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02-Jan-2013

あゝ・お 役 所

 運転免許証の更新。K急行のS駅。改札口を出ると、手続きを要する人が毎日こんなにいるのかと驚くほどの人の列、それがぞろぞろと会場まで続く。左右は軒並み代書屋・・・映画で見る、昔の街道筋の旅篭の手代よろしく、揉み手をしながら”私どもへ””手前どもへ”と客引きが激しい。小さな間口だが女性が二~三人並んでガチャガチャとタイプを打っている間、奥で即席の写真をとる。いきなり飛び込んで更新手続きに必要な書類が出来上るのに十分くらいか・・・。

 およそ潤いのない殺風景な会場。壁にいろんな手続きを行う順序が①〜②〜③〜といった具合にでっかいパネルが掲げてある。これによると先ずは目の検査、捕虜収容所の集会所みたいなところに六列に並ばせられた受験者を前に、係官が小さな台の上にあがって説明する。
 *
 「ここでは目の検査だけではなく、法律で決められた聴力と手の運動機能の調査も行うことになっている。従って、検査の順番が来て名前を呼ばれたら大きな声で返事をされたい。これが“聴力検査”である。直ちに返事がないと難聴と判断される。両手はポケットから出しておくように、・・・検査機の前に立ったら横のバーを握って検査孔に目を当てる。これが“手指の機能検査”である」。「目の検査は、のぞき穴から中をのぞいて・・・」とこの間一分くらいか。

 同じような感じで、後は何番、次は何番と、どこもゾロゾロとガス室にでも送られるように回され、やっとすべてが終わって、最後は「三階十八番に行って安全運転のための講習会」だという。やれやれ厄介なことだと思いながら三階に行ったら、」ガランとした部屋の真ん中におばさんがポツンと座っている。他に誰も居なければ椅子もない。「あのオー」と恐る恐る尋ねたら、待ってましたいう勢いで「輝くライセンス」「交通の教則」という本を渡され、後はこの部屋の壁にずっと講習資料が貼ってあるから、それを見ながら歩いて出口の方へ・・・という。なるほど壁に何やらグラフや写真がかけてある。見ているようなふりをしながらカニの横ばいでずーっと通り過ぎて、ハイさようなら・・・。

 この間、会場に入ってから出るまでに十人くらいの係官にお世話?になったが、ニコリとした笑顔にはついに会わずじまい。笑顔もさることながら、あれだけの手続きの中で、本人が出頭しなければ出来ないのは目の検査だけ。これも近所の医者の証明で代替できるだろう。電車に乗ってあれやこれやで半日つぶされてーーー。。

 お上意識に胡坐をかいたお役所仕事・依如件。

(85・S・60・3)