無 題 (Ⅶ)
今月は、ご好評に応えて?久しぶりに近頃目に触れたものの中から ”うん”と思ったものを雑多に並べて「無題」第七弾。
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甲子園。ーーーその押し寄せてくる感動の源は、結果を考える余裕もなくプレーする若者達のすがすがしさであるに違いない。
ひとつでも負ければそれでおしまい。ツキにも運にも文句をいえず、逆らうこともできない。そんな見事なまでの思いきりが、思い切り悪く毎日を過ごすわが身の目を覚ましてくれる。
そうだ、それでいいんだ、君達の青春は正しい。
(川上哲冶)
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路傍の石に負けないくらいの存在感のある焼き物が焼きたい。
(辻 清明)
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生きている花がいいね。明日は散るの、でも今は精いっぱい咲いている。それがいいわね。造花がどんなに本物に似ていても命のりりしさがないでしょう。
(阿刀田 高)
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悪魔も 若いときは 美しかった。
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ナポレオンは学生時代は平凡な学生で、士官学校を出る時の成績も三十五番でした。考課表には”運がよければモノになるかもしれない”と書いてあったそうです。
(扇谷 正造)
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人に好かれる話し方の ”や・い・ゆ・え・よ”
や 優しい心で
い いきいきと
ゆ ユーモアをいれて
え 笑顔を忘れずに
よ 要領よく
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鉄砲で撃たれた傷はなおるが、口で撃たれた傷はなおらない。
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将棋の棋士の最初にして最後の要件は、集中力にある。それも脳みそが汗をかくほどの集中力を身につける必要がある。
(米長 邦雄)
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歌は語るもの、セリフは歌うもの。
(森繁 久弥)
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野の花には自己主張がない。どんな環境においても一生懸命咲いている。そんな中で咲き実を結び、しなければならないことを確実に行っている。自分に与えられた花を咲かせ、実を結ぶ。誰にも媚びることはない。
(助田 義蔵)
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急がずば 濡れざらましを 旅人の
あとより晴るる 野路の村雨
(大田 道灌)
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もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道となる。
(魯 迅)
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文章を書くための構想を練るのに適した場所ーーー三上。
馬上・枕上・厠上。
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ドイツ語で神を敬い、フランス語で恋を語り、英語で演説し、ロシア語で馬を叱る。
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秋風に吹かれてとぶ落ち葉のように、あてどもない旅に出てみたい、列車は新幹線でなく鈍行にする。ぶらり飛び乗ってとっぷり暮れた車窓に、山ぎわの人恋しい灯が点々とともるころ、田舎の小駅に降りたつ。
足の向くままさびれた居酒屋に入る。むろん酒は 辛口の地酒。
(日経・春秋)