃった””もう半分になってしまった”と思う人よりも ”まだ半分残っている”と思える人の方が幸せ決まっている。
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ところで、この「まだ」にづいて、作家、遠藤周作さんの述懐。
「若い頃、結核で入院して療養を続けた。ある日診察しながら医者が ”大分よくなったけど、まだ、一週間に一度しか散歩してはいけない” ”まだ一週間に一度しか風呂に入ってはいけない”と言った。その時、同じ云うなら、何故”大分よくなりました。もう一週間に一度なら散歩してもいいですよ” ”もう、一週間に一度風呂に入ってもいいですよ”と言ってくれないんだろうと思った」。
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我々がふだん不用意に言っている言葉で、人のやる気をスポイルしていることはないか。
例えば、暑いさなかに雑草とりをしている人に「まだ、あそこのところが残っているよ」と指摘するより「この暑いのに、よくこんなにやれたね。だけどあそこのところを刈りわすれているよ」という心遣いはできないものか。
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子供や部下を育てるにも、すべて目標を高く設定して「まだ・まだ」と叱咤してしょんぼりさせるよりも、「もう、ここまで・・・」「よく、ここまで・・・」という見方で励ましてやるほうがいい結果を生むこともあると思うのだが、如何?。