無 題 (Ⅵ)
駄文を弄せず久しぶりに、折々ふと心に残った言葉を雑多に並べて、無題第六弾。
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いったい人生にとって最終の目的は何かといえば、そんなものがどこにもないのは誰の目にも明らかでしょう。
人生のゴールには死があるだけであって、大切なのはそこに至るまでの過程なのだということは議論の余地がありません。要するに一日一日をたんねんに生きることが人生の目的・・・。
山崎正和
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何事も望まない人は幸福である。その人は失望することを知らないからである。
スイフト
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ある医者はいう。「ひとつの診断に到達すると、それに強くとらわれ、ほかの見方ができなくなる。しかも悪いことに、自分の考えはいつも正しいと思い込む傾向にある」。
多胡 輝
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相手の話に同意することが、相手を同意させる第一歩である。
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”銭湯の行きと帰りで人の顔が違って見える”とある作家が語っている。
行くときは人の顔が寒そうに、帰りには暖かそうに見えるが、なに、それはこちらが暖まったからだ。
境遇や状況で、感じ方や価値観まで変わるから人は恐ろしい。
(日経・春秋)
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胸はただ、大波のうつらんよふになりて、いふべきことも覚えず,問ふべきことも忘れて面ほてりーーー。
(樋口一葉)
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それにしても、時の流れのもつ意味の重さよ、と思う。大きな外科手術も、人生で受けた打撃も、一番の妙薬は”時間”である。病気に医師や薬物は欠かせない,或いは先輩の助言や愛情もいる。しかし、それだけでは癒えない。
心臓手術の後、隣のベッドを見舞う年老いたお母さんが、四十代の娘に噛んで含ませるように「あとは、日数じゃからねえ」といった言葉が忘れられない。
(澤地久枝)
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いわゆるるひとつのですね そういった まあ ひとつ そういうことですね。
(長嶋茂雄)
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苦は 自己欲 自己愛の所産なの。欲望や愛情を満たしたところに 苦がある筈はない。愛欲の満たないところに苦がある。求不得苦ーーー求めて得ざる苦しみなの。
自分の寸法を守らんから苦になるのであって、寸法に合わんことを望むから苦しまねばならないの。
(大西良慶)
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初日記 いのちかなしと しるしけり (久保田万太郎)
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ベ^トーベンの交響曲は終わりっぷりがものものしい・・・。
そろそろ終わる。終わるぞ。いよいよ終わる。もう終わる。さあ終わる。終わった。ついに終わった。終わって封印をした。封印をして、これでとうとう終わった」・・・という具合に終わる。
ベートーベンは粘着気質の天才だったに違いない。
(阿川弘之)
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人の世や 嗚呼ではじまる 広辞苑