見 出 し
毎日配達される新聞の見出しーーー。それが商売だと言ってしまえばそれまでだが、あの見出しの文章をひねり出す人の才能に感心する。
例えばこんなのはどうだ。元気のよかった近鉄バッファローズが負けた、その見出し「猛牛息切れ・二連敗」・・・。中日ドラゴンズが大洋ホエールズに買って、セ・リーグ優勝「竜・鯨飲の逆転V」。・・・相撲の記事で、横綱千代の富士が大寿山に寄り切りで破れた、見出しに曰く「寄らば大寿・千代に土」。若乃花が朝潮に破れて遂に引退発表。(花のニッパチ二十八年組で、北の湖に横綱を先んじられたものの体格・素質申し分なし、これからと嘱望されながら、二十九歳で引退)。この時の見出し、「若乃花・咲けずに散る」・・・こういうのを見ていると、相手は玄人とはいいながら、ホトホト感心してしまう。
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ひところ、毎日の新聞をにぎわした赤字国鉄のずさんな「タルミ勤務」ぶりを伝えるのに「カら出張」・「ヤミ休暇」などという新語はまあまあとして「ポカ休」「ブラ勤」なんて言葉は、まあ語感といい内容といい簡潔に云い得て妙ではないか。
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ところで、土筆生ひとりでひそかに感心し続けているのだが、新聞の号外に「号外」という名前を初めてつけた人ーーーこれこそ傑作だと思うのだが・・・。
子供の頃は、”ゴーガイ・ゴーガイ”という呼び声を、臨時ニュースのことを ”ごうがい”と云うものと意味もなく聞いていたが、実はこれには深い意味が含まれているのであった。
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自分のところの新聞には、一号・二号・・・とずっと創刊以来の通しナンバーがついている。それらのX号以外に、臨時に別枠で速報を出す必要に迫られた、これを名づけて ”号”の外「号外」ーーー。簡にして潔。
夕闇迫る街角で、鈴を振りながら ”ゴーーガイ・ゴーガイ”と呼ぶその慌しい語呂もまた。、臨時ニュースにふさわしく秀逸だと思うが、如何?
法 律
法律に詳しいわけではないが「酒ニ酔ッテ公衆ニ迷惑ヲカケル行為ノ防止等ニ関スル法律」というのを見て、何という長ったらしい名前の法律だろうと久しく感じていた。ところが驚いたことに、もっと長いのが現れた。曰く「行政改革ヲ推進スルタメ当面講ズベキ措置ノ一環トシテ国ノ補助金等ノ縮減ソノ他ノ臨時特例措置ニ関スル法律」・・・どうです、これをひと息に読めて何のことを決めた法律なのか判ったら拍手喝さい。
それにしても ”当面講ズベキ措置ノ一環・・・”なんざあ、よほど頭の真空管がしっかりしてなけれやあ考え出せない言葉じゃありませんか?。
力
ゴルフの先生の話。
「何故、そう力んでクラブを振るんです?。ゴルフをするためには、長さもロフトも違ったクラブ十四本を使っていいことになっているでしょう。十四本それぞれのクラブの性能を信じて、球の置かれた状況、打ちたい距離に応じてクラブを選んで、あとはクラブに任せればそんなにコチコチノ無茶苦茶な力はいらない筈ーーー余計な力は無駄と言うよりもむしろ悪です。」
「テニスなら一本のラケットで、強弱・高低・・・すべての球を処理しなければならないから、これはその時々の力がいります。しかし、ゴルフは、クラブ一つひとつのロフト・長さ・重さの違うクラブを使い分ければいいんですよ」。
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「尤も、全身に力を入れることよりも、適当に力を抜くことがどんなに難しいことか、これはゴルフニ限りませんよ。あなたの管理職としての仕事もそうです。
まず、余分な肩の力を抜くこと、自然な姿で部下の持っている夫々の能力を信じて任せ、使いこなすことです」。
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「そうです。ほら、ナイスショット・・・球が素直に飛んでいくでしょう。どうです。その方がずっと楽で然も結果もずっといいじゃありませんか。仕事だって同じですよ」。
(83・S・58・3)