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昔は ”ブタもおだてりゃ木に登る”といったものだが、最近は”ブタもおだてりゃ空を飛ぶ”というのだそうだ。
原稿がはかどらず悩んでいたら、編集部から、日石スリーラインの「企画別人気順位・年間集計」というのを見せられた。それによると、反応は月づきの出来栄えで異なるが、この「片々草」が年間で上位五番目だそうで、スリーラインでは外せない企画だという
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十二月号の伝言板で、J石油のT・Kさんから、横綱千代の富士にたとえて「休場・引退はまだまだ先のこと・・・」と励まされたことでもあり、空を飛ぶほどおだてられた訳ではないが、編集部じきじきにヒザを折られたのでは引くわけにも参るまい。
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・・・と言うわけで、昭和六十二年正月。明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。
男
男には二つのタイプがあるという。花のある男とない男。
花のある男と言うのは、その人が入ってくるとパーツと回りが明るくなる。例えば寅さんが入ってくると、何か知らないけれどもお通夜まで賑やかになってしまう。別の人が入ってくると、祝賀会なのにお通夜みたいになってしまう、ということである。
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人間には、何となくその人が醸し出す雰囲気というものがある。子供の仲間でも,三~五人で歩いているうちに、いつとはなく真ん中になってしまう子がいる。ハンサムとか成績がいいとかいうのではなく、何となく人気がその子を中心に形成されてしまうのである。
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会社では、例えば随分前に転勤したり退職していった人が、元の職場にふと顔を出した時、知らぬ間にその人の周りに人が集まっている人と、そうでない人がある。
ふだんの仕事でも然り。その人がそこに座っているだけで回りが明るくなる人と、その人がいるだけで何か気がかりで、今日は何か違うなと思ったら、その人が休みだったり・・・ということがある。
男には、二つのタイプがある。さてあなたはーーー。
軍 歌
新橋・小さな居酒屋。カウンターを入れて十席くらいかーーー。
客ーーーこちら三人。他に初老の紳士ひとり。店の割には立派なカラオケビデオがある。
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例によって蜂のケンカ(さしつさされつ)で盃を重ねる。そのうち”三合の酒が 天下を取らせけり”・・・というわけでカラオケが始まる。
ひとつ覚えの軍歌を歌う。ーーー麦と兵隊。一曲終わったところで、あちらの席で静かに盃を傾けていた紳士に声をかけられる。 ”お金は自分が払うから、今の曲をもう一回歌ってくれないか”という。
お安いご用と繰り返す。ーーー歌とともに画面に昔のニュース映画がナマで流れる。…軍靴・ゲートル・戦闘帽・鉄カブト・三八銃・軍馬・ぬかるみ・日の丸・・。
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ふと見るとその紳士、無言でひとり盃を傾けながら、ほほに涙が流れている。
何故ともなくこちらも歌いながら目頭がうるんでくる・・・。
往けど 進めど 麦また麦の・・・
友を背にして 道なき道を
征けば戦野は 夜の雨
すまぬすまぬを 背中にきけば
馬鹿をいうなと また進む
遠く祖国を離れ来て・・・
嗚呼・昭和ヒトケタ 万歳!。
(87・S・62・1)