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悲しき酒(片々草抜粋)

 

 

 

 

 

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02-Jan-2013

酒・ 酒・ 酒

 明けましておめでとうございます。皆様いいお年をお迎えになられたことと存じます。今年も片々草をよろしくお願いします。
 さて新年第一号は、元旦のおトソ気分で、またまた遠慮しながらお酒の片々。

「三人寄れば同窓会。五人集まりゃ県人会・・・とかくメダカは群れたがる」というけれども、呑み助というものは以心伝心どうしてこうも”なんとなく”話がまとまるものなのか。
 例えば、新橋といわず、どこといわず駅周辺の飲み屋は,灯ともし頃ともなると軒並み満席。軒を接して同じものを売っているのに、どうしてこうも繁盛するのか。

 飲むといえばお定まりのハシゴーーー、どういう訳か一軒目からカラオケということは先ずないが、二軒目以降になると、何となくカラオケのある店へと足が向いていく傾向がある。経済の原則に違わず需要があれば供給があるーーー。よくしたもので十人くらいしか入れないような小さな店でも必ずといっていいほどこの装置が置いてある。そしてナンボするのか知らないけれど、そのキカイの何と精巧なことかーーー。

 小学校の国語読本みたいな大きな活字で書いた本に、演歌から軍歌まであらゆる歌詞が載っている。片隅に番号があり ”TRの何番”とかどなると ”ハイ”と言うや否や、何百と並んでいるテープの中からすっと抜いてガチャリ・・・何やらボタンを幾つか操作すると、たちどころに指定したメロディが流れてくる仕掛けーーー。

 近頃は同時にTV画面に歌詞とその曲のムードを盛り上げるVTRが現れ、おまけにコンピューターとやらが、歌唱力のすべてをチエックしてくれ ”只今のは何点”と点数が表示されたりする。(ところが、この数字はいい加減で ”K”という有名な歌手が自分の持ち歌を歌ったら六十点しか出なかったそうだ)とあのうそつきの酔っ払いが言っていたがひょっとしたらホントかもしれないな。

 カラオケと言えば、自慢じゃないがこちとら、体の中に入っている歌は、黒田節と軍歌だけ、新しい歌は全く知らないと言う歌詞音痴だが、世の中は広いもので、思いがけない人が、これがあの昼間の人と同じヒトかと疑うほど、急に生き生きと豹変することがある。まあ何とマイクの持ち方、コードのさばきかた、身振り手振り、さながらTVから出てきた本職のよう。そんなプロはだしになると注文する曲もこってくる。
 ”あのう、次はギンコイ頼みます”ーーー”ギンコイ?とは何だ?”。ーーーなんと出てきた曲が「銀座の恋の物語」・・・。このデンでいくと ”岩室甚句”は ”イワジン”で、”新潟おけさ”は ”ニイオケ”ということになるか。

 好みの問題だから、他人のことをとやかく言うつもりははないが、(土筆生は)やはり酒は日本酒にとどめをさす(と思う)。どうもチーズやビフテキ相手ならいざ知らず、すし屋や、そば屋(ラーメン屋にあらず)、赤提灯のおでん、焼き鳥やでの焼酎ならまだしも、ウイスキーのキープボトルを脇において得意げに飲っている人をみると、ちょっと首を傾げたくなる。

 それほど世界中の酒に親しんだ訳ではないが、酒の仲間で「日本酒」はひょっとしたら、世界で一番の飲み物ではあるまいか。同じ酒でも季節・天候・時どきの気分・相手によって、ぬる燗よし、あつ燗よし、時によっては冷もまたよし、第一、”人肌に温めて・・・”なんて表現は、日本酒なればこそではないか。

 時にふと立ち寄った、女将さんに板さん一人といった小さな店。その日できるお品がきが,うす板にさらりと毛筆の美しい字でしたためてあるのが嬉しい。こういう店だと請求書もそのものぽっきりではなく,和紙の便箋に時候の挨拶のほか、ひと言添えてあったりして、あの日のふんわかと酔った気分を思い出させてくれたりする。

 大分いい気持ちになってきたところで、矢口純さんの話で締めくくろう。
 「酒はうまいからなかなか油断がなりません。酒は楽しいからいよいよ油断がなりません。その意味で、酒には卒業証書がない。一生修行だと思います。つまりですね、悔恨というのがついて回るんです。我が家に辿り着くあの心境は、それにもまして次の日の目覚めと言うものは,酒徒でなければわかりませんね、 ”こんな夜更けに帰るのか”の繰り返しです」。
 
 嗚呼、われもまた・・・。
(84・S・59・1)