無 題(Ⅱ)
ご記憶かと思うが、ついうっかり原稿が間にあわなくなり、濫読した本の中から、苦し紛れに断片を並べて出した二月号・・・。
ところが、何とこれが ”とてもよかった”と大好評。そんなことならお易いご用。柳の下のドジョウを期待して・・・再び「無題」第二弾。
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だいたいサラリーマンの世界には、ダメな奴とダメでない奴がいるのではなくて、ダメだがダメでないところもある奴と、ダメでないがダメなところもある奴が同居しているのである。
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「人間」と言う字は、”人の間”と書く・・・親と子の間、夫婦の間、教師と生徒の間。皆間柄がある。「間」のないのは間抜け、「間」が違うたら間違いやの。
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船出には、潮時が大事です。
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昨日また/かくてありけり/今日もまた/かくてありなむ/明日をのみ/思い患う。
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剣の奥義は「剣を用いぬ」こと。茶道の行き着くところは「無一物の境涯」。町人の道は「功利を離脱する」にあるといわれる。いずれも、技術、功利、合理性などを必死に追求しながらも、究極において、それらが否定ないし超越される点で共通している。
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誕生ーーー死の始まり。
死 ーーーこの世で唯一の平等。
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愚夫のために、指をもって物を指すに、愚夫、指を見て実義を得ざるごとく、斯くの如く・・・。
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あわてて結婚し、ゆっくり後悔する。
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夕焼けが美しい。
一日のつとめを早く終えようとするように、いそがしく蝉が鳴いている。近頃、死ぬ時は夕方であって欲しいと思うようになった。以前は朝のうちと思ったのだがーーー。
葬る時も夕方がいい。墓は、夕陽がよくあたるようにして欲しい。
(死刑囚の日記・古川大次郎・二十六歳・刑死)
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満足できる者は、最も富める者である。
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仲がいゝように見えても、夫婦の間柄と言うものはなかなか難しいものだ。同盟を結んだ国同士と同じことで、同盟が破れた途端戦争になるんだから始末に悪い。
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時をおき 老木のしづく 落つるごと
しずけき酒は 朝にこそあれ
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国家に功労がる者には碌を与えよ。功労があるからといって地位を与えてはならない。地位を与えるには自ずと地位を与えるにふさわしい見識がなければならない。功労があるからといって、見識のないものに地位を与えるということは、国家崩壊のもとである。
(西郷隆盛)
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友達が、”お若いですね”。とお世辞をいい始めるとき、その友達は間違いなく、この人も年を取ったものだと考えているのだ。
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自分から運命を切り拓くのも英雄かもしれないが、私は与えられた生活を受け止めていく、控えめな勇気をもっと美しいと思うことがある。
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忘れねばこそ 思い出さずそろ
今頃は 駒形あたり ほととぎす
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知恵と知識は似ているが大いに違う。
知識は吸収するものだが、知恵は出すものだ。知識は学歴の高い人が多いことがあるが、知恵は学問に関係ない。これからの時代は知識も大切だが知恵が極めて必要になっていく。
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歯は入れ歯 目は眼鏡にて 間にあへど・・・。
(83・S・58・7)