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悲しき酒(片々草抜粋)

 

 

 

 

 

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02-Jan-2013

 悲 し き 酒

 編集部のご好意で、片々草・抜粋集が出た。方々からいろいろ反響があった。その中で一番多かったのは ”毎月読み流していたけど、ああやってまとめてみると、どうも酒に関する話が多い。然も酒の話になるとどれも生き生きとペンが走っている。・・・という評だった。
 褒められているというより、言っている相手から見て、どうもオチョクラれている感じの方が強いが、まあヨカヨカ・・・、そんなことでくじけちゃ土筆生の名がすたる。ーーー今月もまたまた酒についての片々・・・。

 狂歌で有名な蜀山人と言う人。あまりなじみはないが、あの人もどうやら相当な呑み助だったらしい。
 どんな時に酒を飲むか?、と聞かれて「節句と祝儀のとき」「珍客が来たとき」「さかながあるとき」「月見・雪見・花見のとき」「二日酔いのとき」と答えたと言う。これでは一年中飲んでいるようなものだが、最後の言葉がいい「但し、一日中飲むのはやめよう」・・・。

 次は、貝原益軒のあの養生訓から、「凡そ酒は、夏・冬とも、冷飲・熱飲はよろしからず、温酒を飲むべし。熱飲は気昇る、冷飲は痰をあつめ,胃をそこなう。。(略)多く飲む人,冷飲すれば、脾・胃を損ず。少し飲む人も冷飲すれば,食気を滞らしむーーー。」
 (あの貝原さんも「飲むな」とは言っていませんな。だけど酒はやはり
 ”人肌”といきましょうか)。

「作家の井伏鱒二さんに二日酔いをなおす秘訣を尋ねたら ”ぬるい湯に入って、だんだんと熱くしていくのが一番いい”といった。”その後、どうします?””決まっているじゃないか、また飲み始めるのですよ”」。・・・と言う話が「ちょっといい話」(戸板康二著)という本に紹介されているが、八十六歳の井伏さんも相当なものですなあ。

 次は、”持つべきものは、やさしき酒友である”という将棋の内藤国雄九段の話。
「酒はあくまで楽しく、そして翌日にはきれいに忘れてしまうのが、酒の高段者というか、大人の酒といえる。ただ酒の席にもルールはあると思う。座が賑わってきても、酒を注ぐとき、注がれるときだけは、視線を盃に向けてしゃべらないこと。注ぎながら(注がれながら)よそを向いて、別の者としゃべるのはルール違反というか無礼である」。

「カラオケといえば、私が歌が好きだということで、よくそうしたところへ案内されるが、これは有難迷惑であることが多い。バカ話をしているところへ、いきなり ”おゆき”のカラオケをならしマイクを突きつけられると、遊びの気分がふっとんでしまう。歌は自分が歌いたい時に歌ってこそ楽しいものである」。
 (如何です?。全く同感じゃあありませんか。なあご同役・・・)。

「武士道とは死ぬことと見つけたり」の「葉隠れ」に酒席での心得として、次のようにたしなめてあるという。

「左手に盃を持つのは、刀のために常に右手を空けておくためと心得よ」。
「酒と言うものは、打ち上がりがきれいでなければいけない」。
「酒に酔った時は、理屈を言ってはいけない」。
 そして曰く「何れ酔いたるときは、早く寝たるがよきなり」・・・。
 
(早く寝てしまえ、とは、これまたご丁寧なことですな)。
 *
 昔から”酒を飲む”ということには、十の徳があるという。

 飲酒の十徳
 曰く、「礼を正し、労をいとわず、憂いを忘れ、鬱をひらき、気をめぐらし、病を避け、毒を消し、人と親しみ、縁を結び、人寿を延ぶ」・・・。
 (如何です?。わたしら、あだやおろそかで酒飲んでいるんじゃあありませんぜ)。

 おつもりは真面目にーーー。

    花ハ半開ヲ看 酒ハ微酔ニ飲ム
          コノ中ニ 大イニ佳趣アリ。
                     (菜 根 譚)

                          (59・9月)