煙 草 片 々
「煙草事業審議会」で、煙草の広告の規制を求める答申をまとめた後、会長さんの記者会見。
「私?ーーーわたしは自己管理能力を試すために、時々禁煙します。これまでに八回禁煙しました。今?・・・今は吸っています」。
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今は煙草の箱に「健康のため吸いすぎに注意しましょう」と印刷してあるがこれじゃ表現が生ぬるいと「あなたの健康を損なうおそれがありますので、吸いすぎに注意しましょう」と変更するようにお役所で検討中とか・・・。
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WHOで毎年五月三十一日を「世界禁煙デー」に決定。
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厚生省では省内三十ケ所の会議室から灰皿を撤去。「会議室での喫煙、ご遠慮ください」の掲示を出した。
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ついこの前までは”今日も元気だ 煙草がうまい”とか、”二十世紀の文明は、煙草の煙の中から生まれた”・・・とかおだてられていた「煙草」の地位も、このところ無残に低落して、喫煙者の肩身が日に日に狭くなっていく。
今回は「酒」ならぬ「煙草」片々・・・。
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土筆生が煙草について意識したのは、小学校の一~二年生のころだった。親父が風邪で寝込んで、往診の医者が帰った後、枕もとの押入れに隠していた煙草をこっそり吸っているのを見てしまったとき。たかが「煙」を大人のくせに何故あんなに我慢できないのか、と不思議に思いながらも、いつも厳格なあのオヤジが小さくなって煙草を吸っている姿を、妙に可愛く?感じたのだった。
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”あれっ、君煙草吸っていたっけ?ーーー”いやー、しばらくやまってたんだけどねえ。また始まっちゃって・・・。だけど会社でだけで、家では吸わなくても平気なんだよ”という人が意外に多いが、これは、家では ”吸わない”・・・のではなくて ”吸えない”が正確で、奥さんもさることながら子供さんがうるさくて敵わないという。”どうしても吸いたければ、ベランダで吸ってーー”などといびられる。そこで、夜になるとあちらのベランダでポッ、コチラのベランダでポッーこれらの人を総称して「ホタル族」と呼ぶのだそうだ。
最近、駅のホームや特に道路で歩きながら煙草を吸っている人が多くなったような気がするが、どうもここらあたりに原因があるのではなかろうか。
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映画で、煙草を効果的な小道具に使うことがある。
捕まって銃殺されることになったスパイが処刑される。はめようとする目隠しを断って、代わりに煙草を所望して深々と吸う、目を細めて青空を仰ぎながらゆっくりと吐いた煙を追う。これでこの世に未練はない。ーーーといった晴ればれとした顔で従容と死んでいく。
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学生の頃、フランス映画の名優シャルル・ボワイエが、煙草を指先ではなく人差し指と中指の根元のところに深くはさんで、掌で口元から顔の半分くらいをさりげなく覆った形で、顔をやや傾け加減にして紫煙をくゆらせる・・・あのシーンが何ともやるせなくて、喫茶店の彼女の前で、さりげなく真似ているのに全く気づいて貰えず、 ”あら・・・首どうかしたの?”といわれたりして・・・。
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住宅街で、犬の鳴き声がうるさいと評判が悪いので、吠えない犬を作り出そうと真面目に研究している人がいるそうだが,世には奇特な人があるもので、何と喫煙者のために煙の出ない煙草を提供しようと研究している人があるそうだ。
だけど、煙の出ない煙草が出来たとしたら、やはりそれも「煙草」というのだろうかなあ?。